第11話 孤独とはこんなにも寒いものなのですね
シオンはいつもの様にアリアを抱きしめたい衝動に襲われたが、今はやることがあるので、我慢してアリアに声を掛けた。
「お嬢様申し訳ございませんが、少し彼と話し合うとこが出来てしまいました。その為、少しお風呂に行くのが遅れてしまいますが、終わり次第すぐに向かいますので、お身体を冷やさないように先にお湯に浸かってお待ちください」
そういうと、シオンは再びアリアと年の近いスイの娘2人とバスタオル姿の使用人達を呼んだ。
「お嬢様を安全に!!」
シオンに命じられた彼女達は、「お任せください、メイド長」と事務的に返すとアリアの背中に手を添え、「さぁ行きましょうか、お嬢様」と声を掛けて女湯に向かおうとした。
しかし、アリアがそれに待ったを掛けるとシオンの顔をじっと見つめて口を開いた。
「シオンお願いです。先ほども言いましたが彼に酷いことはしないで下さい」
「もちろんでございます。彼とは少しお話をするだけですからご安心ください」
シオンは、アリアを安心させるように笑い掛けた。それを見てアリアは安堵した。
そして、脱衣所を出ていく時、タスキを見つめて「これで本当に貸し借りは帳消しですね」と小さく呟き廊下に出ていった。
アリア達が廊下に出てシオンが見えなくなった時から、シオンに頼まれて一緒に女湯に向かう彼女達の態度が、急に冷たくなったように感じた。そのまま、赤い暖簾を潜り脱衣所に入るまで何も話さなかった。
脱衣所に入ると彼女達は、急いで身支度を整え始めた。
それから、身支度が整うとアリアに一言掛けた。
「申し訳ございません、お嬢様。少々やり残した仕事を思い出してしまいましたので、ここで一旦お暇させてもらいます」
そう言うと、髪も湿ったまま足早に去っていった。また、スイの娘2人も「お母さんが心配なので戻ります」というと脱衣所から出ていった。
1人になったアリアは、今までの気持ちが冷めるようであった。
「そうだよな。昨日まで散々アリアに虐められていたのに、今日になって仲良くしますと言ったって都合がよすぎるよな」
ははは、乾いた笑いを零し、皆が去っていった出入り口を見つめた。
そして、今日一日アリアに親しくしてくれていたのは、隣にシオンがいたからであってシオンの人望のおかげであったのだとここで初めて気づかされた。
「全員が俺に好印象を抱いているわけだは無かったわけだ」
アリアはそう呟くと途端に、しんと静まり返った場の雰囲気もあって寂しい気持ちが心に込み上げてきた。
そしてしばらくの間、アリアは独りでぼうっとしていると、脳裏にシオンの言葉が浮かんだ。
「あっとそうだ。シオンにお湯にでも浸かって待ってろって言われていたっけ」
そう言うとバスタオルを外して大浴場に向かおうと、視線を身体に巻き付けているバスタオルに向けた。
そこで初めて、アリアは自分の手がバスタオルを力強く握りしめていることに気づいた。
「情っけないな。男に裸を見られたぐらいでこんなになりやがって!」
アリアは、手を外してバスタオルを脱ぎ裸になると大浴場に向かおうと視線を向けた時、視界の端に脱衣所の入り口が入った。
その瞬間、頭を踏むより前の脱衣所でタスキと出くわしてしまった所まで記憶が蘇ってしまった。そして、その時に想像したことが脳裏に思い起こされた。
アリアの身体を突如震えが襲った。
そして、その震えを止めようとアリアは身体を抱きしめた。しかし、それで震えが止まることはなく、ガタガタと全身に震えが広がっていった。
脱衣所に誰もいない独りぼっちだったことで、一入の恐怖がアリアを襲ってくる。
(あれがもし、害意を持った人物であったなら)
そう考えた瞬間、突然口を塞がれ物陰に押し込まれたことが鮮明に想起され、益々震えが強まった。更に、震えを抑えるために抱きしめていた腕が、身体を守るために代わっていた。
そして、先ほどのアリアから離れていく使用人達も想起され、孤独感までもが心を支配していった。
そうなってしまうと、もうアリア自身の最悪に対する想像が際限なく溢れていった。
(シオンも親しくしてくれているのは仕事上の上辺だけで、裏ではわたくしを嫌っているのかも!それで、仕方なく従っているだけで、本当は辞めたいと思っているのかも。シオンだけでなく、優しかった使用人達も何をするか分からない我儘令嬢だから仕方なく仕えているだけで、本心では嫌っているのだわ。さっきのわたくしの悲鳴にシオン達が駆けつけてくれたけど、あれも仕事だから仕方なくだったに違いないわ。わたくしの周りにいる人達は、上辺だけは笑顔でも、裏では憎んでいる人達なんだ。もう、この世界で気遣ってくれる人は誰もいない、いや元々いなかったんだ。わたくしは、最初からずっと独りぼっちだったんだ)
そう考えると、今までの皆の笑顔が、言葉が全て嘘の様に思えてきてしまい、瞳から涙が零れてきた。そして、それが滝の様に頬伝い落ちていった。もう溢れ出した涙は止まらなかった。
(これじゃあ、もしわたくしが暴漢に襲われても、誰も助けてくれない。それどころか、ボロボロのわたくしに後ろ指を指して嘲笑をするんだわ。俺が転生した時点で屋敷の皆と仲良くなることができない詰みゲー状態だったんだ。もうどんなに頑張ってもバッドエンドしかないんじゃ、無理だよ。この人生、復讐で殺されるか、男達の壊れた玩具になるしかないんだ)
アリアの中で何かが飛んだ。
「ははは」
それは、最初は小さな笑い声だった。しかし、それはどんどん大きくなっていき、最後には狂ったような哄笑に変わった。
「はははははははははははっはははははははっははははははっはははっはは!!!!!」
零れだした笑いは止まらない。1人だけの脱衣所内で悲しく響き渡る。
それは、離れた男湯の脱衣所まで響き、話し合という名の公開説教中のシオン達使用人の耳にも響き渡った。
突然の笑い声に吃驚したが、それがアリアの声だと分かると顔色を変えてシオンが逸早く飛び出していった。その際、タスキに説教はもう終わりと忘れずに伝えてからシオンは飛び出していった。
シオンは、そのままの勢いで脱衣所に飛び込んでいくと床に座り込んで狂ったように笑い続けているアリアの姿が目に入った。
「お嬢様!?」
驚きの声を零してしまった後、シオンはすぐに駆け寄りアリアを呼びかけた。
「お嬢様!!アリアお嬢様!!」
身体を揺すって呼びかけたが、アリアは気付かずに笑い続けた。
シオンはアリアに視線を合わせようと顔を覗き込んだ瞬間、その酷さに驚愕した。アリアはどこを見ているかも分からない虚ろな瞳をしており、その瞳は涙が溢れかえり頬を濡らしていった。そして、口からは引き攣る様な笑いが零れていた。
シオンはアリアの顔を両手で掴むと自分の顔を向くように動かした。そして再び、今度は視線をしっかりと合わせてアリアの名前を呼んで呼びかけた。
「アリアお嬢様、シオンです!!しっかりしてください。こっちを見てください!!」
その声が届いたのか、アリアの視線がシオンと合った。それを確認したシオンは安堵して、アリアに優しく呼びかけようとした。しかし、その虚ろな瞳はシオンを捉えると、驚愕に見開かれていった。シオンが呼びかける前に、アリアの口から悲鳴が轟いた。
「いやーーーーーーーーー!!」
脱衣所にいたシオンと少し遅れて到着した使用人達の鼓膜を叩いた。
悲鳴が止むとアリアは、意味が分からない事を話し始めた。
「ごめんなさい。ごめんなさい。お願い殺さないで。それ以上わたくしを弄ばないで」
突然の変貌にシオン達は驚いたが、すぐにアリアを心配して声を掛けた。
「お嬢様!お嬢様!アリアお嬢様、私です!シオンです!」
「お嬢様、お気を確かにお持ちください!!」
「アリアお嬢様!!」
呼びかけたことでアリアと再び視線が合った。しかし、アリアと視線が合ったのはシオンだけではなくこの場にいる全員とだった。
「ひっ!?」
引き攣った声を漏らすと、アリアは後ろに逃げようとした。だが足が動いてくれなかった。
その絶望感にアリアは思わず漏らしてしまった。
アリアの脚を濡らし座り込んでいる木の床に水溜りが広がっていく。
「あああああ」
その間アリアは、ただ声を出して見ていることしか出来なかった。
暫くして床の水溜りの広がりが止まると、顔を青ざめさせてアリアは、呆然としているシオン達に濡れるのも気にせず頭を床につけて謝罪した。
「ごめんさない。すぐ片付けるので許してください」
そしてさっき脱いだバスタオルを手にすると床を拭き始めた。
呆然としていたシオンだったが、アリアが土下座をしてから床掃除を始めた瞬間に、意識が戻った。
「いけません、お嬢様!!」
シオンは、床を拭いているアリアの腕を握った。
「ど、どうしたのですか!?早く片付けろってことですか!!それとも!?ごめんなさい。すぐに終わらせますから、どうか許してください」
怯えた瞳でシオンを窺った後、再び床掃除に戻っていった。
シオンはその変わり様に言葉が出なかった。
(お嬢様どうしてしまわれたのですか)
やっとそれだけ心の中で呟くと、シオンはアリアの両腕は掴み、強引に自分の方に顔を向けさせた。
「お嬢様、どうしてしまわれたのですか?何があったのですか!?」
アリアの身体を強く揺さぶって問いかけ続ける。
「お嬢様!お嬢様!こっちを見てください!!」
しかし、それでもアリアの瞳は何も映していない空虚なままだった。
シオンは、更に力強く身体を揺さぶり声を荒らげて名前を呼びかけた。
「アリアお嬢様、しっかりしてください!!お嬢様!!」
それでも反応を返さないアリアに、シオンの揺さぶる力が強くなっていく。
アリアの首が壊れた人形の様にガクガクと前後に激しく振られていた。
その痛ましさにただ見ているだけだった使用人達がシオンを取り押さえる。
「メイド長、それ以上はお止めください。お嬢様が本当に壊れてしまいます」
取り押さえた腕の中でアリアの下に涙ながらに向かうとするシオンに言葉を掛けた。
その言葉が通じたのかシオンの動きが止まった。しかし、次の瞬間心の底から震えあがるような冷え切った声色で口を開いた。
「お嬢様をここまで案内した者達を私の前に呼び出しなさい」
スイが背中側から抱き留めているアリアの方を見つめているために表情は分からなかったが、纏う空気から只事でない様子だけは察せられたので、慌てて何人かの使用人が飛び出していった。
それを横目で確認したシオンは、自分を押さえている者達に幾分か雰囲気を和らげて声を掛けた。
「ありがとう、もう大丈夫ですから離してくれませんか?」
そして、自由になったシオンはアリアの下に向かうとアリアを見つめたまま口を開けた。
「スイ、もうしばらくお嬢様を押さえておいてもらえますか。」
「畏まりました」
スイの了承を得たシオンは、その場の皆に聞こえる声で言葉を発した。
「いい、これは私が勝手にやったことです。あなた達は何もしていない、ただ見ていただけだともしもの時は答えなさい。これは、命令です」
そう口にしてアリアを見つめた後、一言呟いた。
「お許しください」
パン。乾いた音を響かせながらシオンがアリアに本日2度目の張り手を食らわせた。
アリアは、パチパチと何度が瞬きをすると視線をシオンに向けた。そして、シオンの振りぬかれた手を見て、自分の頬を触ろうとしたが、後ろから抱しめられているので手を持ち上げることが出来なかった。
シオンは、アリアの瞳に意識が戻ったことを感じた。そして、アリアの名前を呼ぶために口を開こうとした。
「アリ」
「やはり、わたくしは嫌われているのですね」
シオンの言葉を遮る、寂しい声色の言葉がアリアの口から零れた。
「先ほどわたくしをここまで案内してくれた方々も案内を終えると、嫌う様にすぐ身支度を整えて出て行ってしまいました。そこでわたくしは、自分が愚か者だと理解しました。わたくしに親しそうに接してくれたことはすべて演技だと、わたくしのご機嫌を取るために仕方なく行っていると気づきました」
そして、悲しい色を浮かべた瞳で周りを見渡すと再び口を開く。
「シオン、わたくしは貴女だけは違うと思っておりました。しかし、わたくしに尽くしてくださるのは仕事のため、わたくしに見せてくれる表情は、仮面を付け替えただけのものだったのですね。そして、今の状況はわたくしを動けなくして皆でいたぶっている最中ですよね。ごめんなさい。ここまで嫌われているとは考えていませんでした」
寂しい表情で語るアリアに思わず反論が出た。
「違います。私はお嬢様を嫌ってなどおりません。いつでもお嬢様の身を案じており、大切に思っています。私にとって掛け替えの無い存在がお嬢様なのです!!」
「メイド長の言う通り、私もお嬢様を嫌っていません。お仕えすべき、愛しき主です。」
「お嬢様、私達もメイド長と同じ気持ちです。今までのお嬢様も好いていましたが、今のお嬢様は以前以上に好いていますし、もう私達の特別な存在なんです」
シオン達の心の籠った言葉も今のアリアには嘘の様に思えてしまった。
アリアは、寂しげに微笑みとシオン達に口を開いていった。
「ありがとうございます。嘘だとしても嬉しかったですよ。きっとわたくしの機嫌を取るために掛けてくださった言葉ですよね。そこまでしなくても大丈夫ですよ。貴女達を責めるようなことは一切しません。悪いのは貴女達を虐めていたわたくし自身なのですから。自業自得です」
ははは。自嘲の笑いを零したアリアは、冷たい涙を流して口を開く。
「わたくしは独りぼっち。この世界でわたくしの味方は誰一人としていないのでしょうね。寒いです。心が凄く寒いのです。誰でもいいですから、わたくしを温めてください。温もりを与えてください」
アリアは、いつの間にか押さえが外れていた腕で凍える身体を抱きしめた。
アリアの身体が本当に寒さを感じるが如く震えていく。そして、もう何も見たくないと目を閉じてしまった。
(寒いな。俺の身体が物凄く寒い。孤独ってここまで寒くなるものなのか)
アリアの頬を量が増した冷たい涙が伝い落ちていく。
寒さが強まった心を更に温めようと、抱きしめている腕に力を入れようとしたその時、突然アリアの身体の前と後ろが温かくなった。
(温かい)
その温かみはアリアの身体だけでなく、凍えている心まで届いた。
そして、目を瞑っているアリアに声が掛けられた。
「まだ、寒いですか?」
その声は、アリアに優しく問いかけてきた。
アリアは小さく頷いた。
「それならば、もっと温めなければなりませんね」
アリアには、その声の持ち主がすぐに分かった。
「2人だけでは足りません。お嬢様を心の底から愛している者がいるならば、お嬢様が少しでも温かくなれるように、温もりを与えてくださいませんか」
まだまだ寒かったアリアを包む温かみが増えたように感じた。
その増えた温もりが更にアリアの身体と心を温めていった。
「温かい」
心の中でなく口から呟きが零れた。
アリアはゆっくりと瞼を開けていった。そして、自分を包み込んでいる温もりを目にした。まだまだ、人数は少ないがそれでも今のアリアを温めてくれる彼女達がいた。
アリアの瞳から温かい涙が零れだした。
「ごめんなさい。貴女達を信じられなかったわたくしを許してください」
涙ながらにそう語るアリアに、シオンが言葉を掛ける。
「いいえ違います。お嬢様をここまで不安にさせてしまった私達がいけないのです」
アリアの小さな身体をシオンが優しく抱しめる。それを見た他の使用人達もアリアを優しく包み込んでいく。
「ごめんなさい、シオン。あんなひどい言葉を掛けてしまい、シオンを傷つけてしましました。それに今わたくしをこうして温めてくれている貴女達にまでひどい言葉を掛けてしまいました」
アリアはいつの間にか顔を預けていたシオンの胸から顔を上げて再び周りを見回した。
「さっきわたくしを張ってくださったのは、在りもしない幻影に怯えていたわたくしを助けるために行ったことですよね。わたくしは痛かったです。ですが、貴女達はもっと痛かったですよね。ごめんなさい。心が弱いわたくしを助けるために頬を張らせてしまいました」
アリアは、自分の頬に触れながら、シオンを見上げる。
「シオン、わたくしの頬を張った手は痛かったですか?」
アリアは、シオンを見上げて問いかける。
「はい、とても痛いものでした。ですが、お嬢様を張ってしまった自分の心の方が更に痛いものでした」
シオンの辛そうな表情を見上げていたアリアは、嬉しそうに微笑みを浮かべた。
「まだ痛いですよね?それが少しでも和らぐようにわたくしが、包帯にでもなりましょう」
アリアは、シオンに自分から抱き着いた。
「どうですか?まだ痛いですか?」
「いいえ、ほとんど痛みは消えました」
シオンは瞳に涙を浮かべながら、晴れやかなに微笑んで答えた。
「良かった。ありがとうシオン。わたくしを暗闇から引き揚げてありがとう。わたくしの寒かった心を温めてくれてありがとう」
アリアは嬉しそうに笑ってシオンを見上げた。それから、すねた表情を浮かべてシオンを軽く睨んだ。
「シオン、わたくしの頬を張った責任を感じているのでしょう。もう、少し前にわたくしはもう以前の様に罰を与えないと言ったではありませんか!忘れてしまったのですか?それともまだ信用が出来ないのですか?そうですよね、そこは今後時間を掛けて信用を勝ち取って見せますから、期待していてください。ですので、わたくしの頬を張ったことは許しますからね、シオン!」
シオンの胸に一度顔を埋めるように抱き着いた後、シオンに一言お願いして離してもらうとアリアは、後ろに身体の向きを変えてスイを見上げた。
「ごめんなさい、スイ。わたくしを押さえつける役目をさせてしまって、辛かったですよね」
シオンと同じように責任を感じて辛そうにしているスイを見つめる。
「でも、そのおかげでわたくしは、頬を張るときに目や耳などにあたって失明や鼓膜が破れる怪我を負わずに済みました。ありがとう、スイ。そして、スイは責任を感じなくても大丈夫ですからね。それくらいの事、わたくしは許しますからね」
朗らかな笑みを浮かべてスイを見上げて言葉を掛けた。
「ありがとうございます、アリアお嬢様」
スイの謝罪に笑顔を浮かべて答えるとアリアは、口を開いていった。
「スイはわたくしの背中から温めてくれたのよね?ありがとう。温かかっただけでなく、支えられている安心感もありました。本当にありがとう、スイ」
スイに抱き着きそのシオンの落ち着く感じとは違う、アリアを包み込む安心感がある胸に顔を埋める。
「スイはわたくしを嫌って離れたりしませんよね?これからもわたくしと親しくしてくれますか?わたくしを好いていてくれますか?」
まだ先ほどの孤独感が残るアリアが不安に揺れる瞳でスイを見上げる。
「もちろんですよ。私もメイド長と同じお嬢様をお慕いしております。それに、私は娘達と同じようにお嬢様も本当の娘の様に愛しています。私は、娘を放って出ていくような母親ではありません。お嬢様の成長をお近くでこれからも見守っていきます。ですから、安心してくださいアリアお嬢様。最後までお仕えさせていただきます」
そして、アリアの頭を優しく撫でてくれた。
「ありがとうスイ。でもわたくしにかまけ過ぎて、娘たちを疎かにしてはいけませんからね。ちゃんと、娘達も見守ってあげてください、約束ですからね」
アリアは、スイを真面目な表情で見上げた。
「畏まりました、アリアお嬢様」
アリアの髪を手櫛で梳きながら笑みを浮かべてスイは答えた。
そして、スイに髪を梳いてもらっているとアリアに不満そうな言葉が届いた。
「あの、アリアお嬢様。私達にも何かありませんか?私達もお嬢様をそれはもう山よりも高く海よりも深く愛していますよ!ですから、お願いしますアリアお嬢様!」
アリアに勇気を出してお願いしたと分かる不安と恐れが混じった瞳をして、アリアを皆で見つめていた。
それにアリアは驚いたが、次の瞬間には嬉しそうに微笑んで口を開いていった。
「ええ、そうね!」
そして、シオンとスイの時と同じように一人一人に感謝を述べて抱き着いていった。ついでに、その感触も満喫していった。
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