我は竜を守る四天王ウボァアアアアア!?!?!?


「やっとつきました」


 ミュリエルは、キューちゃんの背中からヒョイっと飛び降りた。

 目の前に聳えるのは、ノザリス火山だ。

 フレイムドラゴンの目覚めが近いのか、最近火山活動が活発らしい。

 ひょっとすると、ドラゴンはもう目覚めているのかもしれない。


「ちょ、ちょっと……待ってくださいまし」


「はい、なんでしょう?」


 振り返れば、ピナがげっそりした顔で地面に両腕をついてはあはあしていた。


「し、死にかけました……じゃなくって! あなた、どう言うつもりですの!?」


「どういうつもりというのは?」


「まさか、この火山で眠るドラゴンに会いに行こうと言うんじゃありませんわよね!?」


「はい!」


 ミュリエルはにっこりと笑った。

 ピナがガックリと項垂れる。


「はいじゃないのですのぉ」


「ピナさんはここで待っていてください。終わったら送って差し上げますので」


「ああもう! あなたは頭がおかしいんですかっ!」


 ピナは怒って言う。


「この辺は、最近魔物が活発になってきているせいで、一人でうろつくなんて危ないのですわ! それに火山には、ドラゴンを守る強力な魔物もいますのよ……!」


 睡眠機に入るドラゴンは、迷宮を作る。

 罠を張り、魔物を増殖させ、自身へ辿り着かないように、強力な巣を作るのだ。


「もちろん知っていますよ」


「じゃ、じゃあ、こんな危険なことはやめて……」


「ですので」


 ミュリエルはにっこり笑って、山に手を向けた。


「迷宮というのは、先にぶっ壊しておきましょう」


「は?」


 ピナがポカンとしている間に、ミュリエルの手から光線のようなものが飛び出した。

 

 ズガァアアアアン!


 と凄まじい音がして、山の傾斜面まるまる一体が削り取られた。


「え? は?」


 ミュリエルは手をパンパンと払って、よし、とうなずく。


「これで魔物は一掃できました」


「えええええ!? なに今の!? 怖すぎますわ!!!!」


 ピナは震え上がってキューちゃんに抱きつく。

 キューちゃんもブルブル震えて、ピナに抱きついた。


「うふふ。これで真っ直ぐ歩いていけますね」


「頭がおかしすぎますわ!!!」


 ミュリエルは拳を振り上げて、火山へ向かう。 


「出発!」


(うう、このバーサーカーを一人でいかせるわけにはいきません!)


「お待ちくださいまし! 一緒に行きますわ!」


 ピナは急いでその後を追いかけた。


     *


 ドラゴンフレアまでどのような作戦で向かうのかといえば、なんのことはない。ミュリエルとピナは普通にテクテクと歩いて向かっていた。

 ミュリエルが山の斜面を削り取ったおかげで、普通にドラゴンレアへと繋がる巨大な扉が、山の麓からでも丸見えになっていたのだ。


 しかし、二人のいく手を邪魔するものがいた。


「ドラゴンの眠りを妨げるとは、なんと愚かな人間だ」


 長く生きた魔物は、人間と同程度か、それ以上の知能を持つ。

 この山にも四匹の強力な魔物がいた。


「姫! 下がってくださいまし! これはただものではない気配ですわ!」


 ピナが勢いよくミュリエルの前に出て、剣をぬく。

 ミュリエルたちの前に現れたのは、四匹の魔物四天王だった。


 四天王のうちの一匹は、ミュリエルとピナをみて、舌なめずりをした。


「ふっふっふ。よく来たな。我は四天王が一人──」


「ごめんなさい、時間がないので、ちょっと失礼しますね」


「ウボァアアアアア!?!?!?」


「あっ姫!?」


 ミュリエルはマナの塊をぶつけて、四匹全員まとめて壁に打ちつけた。

 全員死んではいないようだが、気絶して見事に白目を剥いている。


「えええ……何ですのこれ……締まりませんわ……」


 ピナは所在なさげに剣を下ろす。


「ふふふ。行きましょう」


「四天王出てくる展開いらなかったんじゃ……?」


 と言うことで、二人は普通に、巨大な扉の前まで移動したのだった。

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