第2話 至上の名誉
「これはどういうことですか!? 目の前で入居者の方が餅を喉に詰まらせていますよ!!」
「ええ、その通りです。教祖様の配るお恵みを喉に詰まらせて死ぬことは私たちにとって至上の名誉なのですよ」
「一体何を言っているんです、あなた方はどうかしています!」
目の前で繰り広げられている惨事に俺はポケットからスマホを取り出したが、その瞬間に教団幹部の表情が一変した。
「やめなさい、私たちの祭典を妨害する気ですか! ここで電話などさせませんよ!!」
「ふざけないでください、目の前で人が死にかけているんですよ!?」
「何をしているんです、部外者の方が好き勝手するのは許しませんよ! 迷惑をかけるなら立ち退きを命じます!!」
教団幹部の大声を聞いて近くにいた男性介護士たちが走り寄ってきて、餅を喉に詰まらせて死んでいく老人たちのうめき声を聞きながら、俺は施設の外へと追い出された。
この施設は狂っている、なぜこんなことがまかり通っているのかと思いながら、俺はその足で最寄りの交番を訪ねた。
「……という恐るべき光景を私は見たのです。疑うというのなら今すぐその施設に立ち入り調査を行ってください!」
「ああ、
「お巡りさんまで何を言っているんですか!? 人が殺されているんですよ!?」
必死で訴えたが交番の巡査はまともに取り合わず、帰宅後に110番通報をして同じことを警察に訴えても結果は同じだった。
おかしい、あの施設には何かあると思った俺は今日見た光景を会社の上司に直接は伝えず、特ダネを拾える可能性があるため臼臼教の施設にボランティアとして長期潜入取材を行いたいと提案した。
上司は俺の意向を受け入れて勤務時間中の潜入調査を認め、俺は1か月後に臼臼教の別の施設を訪問してボランティアとして働きたいと申し出た。
俺はその日から臼臼教のボランティア職員となり、老人たちの介護に励みつつ施設の中で徐々に地位を向上させていった。
臼臼教の真相に迫るため、俺は目的を決して悟られることなく臼臼教の一員として働き続けた。
そして、その間にも教祖による祭典は1か月に1度行われ、その度に何人もの入居者が餅を喉に詰まらせて死んでいった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます