(6)
長谷川が二人へと目を向けた。
「
自分たちが入ってきた窓を指さして問う長谷川に二人がうなずく。
続いて、長谷川がもう一つ問う。
「出口は?」
鍛治谷口が応える。
「
「2階は全て戸締まりされています」
高城が補足した。
窓から侵入したこの暴力団構成員は藤木香菜子に返り討ちにあい、藤木香菜子はこの場から逃走したらしい。勝手口から出たと仮定して――
どこへ行った?
「鍛冶さん、表で例の隣人に誰か見なかったか聴いてください。それから、銃声からどのぐらい時間が経ったのかも」
「了解」
場から鍛治谷口が消えるのと引き換えに、遠くから救急車のサイレンが聞こえてきた。銃痕は被害者の鳩尾と胸のほぼ真ん中。山岡巡査が諦めずに心臓マッサージを続けている甲斐があればいいのだが。何にしても、
ならば現場と今までの情報で推測するしかないのだが、藤木香菜子の行き先に見当がつくような情報は微塵もない。何しろ、判明している限りでは、藤木香菜子と親しく交流する者も、頻繁に出入りするような場所も、全くないのだ。
そう、全くない。選択肢は――
スーツの内ポケットでスマホが震えた。短く一回、メールかアプリの通知か、いつもの通り柴塚はスルーする。
と、高城が自身のスマホを取り出した。家庭重視の高城は妻とのやり取りでスマホを欠かさずチェックする習慣がある。故に特段目を引くようなことではない。柴塚のスマホと同タイミングなのは少々珍しいかもしれないが。
などととりとめもなく思案する柴塚の視界の端に、同じように首を傾げる長谷川の姿が入った。
柴塚と長谷川の視線が鉢合わせする。
3人同時?
流石に軽く驚く柴塚と長谷川に、高城から鋭い声が飛んだ。
「班長、柴塚君、見てください」
呼ばれて高城のスマホを覗き込むと、新着メールが表示されている。
日時:8月13日13時58分
差出人:KanakoFujiki477@×××.com
宛先:JTaka2525@×××.com
件名:副市長弟殺害事件の真相告白
本文にはリンク先urlが貼られている。通常であればただの迷惑メールとして即削除だが、タイミングおよび差出人が無視できない。
「
長谷川の声が荒くなった。柴塚も画面へ食い入るように前のめりになり、次の瞬間、ふっと気付いた。自身のポケットからスマホを取り出し、通知を確認。
新着メール有り。
メールアプリを開く。
最新のスレッドに、同じ件名。
柴塚の動きを見て気付いた長谷川も自身のスマホをチェックして、顔を上げた。
このタイミングで3人共同じメールを受信。いたずらと断じるのはためらわれる。
顔を見合わせているその時、救急車が到着し、同時に柴塚のスマホに着信。叶警察署からだった。高城が被害者の処置を救急隊員へと引き継ぎ、柴塚が応答する。
「赤井だ! お前らメール届いたか!?」
「今確認しました」
「こっちもだ。叶署員宛にバラ撒かれてるから、榊のスマホから盗ったアドレスデータ宛に送信されたんじゃねえかって話だ。とにかく動画開いてみろ、ライブ配信だ!」
通話を切ってurlをタップ、立ち上がった動画が再生される。ライブ配信とはいうものの画面にはSOUND ONLYと表示されるだけで映像はなく、音声のみだ。
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