(6)
「いや、非常に興味深いんですよ? そもそも世界中の神話の成り立ちには様々なケースがありますが、神話というからにはそこには当然『神』が設定されて
恐ろしいほど滔々と、立て板に水のごとく溢れる言葉、言葉、言葉。プロの役者やアナウンサーも顔負けの滑舌の良い語りが怒濤のごとく、そして終わる気配無く始まってしまった。
この手の人物は、自分の専門分野となると聞き手のことはお構いなしで饒舌になりがちだ。しかも、この勢いから察するに、加賀は研究成果を公表する機会が少ないのだろう。加賀の中の何かが語るチャンスとみて突っ走っている。
決して
ただ、止まらない。
そして、それが一番困る。
「――そこには『人間性』というものが人間社会を形成する上で不可欠であると同時に不要、ともすれば障害ですらあることを示唆――」
「加賀さん」
まだまだ序の口といった空気を出している加賀を柴塚が呼び止める。怒鳴るのではなく、聞き
加賀の口が急ブレーキをかけられ、つっかえたかのように止まる。
「興味深いお話ですが、申し訳ない、今日の件をお伺いしても?」
柴塚に淡々と遮られて、加賀がまた恥ずかしそうに苦笑した。
「すみません、脱線してしまいました。ええと、『余計なことを言うな』と……でも、『余計なこと』って何なんでしょう?」
話を思い返して戻し、そして、加賀は途方に暮れる。その様子に不自然な点は見当たらない。本心から心当たりがないらしい。
が、
「何か心当たりは? 最近の話題で、誰かと話したのではなくても例えばネット等で話題にした話とか?」
「ネットですか……」
記憶の糸を手繰る加賀に、柴塚が「些細なことでもかまいません。この数日中で、何かこう目についた話題とか。関係なさそうな事でも思い当たることはありませんか?」と畳みかける。
食い下がられて、加賀がさらに考え込んだ。
無言の数秒が、重い。
「……そうですね、ちょっと珍しい話がありましたね」
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