第2話 彼女がすげーエロい(無自覚)
「……どーせこんなことだろうと思っていたけどさぁ」
「なんでそんな不貞腐れてんの?」
「……なんでもなーい」
俺が雨宿りに選んだのはネットカフェ。
ネカフェは意外と悪くない。
ソフトドリンクとソフトクリームが食べ飲み放題。漫画も読み放題。さらにこの店は追加料金を払えばカラオケなどもできる。
2人並びになれるカップシートのブースでとりあえず雨が止むことを見越して1時間にした。
「ネカフェは嫌か?」
「悠生くんといれるならどこでもいいけど……。てっきり、あたしはラブホに連れらると思った……」
「ラブホなんて行くわけないだろ。仮に入れたとしても、制服で学校名ばれて生徒指導の先生からのお叱り怖いし」
特にあのスキンヘッド、怖いんだよなぁ……。あだ名は温泉卵だけど。
Tシャツが汗ばんだ肌にベタベタ張り付いて気持ち悪い。本降りになる前に急いで移動きたからまだマシか。
水が滴っている前髪をかき上げる。
「悠生くんすごい濡れてる。髪の水滴が落ちそう」
「ちょっと拭けばあとは自然乾燥で乾くだろう」
鞄を探る。
タオル、タオルと……あれ? ない。鞄を漁るも入っていない。
「タオルないんでしょ。はい、じっとしてて」
天花は鞄から取り出した自分のタオル片手に距離を縮め、
「ん、どんどん垂れてくる」
優しく拭いてくれる彼女のタオルからは、自分のとは違う柔軟剤の匂い。香水とはまた違ったいい香りがする。
「これで、よし」
「ありがとう」
「いえいえ~。雨が止んだら速攻家でお風呂だね」
「だな」
「風邪引かないでね」
「大丈夫だろ」
「まぁその時はあたしが看病してあげるけど」
ほう。なら風邪引いてもいいかもしれないな。
「よいしょっ」
濡れた黒シャツを脱ぐ。予備のシャツはたまたまた鞄に入れっぱなしであった。昨日の俺、感謝するぞ。すんすん……匂いは使ってないからいい香り。タオルも入ってたら満点だった。
「っ……」
「どした天花、顔赤いぞ?」
「あっ、い、いや……なんでもない……よ?」
口ではそう言うも、手をもじもじ合わせ落ち着きがない。
俺は今の自分の姿を見る。
「ははーん。もしかして彼氏の裸姿に照れてんのか?」
「べ、別に照れてないもんっ! ゆ、悠生くんの裸はあたしが一番見てるもんっ!」
「ちょ、おい天花。しーっ。ここネカフェだから声小さくな?」
「あ、うん……ごめん……」
天花は大人しくなり、雨水をたっぷり吸って、しんなりしたポニテをタオルで拭く。次に上着を。
上は俺のシャツを羽織っていたことでそこまで濡れなかったが、薄手のスカートは濡れて、腰回りに張り付いて、ヒップラインが現わに。今は下が濡れないように膝立ちをしているから余計強調している。スカートから見えるムッチリした生足は目が離せない。
「ん、よいしょ……」
「!?」
天花はおもむろにシャツを脱ぎ出し下着姿になった。
驚いてつい声が出そうになったが、ここで騒いだらさっきからかったのに意識していることがバレてしまう。
スマホをイジるフリをして反対方向を向く。
「……むぅ。見てくれてもいいのに」
濡れた身体をある程度拭いた俺たちはそれぞれ移動した。
天花はカルピスとソフトクリーム。と俺の分のコーラ。俺は適当な漫画をいくつか棚から持ちだして、パソコンの前に積んだ。
「パフェは食べれなかったけど、ソフトクリーム食べれたからいいや。う〜ん! おいしーっ」
「ちょうど喉乾いてたからコーラがうまい」
持ってきた漫画に手を伸ばす。この漫画、途中で買うのやめたんだっけ。最近はいい作品がバンバン出て金欠なんだよなぁー。
「俺は漫画見て時間潰すけど天花はどうする?」
「あたしは寝よっかな。昨日遅くまで起きて寝不足だし。ふぁぁぁ~~……」
と、あくびをしながら俺の太ももの上に乗った天花の頭を優しく撫でる。
「じゃあ時間がきたら起こすから」
「うん、おやすみぃー」
天花も大人しくなったし、ペラ、ペラと漫画をめくっていく。
おっ、義妹キャラの登場だと!? しかもドイツとのハーフ。これは修羅場に……。
「むー」
天花の指がつんつん、と俺の頬を突き始めた。
「どしたー?」
構わず読み続けていると、突く回数が増えてきた。どうやらまた何か不満らしい。
「……む」
すると、座ったままの俺に正面からまたぐように抱きついてきた。
「天花さーん。漫画が読めないんですけど〜?」
と言いつつ、目の前には漫画よりももっと良いものが広がっていた。……おっぱい。すごく柔らかそう。
「どうしてこんなに可愛い彼女がいるのに、他の子でニヤニヤしてるのっ」
「……漫画のヒロインに嫉妬すんなよ」
「絶対っ、あたしのほうが可愛いもん」
ぎゅっ、と天花が俺の首に手を回し、離れなくなる。そのせいで身動きが取れなくなった。
「天花さーん、もう壁しか見えん」
身体にはおっぱいやら太ももやら天花の全部が当たっているんだけどな。
「じゃあこれは?」
首を締め付ける力が緩み、天花が俺の顔をまじまじとみる。
「可愛い彼女がいますね」
「にふふ、やった〜〜」
再び体を寄せ、ぴたりと太ももを密着させた。
これも無自覚でやっていることなのだろう。
と、ここまでの一連を振り返っても女友達から彼女になって3日目といういちゃつきぶりではないと思う。もちろん、イチャイチャできるのは嬉しい。う、嬉しいのだが……イチャイチャの先に待っているのは……
「悠生くん?」
「よしよし。甘えん坊さんは仕方ないなぁ〜」
可愛い奴め、と頭を撫でてやると、抱きしめる力がまた一段と強くなった。
「やぁん。突然だったからビックリしたよ~。うふふ〜」
くすぐったそうにするも、やめてほしいくないらしい。
「悠生くんも頑張ったからご褒美あげないと〜」
天花は猫のように擦り寄り、俺の頭を愛おしそうに撫でる。
ネカフェで俺たちは一体何をやってるんだ。
「どうしたの? あっ、ムラムラしちゃったー? んっふふー」
黙り込んでいる俺を小悪魔的な笑みで眺める天花。
イチャイチャの先にあるのは……エロである。
身体は密着してるし、その影響で天花からいい香りが……。
……賢者になれ、俺。
「……寝る」
「えー!?」
天花の顔が見えないよう、そっぽを向いて寝転ぶ。
ああ、なんだか眠くなってきた……。
「狭い空間で濡れた彼女と2人っきり。ムラムラして当然だよね……。恥ずかしくないよ。あたしも同じ気持ち、だから……」
「!?」
こいつ、俺が我慢している時になんてことを言いやがる……! 誘っているつもりか!
天花は俺の耳に口を近付け囁く。わざとらしい切なげな仕草と、浅い息が艶かしい。
もう危機しか感じない目を閉じるものの、天花にさらに強く抱きつかれ、吐息をかけながらさらに追い打ちをかけられる。
「もう、そんなにお話しするのが嫌なら、キスしちゃうもんね」
と、微かな甘さと温かさと柔らかさが唇を襲う。
「お、おい……」
「むふふ、キスしちゃったぁ。……ん」
少し恥ずかしかったらしく、頬を染めながら胸に顔を埋めてくる。
誘惑してくる癖に、こうやって甘えてくるのは……ずるい。
3日前は女友達だったのに……彼女になったらすげーエロい。
「天花」
「ん?」
「少しだけ……少しだけだからな」
彼女の色っぽい微笑みが見えた。
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