第17話
すると助祭の手の上にある水の球が沸騰し始めた。
それに気づいていないのか、まだ目を閉じてい祈っている助祭。
「助祭。沸騰してますよ」
「えっ? やばい!」
やばいってなんだ?
清書にも偶に出てきて本部の清書分析員を悩ませていた言葉だ。
まずい状況で使う言葉なのか。
助祭はやばいと言った直後、私が土の球を投げた場所に水の球を飛ばした。
そして随分と近くで爆発が起こった。
土の球よりも音が小さかったが、熱気が伝わってきた。
「司祭様。やはりなにか?」
「大丈夫です。水教会の助祭が遊んでいたようです」
「そうですか」
イングルビーさんはそれだけ言って前を向いた。
「戦闘司祭。カミはいないらしいわね」
「どうしたんですか? 随分物分かりがいいようですが」
口先だけのものとしか思っていなかった。
「私は祈るとき、言葉を唱えていたの。唱え切って祈りとなる、そう言う考えだから時間がかかった。今回は全然時間がかからなかった。そんなの教えて、あなたは大丈夫なの?」
「いいえ、大丈夫ではないです。ただ、これから開拓をしていくわけですから悪用する人かどうかは嫌でも分かります。最悪の場合は殺します、気を付けて下さい」
「この力を前よりも速く使える私に敵うわけ?」
「戦闘司祭は皆使いこなす人ばかりです。私よりも強い人達が多くいます。あなたはそこまで届いていません」
話の途中で戦闘司祭の強さに気付いた様だ。
私よりも容赦がなく、強い人達は多い。
共に訓練所を卒業した者は異常に強い人達ばかりだった。
助祭はその後、何も話さず森に到着した。
「私達は森の入り口で数本、木を伐ります。護衛をお願いします」
「分かりました」
「護衛なら戦闘司祭だけで十分ではないの?」
助祭はそう言ってイングルビーさんを困らせている。
「そう言うのなら、来る前に言えばよかったですよね?」
「へー、戦闘司祭が話を聞きたそうだったから、来たのに。私から聞いた分の働きもないわけ?」
「司祭様、それでもよろしいでしょうか?」
「はい。でも本当に参加させないんですか?」
「それについては、また」
そう言ってイングルビーさんは五人の木こりの方に向いた。
「おし。司祭様が俺達の護衛をしてくれる。異常を感じればすぐに知らせろ」
「「「「「はい」」」」」
返事をし、二組に分かれて森の入り口にある木を切り始める。
一組三人の内、二人は平原側、一人は森側から幹に斧を入れている。
イングルビーさんは平原側でもう一人と息を合わせて斧を入れている。
「ねえ、戦闘司祭?」
「なんですか、助祭?」
仕事のない助祭は暇なのか話しかけてくる。
「丁寧に話すなら、助祭に、さん、でもつけてくれない?」
「暇なんですね、助祭」
「はははっはははは。司祭様、名前で呼べばいいんですよ。宗教違うんでしょう?」
ある程度離れているはずなのだが、イングルビーさんは会話を聞いてアドバイスをくれた。
「助祭。名前は何ですか?」
「戦闘司祭こそ、名前は?」
「私は戦闘司祭アルバート・ノックス」
「ノーマ・ズヴァルト助祭」
「ズヴァルトさん。あなたを戦力として数えてもいいですか?」
「ダメ。噂に聞く戦闘司祭の戦いを見せて頂戴」
「そうですか」
私はそう言いながら、背負っていた箱を下ろし中から弾が装填された予備弾倉を取り出す。
ベルトにある弾倉入れに四つ予備弾倉を入れる。
左のホルスターから銃を取り出して、ポケットから弾を取り出し薬室に直接装填する。
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