第15話

「それ、なんなの?」

「そちらこそ、あの水の球はなんですか?」


 互いが互いの技術を知りたがっている。他の戦闘技術を知らない為、こういう新しい発見は面白い。

 しかし、相手の技術に対する予想は付いている。なにせ、私も土の球を作れるからだ。


「お二人とも、食事を終えたら仕事に向かいますから、私を待ってください」


 イングルビーさんはそう言ってテントに入って行った。その体はずぶ濡れだった。

 異常な力を使う気はなかったが、助祭が元々使っていたようだからキャンプの人達は知っている。

 隠さなくても問題ないかもしれない。


「助祭。こういうことがあるから場所を変えようと言ったんだ」

「男って、すぐ昔の事をほじくり返して批判する」


 助祭は着ている服を叩きながら文句を言ってくる。助祭が叩くとずぶ濡れだった服が乾いた状態になっていく。

 水教会の技なのだろう。


「助祭。実際に迷惑が掛かってるんです。必要なことでしょう」


 私の近くにあって水を被っていない肉を手に取りながら、助祭は言い返してくる。


「あなたの攻撃が迷惑を掛けたのでしょう? 戦闘司祭とあろう者が、状況に応じて戦闘できないなんて」

「そうですか、殺してもよかったんですね。地教会の流儀を曲げて生かしたのに」

「生かしたい理由があったという事ですね。カミから与えられる力を知りたかったのでしょう?」


 助祭は話す事ばかりで食事をしていない。

 いい加減食べないとイングルビーさんが戻ってくる。


「早く食べてください。イングルビーさんが戻ってきたら仕事ですよ」

「そうやって話を逸らして、やはりカミからの力をどうやって得ているか知りたかったという事ですね」


 自分の中で色々完結している助祭は面倒だ。

 確かにタイミングが悪いというのもある。しかし、いいように解釈しすぎではないか。


「はあ。タネは大体分かったので、次があれば殺します」

「ホントに分かったの?」


 こちらを揺さぶってくるようだが、問題ない。


「水が生まれてくるのは分かりませんが、似たようなことが出来るので」

「あの水は爆発して、あなたにやけどを負わせるのよ」


 とてつもない攻撃を仕掛けて来ていたようだ。


「私も爆発させていましたから、出来ますよ。もう、突っかかってこないでください」


 助祭は、肉をまだ食べない。

 手に持ったまま、こちらを見て怪訝な顔をしている。


「最初は殺す気ないって、言ってなかった」

「ありませんでしたよ」

「あの拳、当たったら死ぬじゃない」

「大丈夫ですよ。調整できます。それより、もうすぐ仕事ですから早く食べてください、助祭」


 話しているとイングルビーさんがテントから出てきた。


「お二人とも行きますよ」


 イングルビーさんの言葉で助祭は急いで肉を食べ始めた。

 仕事をする気はあるようだ。

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