第11話

「それではキャンプへ行きましょう。開拓の話し合いもしなくてはなりませんからね」


 先頭の二人と長が私に背を向けて歩き始める。

 私は足首まで川に浸かりながら渡って彼らと合流した。

 私の後ろには銃を持った二人の若者。

 血気盛んでないことを祈るばかりだ。


 前を歩く長は頑丈そうなズボン、脛まで覆うブーツへ裾を入れていた。革製のベルトに黄ばんでいるワイシャツを着て腕を捲っている。杖は白色で長く、持ち手から先まで少し湾曲していた。


 緊張している二人は薄手のズボンに旧時代製の靴、テント用の布で作ったようなベルト、雑なシャツを着ていた。

 粗い生地を使って、二つの筒を作り、一つの筒には首と胴の穴をあけ、もう一つの筒に縫い付けただけの服だ。


 後ろの二人は現状見えないが、覚えている服装は長と似ていた。

 今、後方を歩いているリズムが一定で足音も静かだ。落ち着いている。

 後ろを心配しているとキャンプに着いた。


 八つのテントが集まって中心で焚火をしていた。焚火では四本の柱にのった金属板があり、その上で何かの肉が焼かれていた。町で買った肉かもしれない。


「皆、来てくれ!」


 長が大きな声を上げて、キャンプの皆を呼ぶと、テントからぞろぞろと多数の人が出てきた。周囲を見ながら数えてみると二十人いた。

 私の近く人達を合わせると二十五人、皆早起きだ。


「町から来た地教会、戦闘司祭のノックスさんだ。これから開拓の手伝いをしていただけるそうだ。ノックスさん」


 長は私に場所を譲って自己紹介をさせたいようだ。


「皆さん、はじめまして。戦闘司祭アルバート・ノックスといいます。開拓のお手伝いをさせていただきます、よろしくお願いします。生活が安定して送れるようになる頃には教会を建てていただきたいと考えています。これから頑張りましょう」


 そう言って頭を下げた。

 二十人は好意的だった。

 戦闘司祭は労働力として受け入れられたようだ。


「ノックスさん。開拓の話し合いを」


 そう言って周囲の五人と一緒に長の案内するテントへ入った。

 テントは随分と大きく、中へ入ると大きな机と折りたためる椅子があった。

 四方の支柱は随分と太く、頑丈で重そうだ。

 このテントは人が寝泊まりしないのか机と椅子だけが置いてあった。


「ノックスさん、そちらにお座りください」


 町の人で私の事を司祭と言わないのは、珍しい。

 他の宗教を信じているのだろうか?

 『カミ』と言われる存在を信仰している人達は、特に地教会を認めない性質がある。

 不思議だ。地教会は他の宗教に干渉しないのに。


 座る場所は長方形の机で辺が短い所。対面には長がいる。

 私の右前には緊張していた二人、左前には若者二人だ。

 金属の箱を下ろして椅子に座ると、五人も席に座った。


「ノックスさん。開拓の予定をお話しします」


 長が話してくれたのは、頑張って井戸を掘ろうと思う。食事は基本狩りになるかも、住むところは早く作りたいけど人手が。という悩みしかなかった。

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