第6話
○
森の手前に到着したのは午後三時だった。
木こり達がキャンプをしていたであろう場所には誰もいなかった。
焚火跡には折れた枝がのっていて、座る為の切り株の上にも枝葉が多くのっていた。
歩き詰めだった為、箱を下ろして水筒を取り出す。
残量を確認しながら飲み。水筒を仕舞う代わりにナイフを取り出す。
焚火にのっていた枝を薄く裂き火口を作る。
周辺に散らばる枝を集めて火を付けようとしたが、まだ時間がある為、狩りを行う。
狩りの準備をする為に、まずは箱を隠す。
キャンプ地の周辺で枝葉を集めて箱に被せた。
切り株の近くに置いた為、町の人なら箱を見て開けはしないだろう。外の人は開けるかもしれない可能性があるが。
それよりも今日の夕飯だ。
腰の二丁と後ろ腰の一丁、捌く用のナイフを持って狩りに向かった。
キャンプ場所は問題なく分かる。訓練の賜物だ。
周辺に変異動物がいないことも分かる。地教会戦闘技の賜物だ。
目を閉じて、祈りをするように意識を集中する。
皮膚が感じ取る生暖かい風、鼻に入る土と木の匂い、木々の隙間から入り込む日光の暖かさ、そして土から伝わる人間とは思えない足音。
「見つけた!」
私は口角が上がるのを抑えられなかった。
私が好物としている変異動物が、獲物である私を見つけてこちらに向かっている。
森から向かってきているその変異動物は多数の足を持つ動物で身はプリプリとしており、肉という呼び方が失礼なくらい美味しかった。
あれは肉ではない、身だ。
森の奥の方からバタバタと足音が聞こえてきた。
キャンプ場所から森に入ってすぐに出てきた為、最近木こり達は森に入っていないのかもしれない。
お腹を空かせると私の好物は凶暴になる為、アメリアの持っていた上下二連中型砲では殺せない。
左のホルスターから銃を取り出す。
私が訓練所卒業時に選んだ銃は装弾数に優れ、貫通力のある弾を発射する。小さいのに連射砲の弾と同じような形状をしているのが特徴だ。
遊底を少し引いて、装填されているかチェックする。
緊急時に左を抜くことはない為、装填していない。遊底を引き切りポケットの中に入れている弾を装填する。
安全装置を解除して迎え撃つ用意をする。
変異動物は走ってこちらに飛びかかって来るだろう。そしてそのまま体重で押さえつけ、人を喰らう訳だ。
戦闘司祭の適性は体力、気力、祈力、地力で地力はウィルを探すのに使った。
地力は攻撃に応用が利きにくい。しかし、祈力は別だ。
地教会で副助祭以上の任を受けると祈りの力、祈力の扱い方を教えられる。
悪用すれば教会中から追われ、いずれは殺されるほどの力だ。教会はこの力で町を守り、町から必要とされている。
もちろん。教えられてできない人もいる。だから戦闘司祭の適性の一つでもある。
祈力は有限だ。
効率よく使わなければ、倒れることになる。
まずは薬室に送り込んだ弾をイメージする。次に弾が進む銃身、射出された後の軌道をイメージ。
そして目を閉じて祈る。この弾丸が相手を貫くことを。
大きくなる足音を無視して祈るように意識を集中する。
そして、息遣いが聞こえるまで近づいてきた。
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