エピローグ
三幹部と竜の戦いは熾烈を極めた。
S班の面々はただただ銃を構えるしか出来なかった。
そこに飛来する一筋の流星。
竜騎士だ。
誰も彼もが人の味方でも怪人の味方でもない。
皆目的は一つ。
敵討ちだった。
血の雨が降る。
蟷螂が殺られた。
首を竜に引き千切られ絶命した。
それでもその鎌は竜に一矢報いた。
鎌は胴体を袈裟斬りにしていた。
そこに鍬形がハサミをねじ込む。
傷口をこじ開ける。
血飛沫が上がる。
しかし竜は鍬形のハサミを掴んでへし折った。
最大の武器を失い鍬形は戦意を喪失する。
そこに貫手で心臓を一突き。
残るは飛蝗の怪人。
しかし竜騎士に。
S班もいる。
竜種はただニヤリと笑って。
火球を放った。
燃え盛る丘の上。
蟷螂と鍬形の骸は焼け焦げて燃え尽きた。
竜騎士は飛蝗と竜を共々両断するために剣を振るった。
それを脚で受け止める飛蝗。そのまま蹴り飛ばし、跳躍する。
そして竜を踏みつけ地面に陥没させる。
竜の動きが止まったところで。
飛蝗は小型の群れを放って竜騎士を牽制する。
そしてS班には見向きもしない。
ただ竜を見つめる。
「その鱗、貰い受ける」
「ハハハァッ!!」
今日一の巨大な火球が天をも焦がす。
飛蝗の群体を焼き払い、その炎はS班にも届こうとしていた。
それを庇ったのは――
「あんたは!?」
――竜騎士だった。
炎をまともに受けてそのダメージは許容量を超えていた。
竜のKシステムでもこの始末。
もう誰にも出る幕は無いかと思われた。
その時だった。
S班の玲に腕輪が手渡される。
それは竜騎士からの贈り物だった。
「俺……正義の味方に……なれたかな……」
猫型怪人には玲が幼い頃に怪人と人間の共存を願い竜に殺された少女に見えていた。
そして玲は答える。
「うん……ッ!」
腕輪をはめて、甲虫のKシステムを起動する。
鎧を纏い、竜と対峙する。
「あの日以来ね、怪人」
「……そうか、殺し損ねがいたんだな」
「互いに」
「仇」
言葉はそれ以上不要だった。
問答無用の殴り合い。
一撃必殺の竜の拳を真正面から受け止めて蹴り返す。
それは最早、Kシステムの力を凌駕し、玲の潜在能力を極限まで引き出していた。
殴打の数が百を超えた辺りで鎧にヒビが入った。
蹴りの数が百を超えた辺りで鱗にヒビが入った。
殴打の数が千を超えた辺りで血が舞った。
蹴りの数が千を超えた辺りで血が舞った。
互いに人間態になっていた。
殴り合いは続く。
玲の一発が竜の顔面を捉えた後、仰け反ってそのまま倒れた。
すかさず彼女はナイフを取り出し喉元の突きつけた。
「最期に言い残す事はあるか最強種!」
「……ああ、この場所を戦いに選ぶのは良くなかった……友の墓場が汚れてしまった……」
「……悔いは」
「ない、よ」
ナイフを喉に突き刺し引き裂いた。
返り血にまみれて玲は倒れ伏した。
これは惨劇の物語。
救いも無ければ。
許しも乞わない。
怪人は生まれ続けるし。
人間は差別を止めないだろう。
そしてまた。
竜が現れる。
怪人罪 亜未田久志 @abky-6102
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