第5話 怪人対怪人 人間対人間


 蜘蛛型怪人と蝙蝠型怪人が縄張り争いをしていた。

 人間の狩場を取り合っていたのだ。

 そして人間もまた争っていた。

 竜に賛意を示す人間と、反意を示す人間がいたのだ。

 争いは平行線上に続き交わる事は無いかと思えた。

 しかし、そこに討伐班が現れる。

「おいこりゃどういうことだ。まるで戦場じゃねぇか」

「人と人が争ってる……?」

「あっ! あっち! 目標と……別の怪人が戦ってます!」

「あーもうなにがどうなってんだ!」

「こちらF班! 状況確認求む!」

 指令室ではドローンによる監視モニターの映像で状況を把握する。

「……G地区か、厄介だな。元々そこは争いの絶えない地域だった、がここまで露骨になるとは」

『こちらはどうすれば!?』

「暴徒はとりあえず放っておけ、怪人討伐が先決だ」

『怪人ってどっちの!?』

「どっちもだ」

 そこで通信を切る。

「現場に任せるのですか?」

「あの指示だけで十分だろう。あれで働けない人間などいらない」

 現場。

「畜生! 切りやがった!」

「両方倒せって!? 無茶ですよ!」

「いいから弾丸込めろ! とりあえず民間人巻き込まないように一斉射撃!」

 弾丸の雨が降る。蜘蛛怪人はそれを糸で防御し、蝙蝠は不規則な軌道でかわした。

「慣れてやがる……」

 そして人間にも怪人にもお構いなしに二体は暴れ回る。

 それはまるで暴風にも似て。

 その嵐の中、一筋の光が煌めいた。

 それは蜘蛛の糸を切り裂くと。

 F班の前に現れた。

「本部!? 新型怪人が――」

「その銃貸してくれ、俺の爪じゃ殺しきれない」

「は?」

 は銃をF班の一人から引っ手繰ると、そのまま戦場に躍り出た。

 暴徒を手足を撃ち抜き鎮圧していき、そのまま蜘蛛のインファイト距離まで詰めるとフルオートで射貫いた。返す刀で蝙蝠を追いかける。

「怪人が、討伐班の味方を……?」

 しばらくして猫型怪人が蝙蝠の首を持って帰って来た。

「これで証明になったか?」

「……なんの?」

「俺を討伐班に入れてくれ」

「冗談だろ」

「竜種を殺したいんだ」

「なんで」

「敵討ちだ」

 黙り込むF班の面々。

 そこに苦しむ暴徒の怨嗟が耳に入ってくる。

「そいつは怪人だぞ!」

「いますぐ殺せ!」

 竜種に賛意を示す者の狂気が耳に入って来る。

「竜の御方を傷つけるなど!」

「弱者の味方を殺すなどと!」

 どちらも耳障りで。

 思わず耳を覆いたくなった。

 そんなF班の意思も無視して猫は告げる。

「俺はあの竜種ほど甘くないぞ、これはお願いじゃない、命令だ」

 銃口と爪を同時に突きつける。

 F班の隊長は両手を上げて。

「降参だ……お前を受け入れる……それでいいな本部」

『……許可する。実験棟へ連れてこい』

「はぁ、慣れない事はするもんじゃないな」

「お前分かってんのか。敵地に一人で放り込まれるようなもんだぞ」

「こういう手土産がある。こいつが俺の手の内にある限りは大丈夫だろうさ」

 そう言って猫が握っていたのは竜の鱗だった。

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