第4話 共存の道
――怪人と人間が共存出来たらいいのに!
そう言って笑った彼女は僕の
彼女は人間だった。
純真無垢な人間だった。
この世に怪人がいる事を知っても恐れず受け入れる気丈な人だった。
だからかもしれない。
無惨にも殺されたのは。
彼女の家に火が点いていた。
燃える業火の中、助けを求める声が聞こえた。
僕は迷わず炎に飛び込んだ。
そこに居たのは「第一号」最初の竜種。
後に人間に倒される事になる怪人の味方。
そう怪人の味方に彼女は殺された。
それから僕は第二号があっさりやられるところを見て失望した。
第二号は何も選ばず、何も行動せず、何も得なかった。
ただ虚脱だけを骸に彼は死んでいった。
それほど人生に絶望していたのかもしれない。
僕だってそうしたかった。
彼女が死んだその日から。
僕の生きる意味など無いのだから。
だけど第三号が現れた。
第二号が死を受け入れてすぐの事だった。
第三号は討伐班を葬ると、丘の上で宣言した。
力ある者は抗えと。
弱者ならば守ってやると。
己を害するならば殺すと。
そう宣言した。
世界はその意見に反対するか賛成するかに二分された。
でも結局、世界は変わらなかった。
だってそうだろう。
強者は元から怪人を殺し、人間を殺していた。
弱者を守ると言った第三号は積極的には動かなかった。
僕は憤った。
言っていた事と違うじゃないか。
僕は猫の怪人だ。
爪を研ぎ、牙を磨いた。
僕は第三号の言った弱者に成り下がるつもりも無ければ、強者に成りあがるつもりなかった。
ただ第三号に告げてやりたかった。
お前の言う強さは間違っていると。
竜の丘にたどり着く。
「なにか用か、怪人」
「お前だって怪人だろう」
「ああ、そうだな」
「どうして弱者を守らない」
「守っているさ。この手の届く範囲でな」
俺は爪を伸ばした。
「嘘を吐くなッ!」
「……ああ、今、俺は嘘を吐いた。抗わない者は生き残る価値は無いと思っている」
「抗う事が強さだと!? 争う事が強さの照明だと!?」
「ああ、他に何がある?」
僕は息を吸いこんだ。
目の前の憎き敵を睨みつける。
仇である第一号はもう死んだけれど。
同じ竜種がまだ生きている。
その事実に僕は怒りを覚えていた。
「かつて怪人と人間の共存を望んだヒトがいた」
「……」
「そのヒトは竜種に殺された」
「そうか」
「だから、僕はお前を殺す」
「理由は?」
「審判者気取りの座から引きずり降ろすって言ってんだ!」
「上等」
竜の爪と僕の爪が交差する。
切り裂かれるのはもちろん、僕の方だ。
分かっていた事だ。
それでも今、抗わなくていつ抗う。
彼女に報いるためにも僕は此処で戦わなきゃいけないんだ。
「ああああああああああああああああああああああ!」
「もう終わりにしよう」
みぞおちに一撃を喰らった。
一気に肺から空気が抜けて僕は意識が跳びそうになる。
胴体を貫通していないのが不思議なくらいだった。
「人間の討伐班のところに行け――俺を倒したいと、これを持って」
それは竜の鱗だった。
「な、にを」
「弱者は守る。お前は抗う意思を示した弱者だ。だから守る事にした。そしてきっとお前なら俺を殺せると思った」
意味が、分からない。
こいつは何を言っている?
僕はその腕に牙を突き立てようとするも振り払われる。
「Kシステム。あいつらはそう呼んでいた。お前がそれを使えば、あるいは俺に届くかもしれない」
「お前の目的はなんだ……なんなんだ……!」
「友の弔いだよ」
――それじゃ僕と同じじゃないか。
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