第2話 討伐班「S」
銃を磨くのは彼女の日課だった。
あの日の生き残りだった。
第三号誕生の日。
惨劇の跡に彼女の身体はあった。
咄嗟に味方に庇われ、その骸の下に玲はいた。
目覚めた時は既に皆死んでいた。
その後、S班に配属され、怪人共を狩る事に尽力した。
全ては竜種を狩る為に。
「よう元気かレイ」
「ええ、おかげさまで」
「まだ竜種を狩ろうだなんて考えてんのか?」
「人間は今までそうして生きてきました」
語り掛けて来たのは先輩の
S班のリーダーだ。
「昔は核弾頭まで持ち出したらしいが」
「そんなものなくても、狩ってみせます」
「頼もしい新人だ!」
パトロールの時間。
今日も人間に擬態した怪人を狩り出す。
車に乗り込み都市部を回る。
のん気に鼻歌を奏でるリーダーに溜め息で返すメンバー。
「どうして本部は竜の丘を攻撃しないのですか」
「今までなんどもしたさ、その度に何人死んだと思う?」
「……」
「正解、聞かなくていい」
しばらくすると通信が入る。
『こちらA地区! 飛蝗が! 飛蝗がああああああ』
「おい、応答しろ、応答……ちっ」
「助けに行きましょう」
「どうせもう死んでる。行くだけ無駄だよ」
「隊長!」
「わーったよ S班、目標A地区、装備用意」
「「「了解!!」」」
銃器を構え、進路をA地区に。
しばしのドライブの後に、たどりついたのは惨劇の広場。
首を引っこ抜かれた男に。
臓物を食い散らかされた女。
そんな死体がごろごろと転がっていた。
「これがあの竜種の言う『公平』だと?」
「竜は、んな事言ってねぇよ。ただ自分の主張を押し付けただけだ。これに憤るなら飛蝗をなんとかしろ」
「竜は弱者の味方のはずです」
「弱者、ね」
死体をよく見ると拳銃が握られていた。
「武装している……?」
「よくいる私兵さ。飛蝗がよく標的にしてる」
「討伐班以外の武装は禁じられているはずです!」
「そんなの律義に守ってたら生き残れねぇよ」
玲は反論出来なかった。
現象として怪人が湧く世の中。
生きていくためには法を犯す事も是とされる。
これでいいのか。
こんな世の中でいいのか。
この都市は狂っている。
その時だった。
「討伐班か」
「全員発砲用意」
ランクとしてはかなり上位の個体。
リーダーはすぐさま戦闘用意をさせた。
それに先んじて玲が動いた。
手元には高振動ナイフ。
手刀とナイフがぶつかり合う。
ゼロレンジ。
ナイフを持った手とは違う方の手で持った拳銃で甲虫の腹を撃つ。
それは腹を貫き、ナイフは手刀を弾き、そのまま頸動脈へと斬り上げられた。
彼女は、玲は、かつてはB班のエースであり隊長だった。
その戦闘センスはずば抜けており。
彼女はそれゆえに最強のS班に移籍となった。
竜種相手に生き残ったのが最後の一押しだったのだ。
しかし、そんなもの彼女の望みではない。
彼女の望みはただ一つ。
「復讐です」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます