第25話
声の主は藤倉だった。
生きてたか!
その巨体がユーリが使っていた盾を掲げて突っ込んできた。
そして俺の肩を掴み、後ろへ放り投げる。
ブランカとノワールの構えた四つの銃口が火を噴いた。
が、神秘素材の盾は、その銃弾全てを受けきり、びくともしなかった。
ブランカとノワールは、左右に分かれて避ける。
藤倉は、そのまま踏み込んで盾ごとブランカに突っ込んだ。
そのまま、指揮所のコンソールに押し倒される。
避けきったノワールが藤倉に銃口を向けた、そのタイミング。
藤倉の背後に隠れて走っていたユーリが飛びかかった。ユーリの右手にはナイフ。
ノワールは銃剣を交差して、それを受けた。
そのまま、ユーリはノワールの腹を蹴り飛ばす。
「くっ!」
ノワールはもんどりうって倒れた。
ユーリの方が一回り小さいため、子どもが大人を蹴り飛ばしているような錯覚を覚える。
倒れつつもM19の銃口を向ける。
ユーリは距離を取らずに、そのまま突っ込み、ノワールの胸にナイフを刺し入れた。
「!」
藤倉の方は、コンソールに押し倒したブランカに向かって、グロック19の引き金を引いていた。
藤倉に引き倒された俺も、そのタイミングで飛び出していた。
麻耶に向かって。
そして、背後から一人だけを狙っていたのはエマ。エマはステアーAUGをフェルナンに向けていた。
「ちっ」
フェルナンの胸に、5.56mm弾が吸い込まれた。
そして、その運動エネルギーは、そのままフェルナンを吹き飛ばした。
真っ赤な血飛沫が飛んだ。
だが、それでは終わらない。
胸から血をふき出させたまま、44オートマグを、麻耶に向かって飛び出した俺に向けた。
まさか! この状況で、こっちを狙うかよ!
麻耶を抱えて右の籠手で顔を庇う。
思いきり殴られたような衝撃。
弾丸は真っ直ぐ俺の額に向かって飛び、籠手は貫通させることはなく、44マグナム弾の衝撃に耐えきった。
俺は麻耶を抱き抱えたまま、床へ転がった。
「F2が逃げた!」
床のハッチが開いていた。
フェルナンがそこに飛び込んだらしい。
いや、なぜ、そんなに動ける!
エマがハッチの中に向かって、5.56mm弾を撃ち込む。
そして、俺の腕の中では、麻耶が泣いていた。
「涼真さん……ありがとう……」
俺は拘束を解き、頭をなでてやった。
「ほら、親父さんだぜ」
「父さん、父さん生きてた……、あいつら死んだって……」
麻耶は父親のもとへと歩み寄る。
感動の再会というヤツだ。
それを横目に見つつ、ユーリに声をかける。
「さて、あと何分だ。ユーリ」
「8分30秒」
それは、ヘリが迎えに来るタイムリミット。
ふむ。愛想は悪いが、察しはいいな。
「フェルナンは俺が仕留める」
俺はP210を抜いた。初弾はもともと装填済みだ。
「後を頼む」
このまま放っておけば、ヤツは、必ずもう一度やってくる。
ここで仕留めておかなくてはいけない。
「バックアップはいるか?」
とはユーリの言葉。
「麻耶を脱出させてくれ。それが最優先だ」
「了解」
俺はハッチを向こうに境界を作り、確認する。
フェルナンはいない。
俺はハッチの中に飛び込んだ。
「涼真さあん!」
麻耶の声がしたが、とりあえず、無視することにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます