起死回生

目を開けると、次は白だった。きょろきょろと周りを見回すと、夜に約束していたゲーム仲間と目があった。


「おい、目を覚ました!誰か呼んできて!」

「マジか⁈わかった、行ってくる!」


慌ただしい空気を感じる。すぐにお医者さんが来て、体の様子を確認した後、しばらくの安静を言い渡し帰っていった。


聞いたところによれば、あの事故のあと、俺はすぐに救急車で病院に担ぎ込まれたとのことだった。財布に入っていた身分証と、時間になっても現れない俺にゲーム仲間が連絡したことで、事はスムーズに進んだ。実家の方にも連絡をいれてくれたそうで、治療もすぐに行えたらしい。

幸い、運転手の急ブレーキと当たり所も悪くなかったおかげで大した怪我ではないらしい。数日入院してなんともなければ退院可能だそうだ。


「それにしても、急に飛び出すなんて、どうしたんだ」

毎日のようにお見舞いにきてくれたゲーム仲間が神妙な顔で聞いてくるのに、俺は「疲れてたのかな~」としか言えなかった。本当のことを言っても信じてもらえないだろうし、あの少年の申し訳なさそうな顔がちらついた。それに入院期間が無駄に延びても困る。

家族も色々差し入れてくれて、数日の入院生活は決して不便なものではなかった。


あのときの運転手は丁寧に謝罪してくれ、きちんと対応もする、と言ってくれたがこちらの不注意もあったのだからと、大事にはせず丸く収めた。そもそも、事故が起きた時点でかなりの迷惑をかけてしまっているのだ。これ以上責め立てるような真似はできない。


そうして、退院の日を迎えることとなった。あの日持っていた持ち物はすでに手元に戻っていた。とはいえ、スマホの画面は結局バキバキだし、財布も装飾がとれていた。鍵にいたっては、余程変なところに飛ばされたのか見つからなかった。

まあ、自分の体が無事だった代償と考えれば安いものだ。


病院から自宅までは近いので、リハビリも兼ね徒歩で帰った。鍵は実家に預けていた予備を持ってきてもらった。

あの日と同じように鍵・財布・スマホをポケットに突っ込み歩いていく。平日の昼間だからか、住宅街は非常に静かで物音ひとつ聞こえなかった。



家の鍵を開け、中に入る。やけに久しぶりな気がして「ただいま」とつぶやく。

鍵を閉め、靴を脱ぎ、手を洗う。久々に我が家に帰って来られた。今日は予定もないし、我慢していた分、気の済むまで思いっきりゲームをしよう。



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