再び、地下遺跡に1(ユニット:地下攻略連合軍)

 連合軍はさしたる障害も無く、エリア0-3に位置する遺跡前に到達した。


「全員、止まれ」


 桐夜が制止を促すと、めいめいに足を止める。


「この先は危険な区域だ。どう危険かっつーと……うっかり足を踏み入れたら、あっという間にヨボヨボになって死ぬくらいに危険だな」

「どういうことだ?」


 どよめきが起こる中、代表して疑問の声を上げたのはゼルシオスだ。


「言葉通りだよ。何の備えも無しに入ったら、すぐさまジジイになって死ぬ。だから俺……俺たちは、備えを持って入ったんだ。だが、今は持ってねえ」

「じゃあ、入らずして終わるかぁ?」

「待て、ゼルシオス。彼には考えがあるようだ」

「よく分かってんな。だから、俺が新たな“備え”を作る」


 そう言った次の瞬間、桐夜の中心から半径100m圏内を覆う、青と緑が混じったドームが現出する。それは瞬く間に、連合軍全員を包み込んだ。


「なんだ、こりゃあ?」

「これが備えだ。俺の能力で、全員の体を『保守』し、周囲の状況変化を『受容』できる状態にした。


 桐夜は前回突入した際、遺跡における恒常的な異常に対抗する能力を自力で編み出していた。

 それを、自身の魂鏡石に加えて全身の人工魂鏡石までフルに活用し、“範囲を限界まで広める”ことで仲間たちの保護を最も重視した構成に置き換えたのである。


「であれば……この光に包まれている限り、我々は無敵なのか?」

「違うぜ。あくまでも対抗しうるのは。こいつが“危険”の正体なんだが……いいや。俺は今、本来防御用の異能を繰り出してはいるが、ここまでの範囲に展開してしまうとまともな活用が出来やしねぇ。攻撃は貫通してくると思うべきだぜ。あ、ついでに俺からの援護もほぼ無理だ」


 物理的攻撃への防御を想定しない構成である。通常桐夜が繰り出す障壁とは性質が異なるため、ドームが攻撃を防御・吸収することはほとんど期待できない。

 しかし本来の防御性能を限界まで引き下げた代わりに、時間異常に対しては最大限、出力と持続力を併せ持つように割り振ったのだ。とはいえ、卓越した桐夜の持続力であってもまだ不安を覚えるほどに、これまでに想定していなかった方法での異能の行使は魂鏡石からの大きな出力を必要とした。


 結果として、桐夜は全員の安全を確保する代償として、今回起こる戦闘においてはほとんど案山子カカシ同然であった。いちおう自衛できるだけの余裕は残してあるが、それでも直接的な戦闘で役に立つことはまるで有り得ないだろう。


「だが……ここにいるみんななら、何とかしてくれる。俺はそう思うんだ。こう見えてそれなりに修羅場をくぐってきた俺だけど、その俺が肌で『強い』と感じてるんだ。イケると思う」

「であれば、その期待に応えねばな」

「あったりまぇよ! 俺もやってやらぁ!」

「私も! リルヤを助けなきゃ!」


 幸いにして、連合軍の士気は旺盛である。

 あとは、待ち構える“敵”をどう攻略するか――それだけであった。


「準備は整った! この後に起こることは移動しながら説明する、行くぜ!」


 桐夜は前回訪れた――ある依頼によって――際に預かった鍵を、遺跡の扉に差し込んで回す。




 扉が開く轟音の響く中、連合軍は遺跡に突入を始めたのであった。


---


★解説

 これが、桐夜君を連れてきた最大の理由です。

 いるだけで攻略難易度が激減します。


 あと、南木様に向けて先に伝えておくことが。

 おそらく桐夜君の能力の特性上、ほぼ間違いなく厄竜戦のギミックの一つを貫通ないし弱体化する運びとなります。問題がありましたら今のうちに。


 以上を含め、要望ある方はコメント下さいませ(要望の無い方も可)。

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