戦力は揃った(ユニット:地下攻略連合軍)

「待たせたな」


 近くで待機させていた桐夜たち一団に、シューヤは引き連れてきたゲルハルトたちを合流させる。


「彼らは何者だ? 見たところ、凄腕揃いに見えるが……」

「運命が示す協力者、と言ったところだ。俺の用事は済んだが……む」


 シューヤが見たのは、前に進み出るエルピスだ。

 真意を一瞬で見極めたシューヤは、短く話しかける。


「使命があるか」

「左様。“希望”の力を授けんがため、彷徨さまよっていた」

「ならばその使命、存分に果たすが良い。次なるは、そこな神の娘が導くであろう」

「え、ボク?」


 いきなり指名されたパトリツィアが戸惑う。


「そうだ。俺の見る限り、水先案内人は君がもっとも適当だ」

「やーだー、ゲルハルトと離れたくないー」

「この後の戦いにおいては、向かぬだろう。それほどの敵だ」

「だろうな。腕っぷしは悪くなさそうだが、俺もその意見に賛成だ」


 この後の戦い。当然、敵が待ち構えている。

 そのと戦った桐夜の言葉は、確固たる説得力を有していた。


「もー……。ゲルハルトー、ちゃんと無事に戻ってきてよー?」

「当たり前だ。それより、この女性は……」


 繰り返すようであるが、今のエルピスは――着ている服を除いては――墨崎智香の姿を借りている。

 本来性別の概念を持つかどうか怪しい存在であるものの、この場において深い事情を知る者はそうはいない。


「今より、使命を果たす」


 そう言うと、エルピスはゲルハルトの右手を、自身の両手で握る。


「おっと?」


 敵意は無い、しかし真意を読めない行動に、ゲルハルトは怪訝な顔を浮かべる。

 エルピスはそれに構わず、自身のすべきことをした。


「我が力を託す。絶望を、止めてくれ」


 短い言葉ののち、ゲルハルトの全身に光が宿る。悪意の無い、柔らかな光だ。


「何をした?」

「我が名の意味は“希望”……ここにいる全ての者に、託すとしよう」


 エルピスは次々と、この場に居合わせる者に希望の力を託す。ただの軍人に過ぎないゼルシオスや、元々希望の力を持っている桐夜をはじめ、全員にである。


「俺もか」

「左様」


 もちろん、神と同質の力を持つシューヤも例外ではない。


「俺が最後のようだな。これで戦力は揃った。さて、娘よ」

「パトリツィア! ……案内でしょ? しょーがないにゃー」

「頼むぞ。道中の障害は無いだろう」

「はーい。ほら、行くよ」

「承知した」


 かくしてエルピスはパトリツィアに連れられながら、FFXXの元へ向かうこととなったのである。

 その様子を見届けたシューヤは、桐夜に告げた。


「では、案内を頼むとしよう」

「任せとけ。リルヤを助け出してやる」

「それは私の役目よ」

「だったら俺はその手伝いだ。んじゃ、行くぜみんな。ついてこい」


 地下遺跡を攻略する、FFXX本隊と代行者一行、そして桐夜たちの連合軍。

 希望の光に満ちた彼らは、為すべきことを成し遂げるため、着実に歩みを進めていた。


---


★解説

 お待たせしました。次回、ないし次々回からいよいよ攻略です。

 なお、パトリツィアは能力上攻略に不向きだったため、(エルピスの、FFXXまでの案内役として)テイよく離脱させました。


 なお、エルピスはじめ、本エピソード中のキャラの描写において「ここはこうしてほしい(ex. 話し方、能力の行使)」という要望があれば応援コメントまでお願い致します。

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