再乗艦、そして(ユニット:代行者一行&スィル)

熾烈しれつな砲撃だな」


 代行者は、要塞から放たれる砲撃の嵐を見つめていた。


「しかし、それでもちぬ戦艦……ゲルゼリア改、か。あれはさしずめ、空の要塞だろうな」

「ああ。よく引き付けてくれている。ヴィグバルトよ、竜の姿となりて、低空飛行で要塞より離脱せよ」

「承知している。だが、どうやって合流する?」

われが引き受けよう。が力ならば、連絡を取ることは容易い。後は任せよ」


 代行者の言葉を受けて、ヴィグバルトが竜化する。

 スィルやアンデッドメイド5名を含めた一行が続々と背中に乗り、最後に代行者が乗ると、「行くぞ」と一声かけてから飛翔を始めた。


「十分な距離を取れ。ゲルゼリア改よりも要塞から離れた瞬間、合図を送る」

「ああ」


 ヴィグバルトは全速力で要塞から距離を取り、ゲルゼリア改よりも後方に位置する。


「今だ!」

「承知」


 代行者は神錘を垂らし、SGエネルギーを込める。


「ゲルゼリア改よ。囮は十分だ、下がるが良い」

『承知した』


 Mが応答する声が響く。

 原理を分かっていないカティンカやスィルが目を丸くして見つめ合うが、代行者は構わず進めた。


「後退を始めたようだ。我らも続くとしよう。ヴィグバルトよ、引き続き要塞から離れよ」


 ゲルゼリア改が要塞から離れるようにして、後退を開始する。それに続いて、ヴィグバルトもまた要塞から距離を取る。


 砲撃の射程外、さらにその2倍の距離へ離れるまで、離脱は続いたのであった。


     ***


「協力者を連れてきた。受け入れを求む」

「了解した。格納庫を開放する」


 代行者の連絡により、ゲルゼリア改が格納庫のハッチを開放する。完了次第すぐにヴィグバルトが一行を乗せて入り、全員がヴィグバルトの背から降りたところで再閉鎖された。もちろんヴィグバルトはすぐに人間形態に戻っている。


「我らも間借りしている身だ。いくらかの慎みは持ってもらいたい」

「わ、分かってるわよ!」


 傲岸不遜とも言えるスィルだが、代行者の力量が分からないほど愚かではない。本能的に、「怒らせたら手に負えない」と判断し、いくらか抑えているのだ。


「さて、仮にも行動を共にする身だ。挨拶に行くとしよう」

「し、仕方ないわね……。ところで、私が気にしているアイツ……誰のことだか分かってるの?」

「分からんな。いるかいないか、我が知っているのはそこまでだ」


 今の代行者の言葉を聞いたスィルの表情が、わずかに引き締まる。


「だったら……どういうヤツなのか、教えてあげるわ」

「聞こう」




 挨拶に向かう道すがら、スィルは一行に向けて話を始めたのであった。

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