帰還と降雨(ユニット:FFXX本隊)

「ちょっと飲み過ぎたか? フラつくぜ」


 あまり慣れない飲酒の後でも、ゼルシオスの操縦技術はほとんど衰えが見られない。


「まったくだ。それに……服、剥かれたままだな」

「ああ」


 パトリツィアは返してもらったが――そもそも普段着が下着というかパンツとブラジャー一体型のようなものである――、ゼルシオスとゲルハルトはパンツ一丁である。ついでに靴と靴下もだが。


 そんなわけで、うっかり寒空に出ようものなら震えること確定な格好なのだ。もっとも、今はアルコールが回っているので、その間は大丈夫だが。


 と、ゼルシオスが通信を開く。


「おーい、アドレーア? 着艦すっぜ」

『かしこまりました。ハッチを開放します。ところで……顔が赤くなっておりますが、何かあったのでしょうか?』

「飲み会だ! 酒飲んできた」

『そういうことでしたか。格納庫で詳しくお聞きします』

「あいよ」


 ゼルシオスとゲルハルトは、無事に着艦を済ませたのであった。


     ***


「うおっ、さむ! って、気のせいか」


 格納庫に降りたゼルシオスは、ほぼ素肌で気温を直接感じている状態である。


「寒くはないな。十分な暖房が効いている。だが、普段と違う感覚には慣れないな」

「ボクはー?」

「お前は普段通りだろうが」


 ボケるパトリツィアをいなしつつ、ゲルハルトがゼルシオスに同意する。

 ……と、カツンカツンという足音が聞こえてきた。


「ゼルシオス様……って、あらあら」

「許せ。着てねぇもんは着てねぇ。いくら俺でも、人前での露出趣味はぇんだぜ?」

「承知しております。誰か、予備の着替えを――」

「待て。上下組2着な」

「ええ。ゲルハルト様の衣服も、収納してあるものの中から見繕いましょう。試着のために、兵士への同行を」

「ああ」

「ボクもー!」


 うまいことゲルハルトとパトリツィアがいなくなったところで、アドレーアは本題を切り出す。


「何があったのか、ゲルハルト様とパトリツィア様のことも含めて教えていただけますか?」

「へいへい、着替えながらな」


 ゼルシオスは自室に向かいながら、アドレーアに事のあらましを話した。


「……なるほど、そういうことでしたか。現在は友好関係となっている、と」

「ああ。だから、あいつらに襲われるこたぁもうぇだろうぜ。ただ……」

「ただ?」

「それとは別に、もうひと悶着ありそうな気がするんだよな」


 ゼルシオスが呟くと同時に、無線が入る。


『アドレーア様。針路上に、妙な雨が』

「雨……ですか?」

『はい。雲も何も無い状況から、突然降り始めました。自然現象とは考えられないでしょう』


 兆候無しの雨天など、魔術のそれである。


「やっぱりな。当たっちまったか」

「セントラルへの最短経路上ですので、避けるわけにもまいりません。重素グラヴィタ障壁を展開しつつ、強行突破してください」

『了解しました』




 不可視の障壁をまとったヴェルセア王国艦隊は、雨の中を突っ切り始めたのであった。

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