イケメンに美女……!4(ゼルシオス&ゲルハルト&パトリツィア vs 鬼女 お万&『鬼龍神』サー・ワールドワイド・イバラガンド)

「誰だ? 悪そうな気配はしねぇが……」


 ゼルシオスが振り向いて尋ねると、鬼の大男が名乗り出す。


「我の名は、ワールドワイド・イバラガンドなり! その酒宴に混ぜていただきたく、参じた次第だ」

「そうかい。いい酒だぜ、損はさせねぇ」

「イバラガンドか。よくあたいのとこに来るとは、そんなにあたいのお酒が気に入ったのかい?」

「そうだ。升と柄杓、借りるぞ」


 話を聞く限り、お万とイバラガンドは旧知の仲である雰囲気を漂わせる。


「ところで……そこの3人はなぜ、全裸なのだ?」

「こいつに剥かれた」

「ボクはこれでいーんだけどねー」

おれは下着だけでも身に着けたいぞ。そろそろ尊厳が……」


 座り方や地面の岩によってうまいこと隠しているとはいえ、限界である。


「お万……下着だけでも、返したらどうだ?」

「何を言うかと思えば! イケメンとカワイ子ちゃんと美女は全裸が映えるだろうが!」

「……我もお前も、腰蓑や袴は身につけているだろうが」

「それもそうか」


 イバラガンドの冷静なツッコミにより、お万はふと我に返る。


「そんじゃ、ほい、これ」


 そして近くに置いておいたゼルシオスとゲルハルトのパンツをひっつかむと、うまいこと放り投げた。


「あぶね! なんつー剛速球だよ。パンツなのに手に衝撃が……」

「尋常でない腕力だな」

「これでも手加減してんだよな」


 高級生地だったのが幸いし、パンツは無事に破れず二人の元に返ってきた。


「あー、パトリツィアだっけ? お前のこれは下着と大差無いな」

「そうだよー? 元々そんな感じのデザインなんだー」

「なら丸ごと返すか。ほいっと」


 ただでさえ手加減していたのをさらに手加減し、ゆるく曲線を描くように投げるお万。


「よっと!」


 狙いあやまたず、パトリツィアの手に収まった。とはいえ、パトリツィアがジャンプしてようやく、だが。


「ぶっ!」


 当然、モロに大きな胸をはじめとしたセクシーボディを見たイバラガンドが鼻血を噴き出す。


「「おい、大丈夫か!?」」


 ゼルシオスとゲルハルトが揃って心配するが、イバラガンドは「だ、大丈夫だ……問題ない」と返す。

 が、明らかに大丈夫ではなさそうな鼻血の出具合だ。


「女の人に免疫無いのー?」

「そ、そそ、そんなことはない」

「声が震えてるよー?」

「つーか、お万と顔見知りみてぇなのに、よく彼女と接してても平気だよな」


 ゼルシオスの一言に、イバラガンドが反応する。


「彼女とは……長い近所づきあいのようなものだ。同じ鬼のよしみでな。味見として、浴びるほどの酒を何度飲まされたか……」

「その割には嬉しそうだな?」

「我は酒が好物なり。もっとも、すぐに酔ってしまうのだが……」

「ほぉ。酒が、ねぇ……」


 ゼルシオスは、お万とイバラガンドを交互に何度も見る。

 そして数秒かけたのち、何の気なしに呟いた。




「お前、毎日お万に酒飲ましてもらえば?」


---


★解説

 最後のゼルシオス君の一言は、「味噌汁」の日本酒バージョンです。

 仲の良い男女に味噌汁、と言えば……?

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