イケメンに美女……!3(ゼルシオス&ゲルハルト&パトリツィア vs 鬼女 お万&)

「そういえば、だ」


 ゼルシオスは酒を飲む手を止めて、お万に尋ねる。


「アンタはどうして、この島にいるんだ?」

「あん? あたいが? ……そうだねぇ」


 酔いが回り出して上機嫌になったお万が、いきさつを語る。


「あたいは元々、山賊だったんだけどねぇ。先輩の鬼が死んじまったのを見て、『やってられんわ』って思ったのさ」

「命は惜しいからな。ましてや、一度死んだことを覚えてる俺なら、なおさら……」

「覚えてんのか? 死んだときのこと」

「ああ。刀の山に埋もれて死んだよ。刀をしまってる蔵にいたら、地震が起きてな……出口は塞がるわ固定は取れるわ、『あ、終わったなこれ』って思ったぜ」

「うわぁ……あたいでもビビる死に方だわそれ」


 様々な要因が重なった結果の死に方とはいえ、字面だけでも想像したくないゼルシオスの――前世の死因である。

 もっとも、即死だったのがゼルシオスにとっての幸運ではあったが。


「とりま、事情は分かった気がするぜ」

「まあな。あたいも死にたかねえしな。そんでいくつもの世界を渡って……この島にたどり着いたってワケだ」

「なるほど……ん? おい、しれっとすげぇこと言ってんな」

「あたいにとっちゃ事実だからな」


 ここまでのいきさつを話したお万が、逆にゼルシオスに質問する。


「つーか、何年生きてると思ってんだ?」

「俺が40……地球人で言う16だな。それと前世で30だから、単純な年数じゃ70年は記憶があるぜ」

「あたいからしちゃ全然わけぇわ、それ。ガキどころか赤ん坊だろ」

「なんかフレイアと似てんな……」


 70年分の記憶があるゼルシオスを「わけぇ」と言い切るあたり、お万の生きてきた年数は文字通り桁が違うのである。


「……にしても、俺からすりゃあおばあちゃん……それも“ひい”が何個付くか分かんねぇってのに、随分ピッチピチな見た目してんな? カラダの若さや健康さなら、そこのパトリツィアと大差ぇだろ?」

「あたいはイラつかねぇように好きなままに生きる! んでもって、肉と酒をかっくらう! それが若さの秘訣だい!」

「お、おう」


 この場にいるFFXX組において、肉体寿命がもっとも長いとされるゼルシオスでも、250歳ぐらいがせいぜいだ。

 とはいえ、たかだか3.5倍程度では、お万にとっては大差ないものでしかない。


「それにしても……飽きねぇのか?」

「飽きる? 何にだ?」

「生きることにだよ。長く生きるなんて、俺には想像つかねぇなぁ」

「おっと、ゼル。それならいい答えを持っている人を知っているぞ」


 と、ここでゲルハルトが割り込んでくる。


「誰だ? そりゃ」

おれの母さん……アスリールだな。正確には人を超越して神なのだが」

「神サマ、ねぇ。あたいは会ったこともあるけど、はてさてどんな性格なんだか」

「……正直、相性の良しあしが予想出来んぞ」

「ボク個人としてはともかくー、本物のアスリールが見たらケンカしそー。なんか相反するんだもん」


 パトリツィアまで割り込んできた。


「キミ、『奪う』んだもんね?」

「あったりめぇよ! それがあたいの生きがいだ!」

「だったら、守護神であるアスリールとはちょっと……ね」

「まぁ、何を守ってんのかにもよるな。あと……ちょいと心境の変化があってさぁ」

「何だ?」


 ゼルシオスが促すように尋ねると、お万が答える。


「『全てを奪ってぶっ殺す』があたいのモットーだけど、なんか今のあんたらにはそうする気が湧かねぇや。もっとも、気が変わるかもだけど」

「そいつぁ光栄だ。っと、そろそろ残りも少ないな。もらっていいか?」

「あいよ。欲しけりゃお代わりもやるよ」

「あんがとよ……ん?」


 ゼルシオスが、不意に振り向く。


「どうした、ゼル?」

「誰かいるな。出てこい!」


 気配の主に呼ばわると、大男が現れた。

 お万と同様に、頭にツノを生やした男だ。つまり鬼である。




「宴席の声が聞こえたのでな。我も混ざりたいものである」


---


★解説

 再び長らくお待たせしました。

 5話目くらいで決着(?)が付く見込みです。


 予定としては、お万ともう一人、そしてこの後のシエル戦を終えたらセントラルに本隊を到着させて、それから代行者サイドにシフトですかね。

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