イケメンに美女……!2(ゼルシオス&ゲルハルト&パトリツィア vs 鬼女 お万)

「ヒュウ、涼しいねぇ! 露出や全裸趣味はぇが、これはこれでいいもんだぜ!」

「だよねー、ゼル! ボクもこういうのが好きー」

「ちょっと待てぇ!?!?」


 全裸にひん剥かれたというのに、ノリノリなゼルシオスとパトリツィア。そんな二人とは対照的に、動揺しつつもツッコミを入れるゲルハルト。

 裸族化ウェルカム組と、ノット裸族ウェルカム組という構図が出来上がっていた。


「しっかしよぉ。イイ性格してんな、アンタ。お万、だったよな?」

「ああ。あたいのモットーは『全てを奪ってぶっ殺す』! 最高だぜぇ! がっはっは!」


 白に近い銀髪をなびかせながら、お万が笑う。

 と、ゼルシオスがお万に聞いた。


「俺らもか?」

「ったりめーだろ! あたいは誰にも止められねぇ! ……と、言いてぇが。ちょっと待ってろ」


 戦う意思を見せるフリをして、お万が何かを持ってくる。

 なみなみと液体が注がれた、お万の背丈の3割――およそ50cm――ほどもある壺、ます、それに柄杓だった。升と柄杓はご丁寧に人数分、4つずつである。


「飲め! あたいが作った酒だ!」

「どんだけ飲めばいいんだ?」

「この壺の中、全部だ! あ、でもあたいも飲むからな! その分は気にすんな!」

「酒飲み勝負ってとこか?」

ちげぇ!」


 ゼルシオスの質問を、返す刀で否定するお万。


だ! ついでに、あたいの酒の出来ばえを聞きたくてな! あんたらから飲んで、感想を聞かせてくれ!」

「それは構わないが……それで手打ちにするのか? お万とやら」

「ああ! 客人は久々なんだ! 最初はあの空飛ぶ船をとしちまおうと思ったが、酒を飲んでからでも遅くねぇと思ってな!」

「…………そうか。だが、今は休戦のようだな。頂くとしようか」

「もちろんボクも飲むよー!」


 というわけで。

 急きょ、飲み会が始まった。始まってしまったのである。


     ***


「よっと。飲んだこたぁあるけれど、どんなもんですかね」


 ゼルシオスが前世の日本で死んだのは30の時だ。前世の記憶を丸ごと継承しているうえ、前世において米原料の酒はある程度飲み慣れていた。


「まず一口……ん、こりゃいいな。辛すぎず、甘すぎず……スッキリしてやがる。店が出せそうだぜ」

「ホントか!?」

「ああ、ホントだ。金が取れるぜ。ゲルハルト、パトリツィア、飲んでみな」


 ゼルシオスが促すと、ゲルハルトとパトリツィアが同時に飲む。


「初めて飲む種類の酒だが……飲み口がいいな。ゼルの言う通り、確かに店に出せる品質だ」

「おいしい!」


 二人の感想も同じだ。

 日本酒を初めて飲む二人でもここまで言わせるのだから、いかにお万の酒が美味しいか、である。


「そんなに気に入ってくれたのか! じゃあどんどん飲め! あたいも飲むぞー!」




 かくして、飲み会の出だしは和やかに進行していた。

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