ありがとうございます。でも(ユニット:FFXX本隊)

「わ、私に渡すものですか?」

「ああ、そうだ。マリア、あんたが受け取るべきものだ。ライラ」

「はい」


 ライラが預かっていたを、ゼルシオスに渡す。

 それを受け取ったゼルシオスは、マリアにしっかりと見せた。


「これ……分かるか?」

「それは?」

「だよな。見た目だけじゃ、何の変哲もねぇ飲料入りのビンだ。いや、ちょいと見せてもらった“ポーション”ってやつか?」


 ゼルシオスは地味ながらも、両手でそれを扱っている。

 万が一にも落として割っては大問題であると、マリアにも伝わっていた。


「だがね……これはあんたにとっちゃ、最大級に大事なポーションなんだよ、マリア。これが何だか、分かるか?」

「…………」


 長い沈黙を浮かべるマリア。

 やや時を経てから、口を開いた。


「深海の、秘薬……です」

「その通りだ。これを……この深海の秘薬を、あんたに渡そうと思う。あんたにこそ、必要なもんだ。それで幼馴染の男の子を助けてやれ」

「えっと、貴重なものでは……?」

「あぁん? 確かに貴重だけどよ」


 ゼルシオスはヒルデに目線で合図する。

 ヒルデが静かに深海の秘薬を預かると、待ってましたとばかりに話し出した。


「あんな話聞かされて何もしねぇなんて、ウズウズすんだよ。あんただって立派なFFXXツヴァイエフ・イクスクロイツなんだぜ? つまり俺らの仲間だ。仲間の困ったことをっておけるかよ。ましてや、何とか出来んのに何もしねぇなんざ、俺ぁ許せねぇな!」


 語気を強めるゼルシオスだが、マリアを咎める意思はカケラも無い。


「だから、受け取ってくれや。なんなら俺が艦長……アドレーアに言って、今すぐその幼馴染の元へ向かってくれても構わねぇ。俺にも幼馴染がいるから分かっけどよ、けっこう大切な存在なんだぜ?」


 ゼルシオスの脳裏に思い浮かぶのは、シルフィアの姿だ。

 かつて彼は、貴族による悪質な嫌がらせを受けた彼女を守るために、自らの拳をためらわず振るったことがある。相手の悪意の強さもそうであったが、ゼルシオスの幼馴染を想う心は、幼い頃から本物だったのだ。


「だから……頼む。受け取って、あんたの幼馴染を救ってやれ」


 懇願こんがんすら混じったゼルシオスの言葉を受け、シルフィアは――


「ありがとうございます。それでも、今はまだ……受け取れません」




 ゼルシオスの申し出を、拒絶したのであった。

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