黒抗兵軍第2中隊『清白(すずしろ)』編成1(ユニット:FFXX本隊)

 パルティスとの戦闘から数時間後。


「■■■■■~~~!」


 深棲竜ネメシスの新たな住処すみかとなったプールでは、彼女の歌が響いていた。

 事前にゼルシオスからの通達があり、耐水圧を目論んだ強化や防音の魔法を――リラをはじめ黒抗兵軍メンバーが十人単位で駆り出されて――過剰なまでに施しているため、歌声は聞こえない。ついでに彼女の歌に反応したプールの水が大荒れになったが、当然数十人がかり――しかもうち一人は魔術師としても高名なリラが施したものであるため、壁が破れることもない。


 そんなプールに、来訪者が現れる。


「君が私を呼んだのかい!?」

「あ、パルティスさん! はい、是非とも歌を教えてもらいに!」


 ネメシスは、人伝いにパルティスを知っている。

 歌うことが大好きなパルティスであれば、自身の音痴を治してもらえるかもしれない――そう思っていた。


「そうか! 君も私と同じように、歌うことが大好きなんだな! だったら、まずは一曲披露してみてほしい!」

「はい! スゥ……■■■■■~~~~~~~!!」


 意気揚々と歌うネメシス。壊滅的な音痴は、プールに大しけを起こさせ、パルティスの服をずぶ濡れにさせる。


「……どうでしょう?」

「そうだねぇ」


 パルティスは少しばかりの間をおいて、ネメシスの壊滅的な歌を講評する。


「『私の歌を聞いてほしい』という気持ちが前に出すぎているね。音程もリズムも置いてけぼりだ。それに、喉から声を出してる。喉が潰れたことは無いのかい?」

「はい!」

「なんて頑丈な喉だ……。だけど、喉で声を出すのは今日で卒業だ。声の大きさは素晴らしいが、もっと良くなるだろうね」


 自分は気持ちよく歌うパルティスだが、意外な適正があった。

 他人の歌を聴くときは真剣に、そして強みと弱みを見抜くことが出来たのだ。


「それにしても、凄い勢いだ。私の服がびしょ濡れだよ」

「わわっ、拭きます拭きます!」

「いいさ。女の子に手をわずらわせるわけにはいかない。さて……水着でも借りるかな?」


 パルティスはネメシスが歌に向ける真摯さ、そして秘めたる成長性に心打たれ、自分で出来る限り鍛えることに決めたのであった。


     ***


「さぁて、全員揃ったな?」


 その頃。

 ゼルシオスは黒抗兵軍こっこうひょうぐんメンバーを集め、編成を発表していた。




「あんたらの面談を終え、どういう編成を行うか決めた。……一部、敢えて編成するまでもない面々もいたがな。では……今から編成、ならびに中隊名を発表する!」

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