美しく麗しき竜・パルティス5(FFXX本隊& vs 響楽竜パルティス)

 凶刃きょうじんと化した風が、ヴェルリート・グレーセア目掛けて襲い来る。

 だが、ゼルシオスは。


「奥義――無影むえい!」


 風に風をぶつけ、相殺そうさいする。

 正確には“無影”は衝撃波なのだが、とにかく風の刃すらも打ち消しうるだけの威力を秘めていた。

 飛来するまでの短い間に、居合切りの要領で18mの双剣を抜き、を始めたのであった。


「なっ!? 私の風の刃を!?」

「だから言ったろ、耐えきってやるってな!」

「くっ……だが、安心するのはまだ早い!」


 刃がダメなら、弾丸を。

 パルティスの判断は間違ってはいない――しかし、相手がゼルシオスともなると話は別だ。


「通じるかっ! この程度かよ!?」

「おのれ……!」


 刃もダメ、弾丸もダメ。

 ならば最後の可能性として賭けるのは、パルティス自身が放つブレス――音波のブレス。

 共振による破壊は周波数を合わせる必要こそあるが、直撃すれば防御を意に介さず破壊する。


「おっと!」


 だがゼルシオスは、自身に唯一通用しうる武装として警戒しないはずがない。

 流れに身を任せつつも、スラスターを一瞬吹かして加速。狙った位置から自身と愛機を外すことで、攻撃を容易く回避したのだ。


「ならば!」


 パルティスは、切り払うことを期待して風の刃と弾丸を飛ばす。

 そこで動きが止まった隙を突き、ブレスで仕留めるということだ。


「見えてんだよ!」


 だが、急に弾数が増えれば、ゼルシオスが違和感を抱くのは当然だった。

 そしてゼルシオスの視界では、。分かりやすく書くとすれば、“切り払うな、危険だから”ということだ。


 当然のように――ゼルシオスは、全ての攻撃を回避する。

 反撃による防御か、回避かという区別もまた、彼の直感をもってすれば容易く付けられるのだ。


「なにっ!?」

「こっちはタフだぜぇ、鍛えてっからよ! さぁ、我慢比べと行こうじゃねぇか!」


 ゼルシオスは、パルティスとの我慢比べに持ち込んだのであった。


     *


「どうだ!」


 結果として――我慢比べは、ゼルシオスの勝利である。

 これまでに鍛えてきたパワーや技、そして持久力は、パルティスの大技を無傷で耐えきることが出来るほどであった。

 また、“ブレス以外が通用しない”という相性の問題も、ゼルシオスに利した。


「はぁ、はぁ、はぁ……。まさか、私をここまで追い込むとはね! 冗談抜きで、手の打ちようが無いよ!」


 諦めの言葉を口にするパルティスだが、まだ闘志は消えていない。


「抜かせ、まだ諦めてねぇだろうが! 増援呼んで、その間に回復ってか?」

「その通りだよ。私にしては美しくないが、こうでもしないと君たちを倒せないからね。さて、もうそろそろ――!?」


 パルティスは、表情を驚愕に染め上げる。


「もうそろそろ……どうしたって?」

「こ、このタイミングでそう来るかい!? こうなってしまえば、流石の私でも……!」


 パルティスの視界の先。

 そこには――


「遅いわね! わたしの前には、竜種であってもこの程度の速さなのかしら?」

「はやーい! ところで、あれが人間さんたちのお船ー?」

「……」




 銀の機体、空を翔ける馬、そしてが、パルティスの増援である戦闘竜を屠っていたのであった。


---


★解説

 次話で決着です。

 相性の有利不利がここまで響くのも珍しい……ゼルシオス君は「避けて当てる」タイプですが、それでもここまで一方的だと、書いておきながらパルティスが可哀想に見えてきますww

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