美しく麗しき竜・パルティス3(FFXX本隊& vs 響楽竜パルティス)

「これは……私の歌声を、聴きに来てくれているのかい!? ……なんて言ったけど、竜種にしか聞こえないんだよね」


 パルティスは初めて、残念そうな表情を浮かべる。


「そして……私がこの姿になったことで、私の歌声を聴きに来てくれる竜たちが増えてきたみたいだ。もしかしたら、もう着いてるんじゃないかな?」

「おい、テメェ何変なこと言って……チッ、そういうことか! 各艦、早く撃て!」


 ゼルシオスはブースターを最大まで吹かし、射線から退避する。

 次の瞬間――砲弾の暴風雨がパルティスを叩きつけた。


「ぐあっ!? な、なんて衝撃だ……!」


 一発のダメージこそ少ないが、パルティスの姿勢を崩す程度には強力な砲撃だ。

 それが1発2発ではなく、何発も叩き込まれるとなれば、徐々にではあるが確実にダメージは蓄積していく。


「これは、主役たる私を引きずり降ろしたいというのかい……!? そのような歌声で!」

「歌声じゃねぇ! 砲声だ!」


 ゼルシオスはツッコミもそこそこに、自身もさらに砲撃を加える。

 主砲の連発によるダメージに加え、ドミニアには真銀竜たるエヴレナの加護もある。そしてドミニア搭載機であるヴェルリート・グレーセアもまた、エヴレナの加護を受けている。


 つまり――パルティスのダメージは極めて大きく、逆に三首竜サーベロイ・ドラッヒェの攻撃に耐えている艦隊にはさしたるダメージも無い状態であった。

 現時点でアドシアをはじめとした機動兵器は艦内に温存している――30体もの三首竜サーベロイ・ドラッヒェ相手に出すのは自滅行為に他ならないからだ――状態であり、戦力的な消耗も最小限であった。


 これほどの不利を悟ったパルティスは、ならばとばかりに――演技のごとく、派手な動きのポーズを繰り出す。


「そうか、そうか。君たちは私を、主役の座から引きずり降ろしたいというのかい? だったら私も、遠慮はすまいよ!」

「全員、ヤツから距離を取れ!」


 即断即決で指示を飛ばすゼルシオス。

 直感は既に、戦術的には無敵の域を誇っている。そんな彼の決断は、アドレーアの命令により最優先で守られるもの――だったが。


「その前に、この曲を聴いてもらおうか! 我が魂が紡ぎだした曲さ!」


 パルティスから、曲が流れ――さらに、彼を謎のスポットライトが照らす。

 誰もがノリノリになる……それに伴って回避不能になるのを、パルティスは目論んでいた、が。


「悪いな! こちとら軍隊なんでな、テメェの思惑に乗るワケにゃあいかねぇんだよ!」


 正確にはゼルシオスは軍人ではない――アドレーアと個人契約を結んだ、王族とはいえ私兵である――のだが、彼が戦闘で培った経験と生まれ持った直感は確かなものだ。


「砲撃を浴びせながら距離を取れ!」


 相も変わらず、艦隊からは次々とパルティスめがけて砲撃が撃ち込まれる。

 それを受けたパルティスは――怒った。


「なんと無粋な……! 様式美というものを知らないのか君たちはっ!」

「知ったことか! ってヤベェ! 距離を詰めにかかってんぜ、こりゃあ!」




 確実に攻撃を命中させにかかるパルティスを見て、ゼルシオスは再び推力全開でパルティスとの距離を詰めたのであった。

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