歌の上手い竜(ユニット:ゼルシオス&フレイア&ヒルデ&ネメシス)

「もうすぐだな」


 “行きはよいよい帰りは怖い”という童謡があるが、ゼルシオス達の場合はその圧倒的な戦力により、「行きはよいよい帰りもよい」となっていた。


「俺は機体だから潜水病とは無縁だが……お前ら、大丈夫かぁ?」

「私も無縁だな」

「私もです」

「あたしもです。というか、水中では自由自在に動けるんですよ?」


 意外と大きな胸を張り、「えっへん」と言わんばかりなドヤ顔で答えるネメシス。

 ゼルシオスからしても、とりあえずメイドに加えようか考えている相手であった。もっとも――陸上生活も最低限度可能とはいえ――基本的に水棲生物であるため、立ち位置がどうしても特殊になってしまうのだが。


「さぁて、冷たいプールにお引っ越しだ。つーて、一度上げなきゃいけねぇんだけどな」

「えへへぇ、楽しみです。あ、たまにはドミニアの中を散歩させてくださいね?」

「当ったりめぇよ」


 既にゼルシオスがドミニアへの連絡を済ませ、現在は急ピッチでプールの改装が進められている。

 水温は冷ためにし、余計な器具は基本的に全て取り払い、さらには部屋に防音仕様まで施すというものだ。特に最後の理由のため、ドミニアの整備員含む作業員やリラまでもが動員されている。


「ふぅ、上がったな」

「ようやくだな。苦手ではないが、炎を司る身ゆえに海中というのはどうも……」

「あたしにとっては、久しぶりの水面です! 何年ぶりだろ~」

「あ、そういえばネメシスさん」


 ヒルデが思い出したように、話題を振る。


「おい、ヒルデ」


 と、ゼルシオスが止めだす。


「何ですか、ご主人様?」

「やめろ」

「えー? 特訓してくれそうな人を聞くだけですよー」

「やめろ」


 ゼルシオスは冷静なようで、声音には焦りが伴っている。


「えー? ご主人様ー、それくらいいいじゃないですかー。ケチー」

「いいからやめろ!」

「えへへ……えっとね、確か……」


 ゼルシオスの制止も無視して、ヒルデとの会話を続けるネメシス。

 もはやこれまでと判断したゼルシオスは、通信をつなげる。


「ゼルシオスだ! 全艦、至急戦闘態勢に移行!」


、って言ったかな? ガルテアちゃんが教えてくれてさー」


 一瞬の沈黙が、ゼルシオスたちのいる空間を満たす。

 それが続くこと約5秒――


「私を呼んだかいっ!?」




 竜の翼を持ち燕尾服を見事に着こなした、黒髪黒目の美男子が――姿を現したのであった。


---


★解説

 出 た よ ナ ル シ ス ト 。


 真銀竜の加護でパワーが足りなければ、桜付き介入案件となるでしょう。戦闘自体はともかく、特殊勝利となると難易度がとっても高そう……w

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