恐ろしい来訪者1(ゼルシオス&フレイア&ヒルデ vs 深棲竜ネメシス)

「ほとんど敵がいなかったな。もうちょっと何かあっても良かったもんだが」

「嵐の前の静けさ……とはいえ、嵐にのみ専念できることを良く思うべきだろう」

「母さん、いいこと言う!」


 三人はさしたる戦闘も行わず、エリア1-4:深海神殿……その入口に立っていた。


「それにしても、ヴェルリート・グレーセアでも余裕で入るデカさだな。何なんだこりゃ?」

「何かあったら、私たちが人間態になろう。なぁに、水圧なら重素障壁グラヴィタ・ヴェンデでどうにかなる」

「それに、私たち空獣ルフトティーア重素グラヴィタさえあれば生きられるからねー」


 ゼルシオスたちはゆっくりと、神殿内部へ侵入する。

 気配はほぼ無く、しかしつい新しく出来た破壊の跡がところどころに残っていた。


「割と最近に戦闘があったっぽいな。あぁ、ヒルデ、そっちじゃねぇ。こっちの道だ」

「おっと、失礼しました」


 迷宮のような神殿内部においても、ゼルシオスの直感にかかれば苦も無く突破しうる。徐々に確実に、三人は最深部へと迫っていた。


     ***


「ここか? 行き止まりのようだが」


 フレイアの呟きに呼応するかのように、三人は“ある空間”へたどり着く。


「誰かいるな。それにしても……この距離まで迫ってもなお眠っているというのは、よほど理由があるのだろうか?」

「もしくは、単に眠りが深いだけだろうな。さぁて、起こしたかねぇが、話をするためには起こすしかぇな」

「あ、あんまり乱暴しないであげてくださいね、ご主人様」

「安心しろ。つーか、こっちは頼む立場だからな」


 ゼルシオスがヴェルリート・グレーセアを一歩前に出させ、ひざまずく体勢を取る。


「……ん」


 大型機体ゆえの駆動音、あるいは振動に反応し、巨大な貝の中で眠る美女を起こす。


「わぁーっ!?」


 と、美女が素っ頓狂な声を上げた。

 もっとも、“何か声がするので目が覚めたら、目の前に43m級巨大ロボットと2体の100m級ドラゴンが立っていた”などという状況に陥れば、当然の反応ではあるのだが。


「だ、だ、誰……ですか!? た、食べないでくださいぃ!」

「食わねぇよ! ちょっとアンタに頼みがあるんだよ」


 やれやれといった態度を表に出しながら、ゼルシオスが3人を代表して名乗る。


「俺はゼルシオス・アルヴァリア。そして、俺が連れてる二匹の赫竜エクスフランメ・ドラッヒェ……まぁ炎竜えんりゅうは、目つきがキツいのがフレイア。柔らかいのがヒルデ。ワケあって、あんたの元に来ることになったんだよ」


 穏やかに話すゼルシオスの脳裏に浮かぶのは、マリア……そして、まだ見ぬ彼の幼馴染。


「あんた、“深海の秘薬”っての持ってねぇか? 持ってたら、ひとつ譲ってほしいんだが……」

「あ、あります。た、ただ、私も、お願いが……」

「うん?」


 対価としてのお願いか、ゼルシオスはそう考える。

 だが返ってきた言葉は、予想以上に穏当なものであった。




「わ、私と、お友達になっていただけませんか!? な、なんか、皆さんいい人そうですし……」


---


★解説

 ようやく遭遇というか会うことができたネメシス嬢。

 これで終われば良いのですが、まだ彼女の音痴属性を拾っていないのと、それに伴ってゼルシオス君に「悪役になってもらう」のが残っているので……続きますw

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る