ちょっとダイビングだ(ユニット:ゼルシオス、フレイア、ヒルデ)

「仕事はひと段落したようだな」

「ですねー、ご主人様。そろそろイチャイチャしたかったんですよ」


 フレイアとヒルデ母娘おやこが、ゼルシオスの招集に応じる。

 ゼルシオスは開口一番に、遠慮会釈無く現状を伝えた。


「あー、まず聞け。仕事はひと段落してねぇし、当然イチャつける状況でもねぇ」


 口調は軽いが、ゼルシオスの表情は真剣である。


「ご主人様、何かあった?」

「あるぜ。ちょっとダイビングだ。てめぇら、深海も平気だったよな?」

「えっ? えぇと、うん……」

「そもそも私たち空獣ルフトティーアに、環境は関係無いからな」


 そう。空獣ルフトティーアに環境は関係無い。


「とはいえ、どこまで潜るかにもよるのだが……」

「まぁ、いざってなったら熱壁ねつへき重素障壁グラヴィタ・ヴェンデ出せばいいもんね」


 フレイアもヒルデも、現在でこそ人間態とはいえ、元々は空獣ルフトティーアいち種族である。

 その中でも最上位に位置する能力を誇るため、環境適応においては文字通り場所を選ばないのだ。


「そういうお前の機体は? いくら伝説の機体とはいえ、耐える環境には限度があるだろう」

「ああ、それは大丈夫だ。“おまじない”がかかってるからよ」

「? よく分かりませんけど、ご主人様がそうおっしゃるのでしたら」

「決まりだな。そんじゃ、一斉に潜るぞ。先に格納庫行ってるわ」


 ゼルシオスはいつものように、格納庫へと向かった。

 ……道中、アドレーアとゲルハルトには連絡を入れたが。


     ***


「そんじゃ、行きますかね!」


 発艦を済ませたゼルシオスは、既に竜形態となったフレイアとヒルデを引き連れていた。


「ご主人様、場所の当てはあるんですか?」

「あるぜ。こっちだ」


 相も変わらず直感を発動させ、分厚い雲に覆われた場所へ向かうゼルシオス。

 この場所はエリア1-3:大震洋といい、大波と竜巻による自然の猛威が荒れ狂う。


「油断したら危ねぇな」


 だが、ゼルシオスの直感にかかれば、比較的ではあるが安全なルートを導き出すなど苦ではない。

 また、エリアにいる敵も、ヴェルリート・グレーセアや赫竜エクスフランメ・ドラッヒェの威容と強さの気配に恐れをなし、戦いを挑むものはいなかった。


「スイスイ行けるぜ。ツイてるな……っと、ここか」


 ゼルシオスが見つけたのは、大震洋の海溝だ。

 よく見ると、黄金きんの粒子が輝いているのが見える。


「さて、こっからダイビング本番だぜ。そんじゃま、行きますか」

「承知した」

「ご主人様のためなら、火の中水の中!」




 もはやピクニック気分で、三人は海溝への潜水を開始したのであった。

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