面談会、本番(ユニット:FFXX本隊)

「ここか」


 アドレーア姫に案内された部屋で、ゼルシオスは着席する。


「さぁて、クッソ面倒くせぇ面談会だぜ。それでも一人頭5人ってのは……だいぶマシになったよな?」


 当初は20人~25人の想定だったため、大きく負担は下がっている。

 それでもゼルシオスとしては、さっさと済ませたい代物だったが。


「ま、あんまグダグダ言ってても始まんねぇや。んで、最初に来るのは誰だ?」


 ゼルシオスが待機して数分、ノックの音が響く。


「入りな」

「し、失礼します」


 入ってきたのは、露出を抑えた格好の女性だった。


「おっ、あんたか。ボートに乗る時は悪かったな。急いでたもんでな」

「い、いえ、お気遣いなく」

「そうかい。俺はドミニア遊撃部隊長のゼルシオス・アルヴァリアだ。あんたの名前を教えてくれ」

「は、はい。私はマリア・アップルトンです」

「マリアか。いい名前だぜ」


 軽く一言二言交わすゼルシオスとマリア。

 だが、このかんにゼルシオスは、マリアの特性を見抜きにかかっていた。


体躯たいくは戦闘向きじゃねぇ。おそらく木製の杖を持ってるが、これも打撃向きとは思えねぇ。緊急時ならともかく、普段殴打するには彼女の力じゃ非力すぎるな。気配からしても、前線に出すには何もかもが足らねぇ状態だ。参加する意思はあるようだが……さぁて、いろいろと聞くか)


 明らかに戦闘員にするには足らず、しかし気概は認めるゼルシオス。

 彼は一つずつ、適性を明らかにしようとしていた。


「単刀直入に聞こう。あんたの職種……っつーか、役割を教えてくれ」

「はい。私はヒーラー……治癒術師です」

「そうかい」


 ゼルシオスは端末を操作し、マリアの情報を質問の都度入力する。

 その途中で、考えを浮かべていた。


(やっぱりな。何の因果か、前世で遊んだゲームに似ている世界観だぜ。だから分かりやすいんだが、とにもかくにもヒーラーとはな。ドミニア艦内なのはほぼ確定だぜ)


 マリアがどう配属されるのかの予想を立てつつも、ゼルシオスは面談を続ける。


「待たせたな。……さて、次は戦う動機を聞きてぇ」


 面談内容は、“最低限尋ねておくこと”以外は時間の許す限り自由である。


「あんたにゃあ、何かこう……そうやって冒険者として、ハンターとして、戦う動機があるんじゃねぇのか?」

「はい。私には、幼馴染の男の子がいるんです」

「興味深いな。良ければ、聞かせてくれや」

「はい……。彼は病弱で、いつもベッドの上にいるんです」


 このことを聞いた瞬間、ゼルシオスは当然の疑問を投げかける。


「あんたの術で治せねぇのか?」

「それは試しました……。ですが、私の術ではどうにもならないんです。“深海の秘薬”が無いことには」


 深海の秘薬。

 ゼルシオスにとっては心当たりが何もなかったが、それでも話を振った以上、聞き届けることにした。


「なるほどな。その深海の秘薬ってのを探し求めるか、あるいはそのための金を集めるか。どうだい?」

「はい、その通りです。ですから、私は……」


 ゼルシオスはその後も、ひたすら話を聞いていた。


     ***


「私の話を聞いてくださり、ありがとうございました」

「気にすんな。これも俺の仕事だ」


 何だかんだ言いつつも、仕事をする際に手を抜かないのがゼルシオス・アルヴァリアという男である。


「ところで……その“深海の秘薬”を持っていそうな存在に、心当たりがあります」

「何だ?」

深棲竜しんせいりゅうネメシス……心当たりは、ありませんか?」

「あー……噂なら」


 海岸で遊んでいた際、チラリと耳に入った名前だ。

 と、ゼルシオスの直感が、使命を訴える。


「オッケ、よくわかった。おっと、時間だ。また後で連絡が行くだろうが、それまでは待機しててくれや」

「はい。この度は、ありがとうございました」


 マリアが退室したのを見届けると、ゼルシオスは呟く。




「リア脅して、そいつの元に行けるようにすっか。深棲竜ネメシス……“深海の秘薬”を持ってるかどうか、確かめてやる。あと、そいつ自身にも興味が湧いてきたぜ」


---


★解説

 リアル時間で長々とほったらかしてしまっていたネメシスに、スポットが当たり始めました。予約してから今の今まで放置していて本当に申し訳ない。


 そして、リア様の気苦労再び……と行きたいですが、さぁて、どうしたものか。

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