極北に眠る真理(ユニット:神錘の代行者)

「この割れ目クレバスが入口か」


 代行者一行は、表には知られていない未知のエリア5-4――アークアーカイブスへと足を踏み入れる。

 クレバスの内側には、とてもこの酷寒の雰囲気とは似つかぬ建物が建っていた。


「ここに“真理”が眠っている、か。さて……」


 代行者は先陣を切り、建物へと入る。

 中には――陽電子スーパーコンピューターと、大規模なサーバ群がズラリと並んでいた。


「なるほど、電子的なものか。知らぬわけではないが、読み解くにはSGエネルギーを用いる他ないな」


 現状のメンバーにおいて、まともな電子機器を所持する者はいない。代行者もその例に漏れなかったが、“ロイヤのプログラムを書き換えられる”という事実によって電子的な情報にも対応できていた。


「害意や罠は無し。であれば、少しばかり読み取らせてもらおう」


 代行者はSGエネルギーをサーバーに流し込み、情報の確保に移る。

 正規の端末によるアクセスではないために察知される恐れはあった――が、それを知らせる雰囲気は無い。


「とはいえ、私にはさばき切れぬな。脳が焼き切れぬよう、主に送るか」


 膨大すぎる情報を、代行者はSGエネルギーを介して謎の機体に送る。

 誰も見えていないが、アークアーカイブスの上空に漆黒と黄金きんの、光の粒子が飛び交った。

 中には本来管理者権限が必要な情報もあったが、なぜか代行者はアクセス出来た。


 ややあって、代行者はアクセス可能なすべての情報の伝達を終える。


「さて、これ以上は無用だ」


 建物に突入して数分後、代行者たちは外に出て――


「む、巨鯨が!」


 戦艦ゲルゼリア改が、謎のアンドロイドに攻撃を受けている様子を目視した。


     ***


 ゲルゼリア改のブリッジにて。


「軌道上の衛星から砲撃を受けました! クライン・コート耐久力残り55%!」

「情報を解析! あのアンドロイドが命令を送信しているもよう!」


 彼らからすれば、“突如として攻撃を受けた”と認識している現状。

 だが艦長――いや、艦の支配者であるアドレーネ陛下は、別の視点を有していた。


「ただちに反転! 離脱します!」

「同意ですな。あれは“これ以上入るな”という警告でしょう」

「何のなしに進んだらこうなるとはな……。だが、無用な戦いは控えるべきだ。あのアンドロイド、エネルギーが尋常じゃねぇ。仮に倒すにしても、入念な準備が必要だな」


 アドレーネに付き従う男、Mエムとゼルゲイド・アルシアス。

 彼らもまた、アドレーネの見立てと同一の見解を持っていた。


「了解! 180度回頭、この場から離脱しま――え?」


 オペレーターの一人が復唱しているさなか、衛星ビーム砲が急に攻撃を停止する。


「何が起きた!?」

「え、衛星が攻撃を中断……!」

「どういうことだ!?」


 Mとゼルゲイドは冷静さを放り捨てるが、アドレーネは別だった。


「映像の最大望遠を。何やら、あのアンドロイドとやり取りを試みている方々がいます」




 戦艦のカメラが捉え、アドレーネが見ているそれは――謎のアンドロイドとやり取りをしている一団がいたのであった。


---


★解説

 そういうわけで、次話、ついにが登場します。


 なお、代行者一行が管理者権限を必要とする情報にアクセスできたのは、スミト……オリヴィエ代表の“お礼代わり”ということで。

 侵入に気づいていてもなお、入れてくれる上に機密にアクセスさせてくれるのって……破格じゃね? まぁ、「クラッキング合戦になるよりは」というのかもしれないが。

 あと、機密情報の入手の成否はメタ視点では重視していないため、「さすがにスミトでもここまでは……」というツッコミがあったら修正します。


 そして、しれっと防衛行動を取っていたゲルゼリア改。

 前エピソードでさんざんっぱら暴れていましたが、これでも“あのアンドロイド”には攻撃していません。素直に退避する意思を見せたくらいですし。


 さて、この邂逅は果たして、どうなることやら……?

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