姉妹機、邂逅(ユニット:神錘の代行者)

「そこのアンドロイドよ、止まれ!」


 代行者が呼びかけを行う。


「はい、何でしょうか」


 アンドロイドはあっさりと、代行者の言葉に応じて攻撃を停止した。


「おや、やけに素直だな?」

「はい。あなた方とは、極力友好的に接するようにプログラミングされておりますので」


 ヴィグバルトの疑問を、即座に回答するアンドロイド。

 もともと女性的な姿をしているが、人間の貴族や王族が仕込まれるような優雅な礼を披露することで、アンドロイドでありながら息を呑む美しさをかもし出していた。


「申し遅れました。私は認証番号HFO-700-52-13、サイブレックス。『ホープフル・シリーズ』の流れを汲んだ、いわゆる――最新鋭機です」

「『ホープフル・シリーズ』……!」


 その言葉を聞いて、ロイヤが強い反応を示す。

 彼もまた『ホープフル・シリーズ』の機体、しかも1号機であり、その流れを汲んだ目の前の機体サイブレックスは、いわば彼にとっての“すえの妹”と呼べる存在であった。


「あなたは……私のデータベースに登録されている、存在ですね」

「はい。私の名前はロイヤ・ホープフルロード。『ホープフル・シリーズ』の1号機です。まさか、このような場所で同型機と出会えようとは」

「はい。非合理ではありますが、何やら運命のようなものを感じます」

「同感です。私たちは、出会うべくして出会ったのかもしれません。それにしても……エネルギーだけを見ても、すごい高性能ですね」

「はい。それが私の存在意義ですから」


 同型機――同じ流れを汲む一種の“家族”同士で歓談を始める、ロイヤとサイブレックス。

 それを見た代行者は、静かに呟く。


「我が主は、これを見定められていたのかもしれないな」

「みー、どうしたの?」

「ああ、こちらの話だ。ところで……あの二人は相変わらずだな」


 代行者が振り向くと、人型になったフォルテシアと彼女に抱きしめられているカティンカがいた。


「可愛い~♪」

「は、離して……」


 そしてその隣には、力なく肩を落とすヴィグバルトもいる。「私でもどうにもならん」というお手上げの意思を示したものだ。


「むっ」


 と、そこにゲルゼリア改が接近する。


『我らに攻撃の意図あらず! 繰り返す、我らに攻撃の意図あらず!』


 壮年の男の声が、アークアーカイブスに響き渡った。


『我らはそこにいる皆様との対話を求めるものである! どうか応対されたい!』

「ここは任せてもらいたい。領分を踏み越えるようではあるが」


 ゲルゼリア改の目的を聞いた代行者が、自ら対話を申し出る。


「はい。敵意も無いようです。ですが、万が一の事態があれば……私の全力を以て脅威の排除に動きますので、そのつもりで」

「心得ている。では、見守っていてもらおうか」




 代行者は一人、ゲルゼリア改に向けて歩き出していたのであった。


---


★解説


 ついに邂逅です!

 せっかくの機会ですのでもっと会話を増やしたいのですが、あっさり目なのは普段からの書き方スタイルゆえに。


 さて、そろそろ代行者サイドがエリア6へ向かうメドが立ってきました。

 ……その前に、ちょっと状況整理を放り込みますかね。

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