星の動かし方(ユニット:神錘の代行者)

「星の動かし方? 何かしら、それは」


 興味深そうに微笑むスミトを見て、代行者は話をする。


「その前に、ある竜の見た夢を話すとしよう」


 そう前置きする代行者を見て、スミトは口を挟まない。内容を試しているのだ。


「……“黒き悪を滅ぼすための星が、たみたちを狙う。北に示唆しさあり。もしも星落ちることあれば、滅ぼすべき黒き悪を滅ぼすことなく、罪なき民たちだけを滅ぼす”、というものだ」

「…………」


 スミトの表情から、微笑みが消失する。

 それは何かを悟ったようで――


「ふぅん。


 敢えて、問いを投げかけてきたのだ。


「……」


 代行者はいったん黙し、思考する。


(これは、「お前たちは戦うべき敵の正体を知っているのか」ということだろうな。そこからもう少し踏み込んで、「では、お前たちは共に戦うのか、“黒き悪”と」と……意図はそんな感じだろう)


 神性を持てども、肉体は人間である代行者。

 人の身に立った思考というものは、十分に可能である。


 と、そこで意外な人物が名乗りを上げた。


「代行者よ、良いか」

「ヴィグバルトか。述べてみよ」

「雰囲気からして、恐らくは我らと繋がりがある……かの“黒竜王”を指し示しているに違いない」

「我も同じだ。だが、今話すにおいては、汝が適任だろう。任せる」

「引き受けた」


 小声で短くやり取りをしたのち、代行者はヴィグバルトに発言をゆだねる。


「時に、スミトよ。“裏切りの竜”……これを聞いて、心当たりはあるか」

「あるわ。確か、ヴィグバルト……と言ったかしら」

「然り。そして、それは私である」


 代行者に救出され、いくらか生気を取り戻した表情をスミトに見せるヴィグバルト。


「あら、有名人……有名竜かしら? 直接対面できるなんて光栄ね」

「知っているのならば話は早い。私はいにしえの戦争を経験した身。ゆえに、かの黒竜王……エッツェルの持つ特性を、ある程度知っている」

「興味深いわね」


「話してみなさい」とは言わず、しかし雰囲気で語るのを見たヴィグバルトが続ける。


「黒竜王、エッツェルの持つ特性。それは、“威力の軽重けいちょうを問わず、神竜あるいはその加護が付された武器でなければ通らず”。そして、“文明の進んだ兵器ほど、受け付けず”。……星とやらが何を指すのか私にはわからぬが、この二つの特性を守っていないのであれば考え直すことだ」




 それを聞いたスミトからは……微笑みどころか、一切の表情が消失した。


---


★解説

 スミト姉さんの出番、もう1エピソード追加確定。終わる終わる詐欺して申し訳ありません。


 直前のエピソードに宛てられた応援コメントを拝見し、それに沿わせて書く方針を決めたのだが、正直ここからは「展開決まれど踏ん切り付かず」である。

 まだ拾えていない要素があるのは次話にて。


 何でヴィグバルトに最後の一文を言わせたのかというと、“当事者”だから。年齢や経歴を考慮すると、かの暗黒竜とは一戦交えている可能性が十分にあるし、そして暗黒竜の特性を知っている可能性も十分にあるから。


 とりあえず、こちらとしてはヴィグバルトの一言を伝えた時点で最低限の仕事は果たした。乱暴に意訳すると「(暗黒竜には)通じないから撃つなよ」、なのだ。

 オ……スミト姉さんならばヤケは起こさないだろう。たぶん。


 とはいえこのまま放置しては精神衛生上よろしくないので、次話できっちりカタを付ける。たぶん桜付き介入案件……かもしれない。


 今のスミト姉さんに向けて、一言だけ書くのなら……。

「大丈夫。有原陣営われわれは対抗手段を保有している」となる。

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