銀世界にて、星を動かす者を探る(ユニット:神錘の代行者)

を動かす者を探れり」


 ヴィグバルトの背に乗り移動する代行者は、神錘を垂らす。


「ふむ……」


 答えを告げる神錘を見ると、北に傾いたしずく型を、青く輝きながら描いていた。


「この先か。神錘は示せり」

「雪がちらついてきたな。望むならば、我が蒼炎そうえんにて加護を施そう」


 ヴィグバルトが“審判の炎”を繰り出し、凍てつかんばかりの冷気から身を守る盾とする。


「みー……あったかい」

「けど、無関係なものを焼いちゃわない?」

「無用の危害は困りものです。特に、その炎が……いかな悪人であれ、人間を焼くのは」

「それは問題ないだろう。代行者よ」

「心得ている。我が力にて、熱気を抑える」


 青白い炎から繰り出される熱は、人の肌をゆるく暖める程度にとどめられる。漆黒のSGエネルギーがまとわりつき、放出する熱を抑えたからだ。


「あまり離れず、固まっているのが吉だろう。では、あの町に行くぞ」


 代行者の号令で、一同は酷寒の街に向かうことになったのである。


     ***


 エリア5-1:ウインタードリームカントリーに到着した代行者たちは、ほとんどの施設に目もくれず、ある住居まで一直線に進んでいった。

 とはいえ、彼らを怪しむ者など存在しない。なぜなら代行者がSGエネルギーによる隠形おんぎょうを常時発動しており、誰も代行者一行の姿を捉えられる者はいないからだ。


「ここだな。神錘も認めり」

「みー……?」


 ミミミが何とはなしに呟いた言葉を聞いて、代行者は無言でうなずく。

 見習いであれ死神であるミミミは生命力を感知する能力を先天的に備えているのだ。


「然り。だが、それのみにて不在と決めつけるは早計なり」


 代行者は敢えて隠形を解かないまま、部屋の中へと立ち入る。竜であるヴィグバルトも竜化を解除して人間の姿に戻ったため、そのまま立ち入った。


「失礼つかまつる。事情によりこちらへ参った、家の主はいるか?」

「はぁい。少し待っててね」


 何らかの事情ですぐに応対できなかった主が、少しばかりの足音を響かせて代行者の前にやって来る。

 その正体は――長い黒髪を持ち、全身真っ青なローブを着用したオリエンタルな美女だ。口元にベールまでかけているため、表情をなかなかうかがいにくいのも相まって、元の魅力をいっそう引き立てている。


「いかにも、私がここの主……スミトよ」


 代行者たちがまとっている隠形など気にも留めていないかのように、スミトは代行者一行をまっすぐ見据えて話す。


「私の見分料は高いわよ。何を占ってほしいのかしら?」

「占う、か。それはこちらがすべきことなり」

「あら?」


 まさか占い師の自分が占われるとは、夢にも思っていなかったスミト。


「興味深いわね。あんまり人も来ない時間帯だし、少しくらいなら聞いてあげる。いったい何を、占ってくれるのかしら?」


 ベールの下で口元を緩めるスミト。

 それを見た代行者は、スミトの目をまっすぐ見て伝えた。




「汝が抱える“星”――その動かし方なり」


---


★解説

 スミトのキャラ立てが上手く行っているか気になるので、エピソードを分割します。

 とりあえず、ここに来た時点で目的は達成。ほぼ達成なんです。何せ、あとは伝えるだけだから。


 ……でもそれだけではとんだ肩透かしをある方に食わせることになるので(そもそも“あるキャラとの対峙”もしたかったので)、ちゃんと氷壁突破もします。

 まあ、いわゆるダメ押しというものです。

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