ある女神の信者集め、その2(ユニット:キティ)

 その頃、セントラルの外れでは。


「空が騒がしいことになっていたのですね。ですが、あれらの戦艦が事態を解決してくださったようで何よりです」


 地上を気ままに歩き回っていたキティは、人生に意義を見出せない人間を片っ端から異世界に転移させていた。とはいえ、人目につかぬように……ではあるが。


 そんなキティであるが、一見しただけでは誰もが「絶世の美女」だと認めるほどに端麗な容姿だ。


「おい、あの女……」

「隙だらけだぜ。やっちまうか」

「ああ」


 彼女を女神と知らぬ下卑げびやからが、己の欲望のために彼女を標的にしても、おかしくはなかった。


「おネェさん、今ヒマ?」

「俺たちとイイコトしない?」


 だが、そんな彼らの目論見が達成されることはない。


「申し訳ありませんが、今は忙しいのです。……あっ、猫ちゃん!」

「はぁ? そんな冷たいこと……猫ちゃん!」


 下半身に血液が集中していた男二人は、しかしキティと一言会話を交わしただけで目の前の美女キティ・チャトラーなっていた。


 ――なぜなら、目下最大の関心は、ビルの陰に走っていった白猫を追いかけることであったから。


「待て待て~、猫ちゃぁ~ん!」

「まてまて~!」

「つかまえるぞ~!」


 かくして、瞬く間に「三人の不審者が猫をひたすら追いかける」という構図が完成した。




 なお、キティを狙っていた男二人が異世界の商人あきんどである“シャルロッテ・クラーク”の私兵団であったと知られるのは、いま少し先の話だ。


---


★解説

 ということで、「有原陣営としての仕事をした」わけです。

 、というね。


 悪竜王が次に目を付けたのは、シャルロッテ社長ことシャルロッテ・クラーク(東美桜様作)。

https://kakuyomu.jp/works/16817139557676351678/episodes/16817330647601735331


 有原陣営の“嫌がらせ”で悪意がごっそり減ったため、次なる策を講じてきた悪竜王だが、桜付きとしても有原としても放置するわけにはいかない一件である。

 しかしあっさりと倒してしまうのもだいぶつまらないので、「じわじわと効きだす毒」……というか「時限爆弾」を用意した。


「何のことやら?」と思われた方のために、キティのスペック表を貼っておく。

https://kakuyomu.jp/works/16817139557628047889/episodes/16817139557911637952


 負け犬アベンジャー様作のキティだが、私がいたく気に入ったので個人の遊撃部隊として扱っている。主な目的は「対悪意」。


 さて、先ほど掲示したスペック表だが、彼女の「トキソプラズマ」は有原的には「持っていると確定している」と見なしている。桜付きが措置を講じたのはこれゆえ。

 で、この「トキソプラズマ」があるために、放っておくと周辺住民やら私兵団に猫好きが伝染してゆき、最終的に私兵団を(おそらくはシャルロッテ社長もろとも)まるごと猫たちがたくさんいる異世界へ転移させて……というオチ。


 ぶっちゃけこの作戦、セントラルの住民(最悪他エリア住民も)に対して巻き添え被害コラテラル・ダメージが大きすぎるが、「そんな時のための桜付き」なので事後処理も問題なし。SGエネルギーを世界中にぶちまければあら不思議、シャルロッテ社長の私兵団(他、悪意を持った者たち)以外は汚染解除という、長い目で見れば最終的に「狙った標的だけを異世界に転移させ、悪意の源の一つを無効化する」という作戦が成功するという算段。

 なお、有原陣営といいますかFFXXツヴァイエフ・イクスクロイツには、増援含めて一切「トキソプラズマ」が効きません。ちゃんと桜付きが処置を施していますから。


 キティに関しては「この世界に不安を抱えている者」を優先的に連れて行く思考パターンが据え置きだが、私兵団団員の男二人に関しては不明。

 ただし、キティとしては男たちを今すぐ連れていくわけではない(猫を追いかけたり、まだまだ転移希望者を探したり、そもそも男たちから「転移したい」という同意の言葉をまだ引き出せていないため)。

 メタ的には「今すぐ連れていかれたら“悪意無力化作戦”どころではない」という有原の思考ゆえだが、とにもかくにも男たちは「トキソプラズマ」の影響を受けているため、“再集結の号令”とか“ふとした拍子に他の私兵団員とバッタリ”とかあった場合、猫好き思考は私兵団全体に伝染するであろう。


 またもぶっちゃけるとメタ的にはバクチを兼ねてもいるのだが、キティも(本人に知る手段は無いし、本隊であるゲルハルトやゼルシオスたちから認められていないが)FFXXの一員なので――というか有原のユニットなので、「この世界に蔓延る悪意を可能な限り消す」というミッションを帯びている。

 というかこのミッション、そもそも「有原のロールプレイ」だったりもするので、有原陣営FFXX的に「悪意が生まれそう」なユニットやイベントは放置しづらいのだ。自分で作ったユニットもいるけど。


 さて、(有原の見立てでは)悪意の策の一つを潰しうる――とまではいかなくとも、悪意の被害を局限にとどめうる策を講じたわけであるが、はてさて結果はどうなるのやら?

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