ティトットの熱狂(ユニット:ゼルシオス)
「お待たせー!♪ いろいろやってて……って、なんか雰囲気が悪そう。というか、彼一人に刺さるようなオーラがプンプンしてそう」
部屋の険悪というかヘイトが
「あー、まぁ、俺の自業自得ってやつだ。ちょいと下卑たフリしてたらドジっちまった」
「姉さん、この人……いえ、この男に近づいちゃダメです! 本当に!」
アメリアが全身の毛を逆立てた猫のように、ゼルシオスを
だが、ティトットに気にした様子は無い。
「うーん。私、人間の男の人には興味無いんだけど……彼、意外と悪くなさそう」
「おぉー」
「ちょ!?」
褒められたことに対してやや淡泊ながら感嘆したゼルシオスと、驚愕に目を丸くするアメリア。
「そんなに悪意というか悪さを感じないのよね」
「あんたの目が狂ってなきゃいいがな」
挑発しつつも、笑みを浮かべるゼルシオス。そこに、先ほどまでの悪意や下衆さは無かった。
「んで……本題は俺より、俺の両隣にいる二人だろ? ティトット……だったか」
「あら、覚えていてくれたの? うふふ、そうよ。私は
ティトットの心の底からの笑みは、フレイアにとっては興味深く、ヒルデにとっては恐怖の象徴として見えた。
が、ティトットの興味の対象外であるゼルシオスは、あくまで淡泊に告げる。
「そんじゃ、俺は
「ご自由に~♪」
「ご、ご主人様ぁ……! 置いてかないでくださいよぅ!」
「るせぇ。
席から立ちあがったゼルシオスは、腕の端末で「ハルカはいるか? 俺、先に
「は、はわわわ……」
こうなると、もはやティトットを止める者はいない。
彼女は両手をワキワキさせながら、フレイアとヒルデの体を舐めるように見回していた。
「さぁ、どこから頬ずりしようかしら……♪」
ヒルデが涙目になるも、時すでに遅し。
すがるようにアメリアを見るも、首をふるふると振って「諦めてください」のサインが返ってきた。
……つまり。
「ひぃいいいいいいいいいいいいいい~~~っ!!!」
無類の竜好きによって、
***
「ったく……人使い荒くね? アタシ以外にも、空いてる奴いんだろうに……」
呼び出され、現在ゼルシオスを後ろから抱きしめて飛んでいるハルカナッソスは、ご機嫌ナナメであった。
何せ、“ただゼルシオスを連れ帰るためだけ”という理由だったのだから。もっとも彼女自身、腕輪端末を着けていないので、
「そう言うなよ。俺だけでもドミニアに帰れねぇこたぁ
「それを人使い荒いって言うんだよ!」
ハルカの脳裏に一瞬「落としてやろうか」という考えがよぎったが、ゼルシオスにそれは通じない。そもそも敗北を認めた相手に、そんな騙し討ちじみた真似をすることは彼女のプライドが許さなかった。
「
ゼルシオスは召喚されて早々に、使い切れないほどのこの世界での資金を確保している。やり方は最悪だったが、彼にとってそんなことは良心を痛めるものではない。
「さーて、もうすぐだ。寝るか……ん?」
と、ゼルシオスが空を見上げた。ハルカもつられて見上げる――が、何も無い。
「どうしたんだ? 何も見えねぇけど……」
「空に……
ゼルシオスは、
「アドレーア! ゲルハルトとパトリツィアを出撃させろ! それと非常警戒態勢だ、何かマズいことが起きるぞ!」
『かしこまりました、ゼルシオス様。そのように致します』
文句ひとつ無く即座に返ってきた返事を聞き届けたゼルシオスは、ハルカの両腕を離れると格納庫付近のハッチに降り立つ。
「相棒……馬鹿でけぇ危機だぜ、こりゃ!」
ゼルシオスの表情は、これまで以上に真剣であった。
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★解説
フレイアとヒルデがいったいナニをされたかは、読者各位の想像にお任せしますw
さて、この後はこの世界最大の危機その1です! 今もみくちゃにされているフレイアとヒルデの二人ですが、さすがに気づくでしょうし合流するでしょう。ただ、その時間は「すぐ」とはいきませんが……。
あ、ティトットはちゃっかりと、彼女たちのウロコを回収すると思います。擬態時より本来の姿の方が、落とすウロコは大きいでしょうから。
それでは……とこの勢いのまま突入しても良いのですが、そういえば前回の解説で何か書いていたような?
次話はそれに関連したエピソードに入ります!
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