あちゃー、想像以上に変な奴来たわこれ(ユニット:ゼルシオス)

「またね!」

「ああ!」


 エヴレナが、少年に手を引かれて去っていく。

 ゼルシオスにとっては少しばかり名残惜しかったが、彼の直感や、出会った少年の様子を見れば、いつまでもドミニアにとどめている理由は無くなったのだ。


「ふぅ、とりあえず嬢ちゃんたちは引き渡せたが……」


 ゼルシオスは、近くに残る別の気配を探る。


「おう、まだいるんだろうが! 出てこい!」


 その声に応じて、謎の浮遊物に乗った女性が姿を現す。


「てへっ、バレちゃった♪」


 彼女が足場にしているのは、円盤ようの乗り物だ。その周囲を、3つのリングが追随して動いている。

 グラマラスな体型に反し、かなり体幹を鍛えていることをうかがわせる。


「それにしても……ドラゴン、ドラゴンドラゴン! 本物のドラゴンを、この目で見られるなんて!♪」


 ピンク色の長髪を惜しげもなく振り回す美女は、フレイアとヒルデに大興奮していた。


 それを見たゼルシオスが、内心で呟く。


(あちゃー、想像以上に変な奴来たわこれ。大丈夫か?)


 その一方で、フレイアは余裕であった。


「おや、私たちに興味があるようだな?」

「でも怖いよ、母さん……」


 謎の美女は乗り物を地面に着地させると、より近くにいたヒルデに抱きつく。


「ふえっ!?」

「あぁ~、これが本物のドラゴンの肌触り……♪ ウロコがカタくていいわぁ……♪」


 目にハートを浮かべ、よだれを垂らして頬ずりする女性。


「おい、コラ」


 だが、ゼルシオスが圧を込めた一喝で意識を引き戻した。


「は、はいぃ!?」


 さすがの美女も、ゼルシオスの気合の入った喝には震え上がる。……のだが。


(何このイケメン、ドラゴンほどじゃないけどイイかも!♪)


 ゼルシオスの整った容姿に、少しばかり興味を惹かれていた。


何者なにもんだ、あんた?」


 敵ではないのは既に承知しているが、これは儀礼である。挨拶は大事だ。


「……こほん! 申し遅れたわね。私の名前はティトット。ティトット・マルレーンよ。普段はあそこの研究所で、ドラゴンの研究をしているわ」

「ティトットか。美人じゃねぇか」

「あら、私を誘うの?」

「今はやめとくぜ。会ったばかりだし、俺よりこいつらに興味あんだろ」


 ゼルシオスは敢えて誘わず、フレイアとヒルデを指し示す。


「そうなの! 私、ドラゴンに一度会ってみたくて……」

「だから出歯亀でばがめかい」

「そうよ! ここまで近くに来るなんて、滅多になかったの! それにあなたがいたから、人馴れしてそうだって分かったし……」

「わーったわーった、もういい。とりあえず、あんたが病的にドラゴン大好き姉ちゃんってのはよく分かった」


 ゼルシオスはあきれ混じりに、話を区切る。


「……ところで、あなたたちは遭難したのかしら?」

「んあ? ちげぇよ。“許可を得て、本隊から一時的に離れた”ってとこだな」

「であれば、お茶してかないかしら? あいにく、ドラゴンに出せるほどの量は無いけれど……」

「そこは安心しろ。二人とも」


 ゼルシオスが促すと、フレイアとヒルデが人間態に変身する。


「わわっ!? いきなりこんな可愛い子に!?」

「あったぼーよ。つーてこっち人間の姿は“擬態”で、さっきの姿が本来の見た目だぜ」

「そこも含めて、是非とも聞き取り調査をさせてほしいわね! 先導するからついてきて!」


 ティトットが、謎の円盤に再び乗る。

 有無を言わせない格好となった――が、ゼルシオスは。


「俺の直感てのは当たるぜぇ! こりゃ面白おもしれぇことになるぞ!」


 楽しそうである。

 一方……。


「私はいいが……この子ヒルデがここまで怯えるのは久しぶりに見たぞ」

「はわわわ……こ、怖いよぉ、あのお姉さんティトット




 三者三様の反応を見せながら、ティトットの研究所へ向かったのであった。


---


★解説

 ようやく合流させられました、ティトット姉さん。

 さて、急きょお願いして彼女に追加した(させていただいた)装備の解説を入れていきます。


     ***


●ブリッツフェルト... Blitz-Pferd


「閃光の馬」の異名を持つ、円盤型移動用装置。大雑把に書くと「人が足を乗せて移動するUFOユーエフオー」。

 ティトットの装備である「スレイヤー」を、最大同時操作上限数の3つまでまとめて本機の周囲を浮遊、帯同するように携行する能力を有する。


 地面を浮遊するように移動する。浮遊高度は最高3m程度。

 特性上、体幹に優れていないと操縦は困難だが、彼女は体幹においては十分な鍛錬を積んでいるため移動に際しての支障は基本的には一切無し。

 ただし操縦するのが女性である場合、スカートは履かないことを推奨する(下にスパッツ等を履くのであれば別だが)。


 最大時速は100kmキロだが、普段はそこまで速度を出すことはない。

 出所はエリア7-3:コンプレックス・α。


     ***


 とまあこんな感じです。ボンテージなので一応平気……なのかなぁ?


 あと、許可を取る際に“インベントリのようなものに収納しているようなかんじ”とのコメントを頂いたが、これは「ギガディスク射出」に応用させていただく所存。在庫の数を考えておかねば(たぶん100は越す)。


 ……ところで、本編を書いていたら、彼女専属の助手も一人追加しておきたくなりました。

 次のエピソードで熱気が残っていれば、もしかしたら断行するかもしれません。傍若無人・有原。


 さて、ここからどうロイヤ君と絡めたものか?

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