ちょっと立ち寄ってみっか(ユニット:ゼルシオス&ゲルハルト)

「ふー。それにしても、ちょっと気になるんだよな」


 ゼルシオスが、鶴の一声を言わんとする。


「ゲルハルト、俺たちが今いる位置の目星は付くか?」

「ああ。エリア8-1:翼人自治区だろうな」


 ゲルハルトはハンター登録をしており、地図を支給されている。地図と言っても大まかなものではあるが、彼ら自身の居所いどころを把握しうる程度には十分だった。


「ゼルシオス様? 休まれるのであれば、ドミニアにて……」

「いや、そうじゃねぇ。そうじゃねぇんだ、アドレーア」


 アドレーアが案ずるのを、ゼルシオスは止める。


「なーんか、会っときゃなんねぇ人物がいる気がするんだよなぁ……」


 そう言いつつ、ゼルシオスはエヴレナを見る。


「わ、私?」

「あー……お前っつーか、がいそうな気がすんだわ。ついでに、おめえらも」


 さらにゼルシオスが指したのは、フレイアとヒルデであった。


「私たちもか?」

「えっと、ご主人様にはどう見えているんでしょう」

「それもそうだな。分かる範囲で言っとくか」


 ゼルシオスの視界には、エヴレナ、フレイアとヒルデの3人に、独特のモヤがかかったようなものが映っている。さらにはそれを色で分けることで、組み合わせを区別しているのだ。

 やろうと思えば占い師にもなれるのがゼルシオスなのだが、本人の性格的には有り得ないと見える。


「えっと、まずエヴレナな。なんか、てめぇに会いたい人がいるらしいんだわ」

「私ですか? となると……」


 エヴレナが思い浮かべたのは、自身の護衛にして、知る限り最高の武力を誇る黄金の竜だ。


「とはいえ、その会いたい人にとっちゃ、見たところ『ついでにピックアップ』くれぇの気持ちだからな。うーん、何だろうな、『本気で探しているけど、本気具合がナンバー2』くれぇの感じ。……心当たり、あっか?」

「……いちおうは」


 ゼルシオスに即座に予想を否定される。

 エヴレナに心当たりはあったが、黄金の竜ではなく、戦友と言って差し支えのないあの少年にイメージを切り替えることとなった。


「ほんで、次。フレイアとヒルデな。おめぇら……『会ったら、メチャクチャ』……その、なんだ、ひでぇことじゃねぇけど、面白おかしなことになる。見てる側の視点として」

「おいおい……何なんだそれは」

「ご主人様、私どうなっちゃうの?」


 不安がる二人を見て、ゼルシオスは「さぁな」と短く返した。


「ま、とりあえず俺たちはここに立ち寄ることにならぁ。会いたい人に会わせっからな。アドレーア、なんかあったら連絡くれや」

「かしこまりました。護衛はいかがしましょう?」

「いらね。不安ならこの辺を旋回しとくか、適当に広い場所に停泊してくれや」


 話を終えたゼルシオスは、「そんじゃ、行くぜ」と、3人の竜を連れて行った。


     ***


「ヒルデ。ハルカは?」

「そろそろこちらに……あっ、ハルカさん」


 ゼルシオスが探していると、ハルカナッソスがさち白埜しらのを連れてやって来る。


「子守ってのも悪かねぇぜ……おっ、どした?」

わりぃな。その二人、連れてくわ。ハルカ」


 お願いをする形式ではありつつも、ゼルシオスの放つ圧に有無を言わせるつもりは無い。


「お、おう……けど、何かあんのか?」

「ああ。たぶん、その二人にも、会いてぇ人がいるみてぇだからよ。俺らで預かってんのもいいけど、そろそろ潮時だろうし、返すわ」


 それだけ伝えると、ゼルシオスは「来な」と短く促した。


     ***


 竜の姿になったフレイアとヒルデは、それぞれエヴレナ・幸・白埜とゼルシオスを背に乗せていた。

 空中ではさしたる障害も無く、リージョンに着陸する。


「どこに行くかは見えてっけど、先にその三人を返すのが先だな。あぁ、おめぇら、竜の姿はしばらく解くなよ。その図体ずうたい、いい目印になっから」

「……よく分からんが、従おう」

「はぁ~い、ご主人様」


 まずゼルシオスは、フレイアとヒルデに竜の姿を保つ指示をする。


「嬢ちゃんたちは勝手に動くなよ!」

「動いたら、このハルカちゃんが連れ戻すぜぇ!」


 しれっとハルカも連れて来ているゼルシオス。

 さち白埜しらのはともかく、エヴレナはおてんばゆえにどう動くか予想が付かないため、それを見越した“保険”である。

 通信端末の銀の腕輪とは、また違うのだ。


「そんじゃ、フレイア、ヒルデ。空に何もねぇ場所にブレス吐いてくれや。フレイアが先で、交互に3回ずつな」

「合図か?」

「あぁ。範囲は絞れ、ただよく見えるように空高くまで吐いてくれや」

「承知した。ヒルデ、やるぞ」


 さらには、フレイアとヒルデに「目印」となるブレスを吐かせたのである。もっとも空高くの何もない場所を狙うため、余計な迷惑はかからないだろうが。


 ……それからブレスを吐き終えて少しばかり時が経つと、ゼルシオスが呼ばわった。




「よぉ! あんたらの探し人はここにいるぜぇ!」

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