彼は、我らが友なり3(神錘の代行者& vs ロイヤ・ホープフルロード)

「……何者だ?」

「貴女は、いったい?」


 代行者もロイヤも、この少女の姿に心当たりが無い。


「わたしはカティンカ! おじさんに助けてもらった、あの斧だよ!」


 少女――カティンカは、武器を構えた二人の間に立ってなお、怖気おじけづく様子をまるで見せない。


「あの斧から感じられる意思は、汝のものであったか」

「うん! きったないおっさんに拾われてから、ずーっと不満だったんだよね! それにうかつにこの姿を見せたら、何されるかわかんなかったし!」


 カティンカの言う“きったないおっさん”とは、代行者に殺されたルドヴィゴ伯爵である。

 背丈は140cmセンチほどなのにも関わらず、出るところはしっかりと出ている。ロリ巨乳、あるいはトランジスタグラマーと形容すべき体型だ。そんなものをあの伯爵が見ては、彼女カティンカは何をされるか分かったものではないだろう。そもそもあの歪んだ魂を知ってしまっては、口というか講評も悪くなろうものである。


「ところで、けんかはメッだよ! おじさんはともかく、あなたはどうしていきなり襲ってきたのかな?」

「それは……私のプログラムゆえに」


 ロイヤから見れば、武器から姿を変じたとはいえ“人間”である。彼女は神性を有している、聖斧とされているからだ。


「プログラム? 自分で考えたことが無いの?」


 カティンカとしては、ロイヤの返答には不満が溜まるものであった。


「斧の私でさえ、意思はあるんだよ?」

「し……しかし、竜種を殺すことが私の作られた目的。であれば……」


 ロイヤはチラリと、ヴィグバルトを見る。

 だがカティンカは、ロイヤを制止するように、そしてヴィグバルトをかばうように前へと出た。


「あなたは少し、自分で考えることをした方がいいと思うな!」


 右の人差し指をびしりと突きつけて、ロイヤを咎めるカティンカ。


「……好機なり。我が本意には非ずとも、汝を無力化するには今なり」


 その隙を突き、代行者が転移でロイヤの背後に回り込む。


「……なっ!?」


 ロイヤが気付く猶予すら無く。

 代行者は、ロイヤの頭をしっかりと握りしめていた。


「……汝が誇りを捻じ曲げることになる。しかし、我が主の望みに答えるは――誰も傷つけずに、とするには、これをおいて他になし」


 短く宣告した代行者は、ロイヤの全身にSGエネルギーを送る。


「許しは、わぬ」

「……!」


 だが、ロイヤにとって苦痛は無い。

 その代わり――彼の意思の一部が、マヒするような感覚を覚えた。


 そして、ロイヤの全身に黒く光る粒子が満ちた後。


「これで良し。これで我らは、戦う理由は無くなった」

「おじさん、すごーい!」


 代行者はロイヤのプログラムを、自身の意思で解除しない限り適用されないように書き換えたのだ。今のロイヤに、竜種を積極的に排除する意思は消失していた。


「そして、汝を導けとのご意思でもある。来てくれるか、ロイヤよ?」

「……はい。人間を守るが、私の使命。ご一緒します」




 かくして脅威ではなくなったロイヤが、代行者へ同行する意思を示した。


---


★感想

 有原陣営6人目(6体目)の、特殊勝利の対象者。


 代行者にしては珍しく、全然スマートじゃない勝ち方だった。元々作者である私自身、彼は純然たる正義とは思っていないのだが、それにしてもこの結果は相当に驚かれるのではなかろうか。

 しかしこの勝ち方でないと物語的に破綻するため、やむを得ず断行させてもらった。


 既に予約コメントで書いたが、ロイヤ君には南木様の“あるキャラ”との邂逅を果たしてもらう必要がある。ゆえにロイヤ君に死なれては、その目論見がご破算であるのだ。

 そして味方に不用意に死なれるのも大問題なので、見せ方としてはともかくストーリー的にはこれで最上の勝ち方なのである。


 あと、聖斧であるカティンカを勝手にロリ巨乳美少女(に変身できる能力を持たせた)にしたのは有原の性癖です。武器が人間の姿に変身するのって、いいよね。

「意思がある」「幼子のようだ」という伏線はきちんと張っていたのだが、まさかひと化を予想できた方は何人いるのだろうか。


 なお、現時点で採用していないロイヤ君の能力や設定は、ここから発揮させてもらう予定。

 とりあえず、当面は代行者の許可無くしては、その力を振るうことは無いだろう。やってることはミミミちゃんにしたことの数倍えげつないけどね。


 ちなみに、他ユニットの場合。

 ゲルハルト相手なら、とりあえず戦闘にはならないだろう。人間だし、神性持ちだから。

 ゼルシオス君相手の場合、彼だけならともかく……フレイアかヒルデの片方ないし両方がいたら戦闘になる。竜種だし。その場合、破壊以外の手段が無くなる。そのうえ代行者と違って書き換え能力も持たないからね。

 あ、桜付きは大雑把に言うと「代行者の上位互換」なので、たぶん似た結末になっているかと思われます。


 さて、ロイヤ君には成長を遂げてもらいます。

 代行者の“かせ”が消えるのは、プログラムでなく自らの意思で判断するようになったその時でしょう。


 どういう絡ませ方をするかは……その時までのお楽しみということで、ここはひとつ。

 実に良いユニットでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る