止めてやるぜ!2(ゲルハルト&ゼルシオス vs 灼熱戦艦 a.k.a. 占領艦『フィラデルフィア号』)

「各機、砲座を攻撃しろ! ただし撃沈すんじゃねぇぞ、下手に致命傷加えたら俺らも丸ごとぶっ飛びそうだからな!」


 発艦を済ませたゼルシオスは、敵戦艦――占領艦フィラデルフィア号に向けて飛びながら、必要な指示を飛ばす。


「おそらくありゃあ突入しねぇと止められねぇ! ドミニア、合図したら舷側げんそく装甲ぶち抜いてくれや!」

『こちらドミニア、了解した』


 今ゼルシオスに応対したのは、CIC戦闘指揮所クルーだ。アドレーアとは別人である。


「周辺の雪が溶けてんぞ、あれが俺らの残された時間だと思え!」


 さらにゼルシオスは、フィラデルフィア号周辺の環境にも目を配る。

 雪がどんどん溶けており、これが暴走を紙一重で食い止めてくれているのだ。


「ドミニアぁ、予測時間は何分だ!?」

『こちらドミニア、最大まで見積もっても7分が限界だ!』

「おっしゃぁ! そんだけありゃあ十分だな!」


 ゼルシオスは対空砲火の嵐をかいくぐりながら、ゲルハルトたちに指示を飛ばす。


「全機聞けぇ! 突入してあの戦艦の心臓止めんぞぉ! 最優先で対空砲を排除しろ、あとはドミニアに任せるくらいでいい! ただし熱量を伴う武装は厳禁だ! ゲルハルト、フレイア、ヒルデ、気ぃ付けろよ!」

「「了解!」」


 突入に際して直接の脅威となりうるのは、発射速度の速い対空砲だ。搭載砲の中では口径――威力が低いが、ガトリング砲でも砲は砲。生身の人間では血煙になる威力を誇る。

 その他の火砲も威力は驚異的――特に主砲は――だが、リヒティア、アズリオン、そして赫竜エクスフランメ・ドラッヒェの機動力の前ではのろい砲に過ぎない。また、副砲以下の火力であれば、出撃全機の装甲防御力で対処しうるものであった。


「左側の火砲は残さず潰せ!」


 リヒティアが装備する100mmミリ砲が火を噴き、アズリオンが大剣で砲座を刺し貫き、そして赫竜エクスフランメ・ドラッヒェの爪による一撃で、対空砲という対空砲がつぶされる。

 フィラデルフィア号もただ黙ってやられるだけではなく、副砲を放ち主砲を動かして抵抗を試みていた。だが取りつかれた状態では照準以前の問題であり、どの出撃機にも命中することは無い。


 ならばとばかりにドミニアを狙う主砲だが、先んじてヒルデが砲座をつぶして沈黙させた。


「ダメだよ。私たちのおうちを狙うなんて」


 普段は明るく可愛く振る舞っているが、元々はきちんと赫竜エクスフランメ・ドラッヒェ。敵対する相手への容赦の無さは健在であった。


「まったくだ。対空砲は排除したが、ドミニアへの脅威もまた、だな。手早く片づけよう」

「同意する」

「やっちゃうよー!」


 フレイア、そしてゲルハルトとパトリツィアの乗るアズリオンもまた、砲という砲をつぶしていった。


「よーし、もういいだろ! 全機、いったん戦艦から離れろ! ドミニア、残存時間はァ!?」

『5分30秒だ!』

「了解! スポットとして100mmぶつけっから、そこに砲撃ぶち込んでくれや!」


 ゼルシオスは舷側装甲の一点に狙いを付け、携行する100mmマシンガンを立て続けに撃ち込む。

 口径は大きくとも対空獣ルフトティーアを意識したそれは、仮にも戦艦であるフィラデルフィア号の装甲を容易には貫きえない。


「ゲルハルトだ、離れたぞ!」

「私もだ!」

「ご主人様、オッケーです!」


 既に退避を済ませているゼルシオス以外の1機と2体が、退避報告を済ませる。


「了解! ドミニア、ぶっちかませぇ!!」

『承知した! 射線上に友軍機無し、リヒティアによる指定箇所に1発ずつ撃て!』


 CICの指揮から数秒も経たずして、ドミニアの装甲内に格納されていた砲座が展開される。

 威力の加減を考慮し、今回準備されたのは副砲だ。しかし同程度の大きさを誇る敵を想定したドミニアは、フィラデルフィア号に対しては副砲でも撃沈しうる威力であった。


『撃ちー方ぁ始めぇー!』


 ゼルシオスにとっては前世を思い出させる発音での号令によって、ドミニアの副砲が火を噴いた。

 熱や事前のダメージにより劣化していた装甲は、ものの1、2発で大穴を開けたのである。


『撃ち方やめ! 突入の準備は整ったはずだ!』

「ありがとさん! こっから仕上げだ、止めに行くぜぇ! 全機、俺に付いてこい!」

「「了解!」」




 いよいよ仕上げとなる原子炉の停止に向けて、ゼルシオスたちはフィラデルフィア号内部への突入を開始した。

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