俺たちの名は

「フロインデ……?」


 エヴレナの言葉に、ゼルシオスたちは固まった。

 エヴレナとハルカからすれば、突然固まってしまったゼルシオスたちを見て困惑せざるを得ない。


「ちょ、ちょっとどうしたのよ? 『友達』って意味だけど、そんなに難しかった……?」


 エヴレナの言葉を聞いて、ゼルシオスがまず真っ先に我を取り戻す。


「…………いや、意味の問題じゃねぇ。ただな、漢の魂ソウルに来たんだ」

「ソウル? 分からないけれど、よほど琴線に触れたのね?」

「ああ。今のは最高のアイディアだぜ、嬢ちゃん……いや、エヴレナ!」


 ゼルシオスは敬意を込めて、敢えてエヴレナを呼び捨てにする。「名前で呼ぶ」ということで、敬意と友情とを表したのだ。


「そ、それは良かったわ……」


 エヴレナは今までと少し違うゼルシオスの様子に、内心で「あ、熱い……」と引き気味であった。


 そんなエヴレナをよそに、ゼルシオスは盛り上がる。


「おっしゃあ! エヴレナの“フロインデ”を借りて、『フロインデ・イクスクロイツ』……ん?」


 と、盛り上がるゼルシオスに待ったをかけるものが現れる。


「金の、粒子……?」


 黄金きんの粒子が、ゼルシオスの前に映ったのだ。


おれにも見えるな。どういうことだ?」

「ボクにも分かんない……けど、今パッと思いついた単語があるよ」

「何でぇ、言ってくれ!」


 食い気味にゼルシオスが興味を示すと、パトリツィアは「もー、せっかちなのは良くないぞー」と茶々を入れる。


「運命。いや、ベルグリーズの言葉で、“運命ファータ”かな」

「ファータ……フロインデもいいけど、ファータもいいな。どっちにすっかな……?」


 悩みだすゼルシオスを、アドレーアが止める。


「どちらかではありませんわ。どちらも組み込むのは、いかがでしょう?」

「どっちもか! けど、言われてみればイケっかもな」


「フロインデ」も「ファータ」も組み込むことを決断したゼルシオスに、ヒルデが最後のひと押しをする。


「ご主人様、こういう語順はどうでしょう? 『フロインデ・ファータ・イクスクロイツ』……というのは」

「いいな! フロインデ・ファータ・イクスクロイツか……けど、最後にもうひと押し欲しいぜ!」


 ここまでくれば、ほぼ確定である。

 最後のひと押しをしたのは、意外にもシュレーディンガーであった。


「じゃ~あ~、こういうのはどうかにゃ~? 『フロインデ・ファータ・イクスクロイツ“連合”』。しっくり、来るのかにゃ」

「最高だぜ! 決まりだ! 今から、俺たちの名は…………『フロインデ・ファータ・イクスクロイツ連合』だぜ!」


 高々と叫ぶゼルシオスの言葉を聞いて、最初に肯定を示したのはゲルハルトであった。


「実に良い名だ。フロインデ・ファータ・イクスクロイツ連合……心に来るものがある」

「だろぉ!? あー、こうなったら旗も欲しくなってきたぜ!」

「だったらよぉ、このハルカちゃんにお任せあれ! ……あ、正確には手下だけどね。手先が器用で、デザインもうまいやつが一人いるんだー」

「ホントか!? じゃあ今すぐ頼む!」

「あいよ!」


 あれよあれよという間に、ゼルシオスたちドミニアの部隊名が決まった。




 フロインデ・ファータ・イクスクロイツ連合――その名はのちに、この世界全てにとどろく名前となったのである。しかし今のゼルシオスたちには、そのことは知るよしも無い……。


---


★解説

 有原陣営を指し示す名称が、たった今決定しました。

 もちろん、『フロインデ・ファータ・イクスクロイツ連合』です。


 “フロインデ”は「友達」、“ファータ”は「運命」の名をそれぞれ冠し、“イクスクロイツ”とは二つのXエックス、「“交差”や“交わり”、あるいは“縁”」を示します。

 このフロインデ・ファータ・イクスクロイツ連合は、有原陣営もといゼルシオスたちの方向性を定める名前となったわけです。

 あ、ちなみに、この命名には桜付きも関与しました。美味しいところで、です。ちゃっかりしてるな、あの神様。


 メタ視点――リアルにおいても、これは重要な意味を持ちます。

 名前が決定する転機となったエヴレナ様は、今はソルト様の使用キャラであれど、元々は企画主催者の南木様が考案したキャラクターでした。

 それを今、有原陣営でお預かりしている……という状態です。つまりは現時点で三人もの作者をつなげている存在なのです。だからこそ、私は彼女――エヴレナ様に、「フロインデ」を言わせたかった。作中であっても、彼女は竜種であり、ゲルハルトやゼルシオス君たち人間と異なる種族ですから。


 そしてこの名前は、単なる作中での方向性を定めるにとどまらず、「リアルでも、作者同士の交流を示す」名前。

 自画自賛ではありますが、今の私にとってはこれが最高の名前だと思っています。


 なおこちら、有原のお節介によって多くの略称が用意されております。

「ツヴァイエフ連合」をはじめ、「FFX-クロイツ連合」や「F・F・X・クロイツ連合」、また「2FX連合」「FFXX連合」、あるいは「F2Xクロイツ連合」。今思いついているのはこのくらいですが、もっと良い略称があればぜひぜひ応援コメントでアイディアをいただきたく存じます。


 また、ハルカちゃん(の手下)がデザインしてくれた旗が、私のワールドワイド・フロンティア用の近況ノートに存在します。メタ的には有原作。

「イクスクロイツ」たる“2つのFエフと2つのXイクス”は、どうにか入れられています。これがやりたかった。

 ……本当は「人と竜とが、握手している」図柄も入れたかったのですが、技術不足で台無しになるのを嫌ったために断念しています。これでも最低限の情報は示せているので十分なのです。負け惜しみ。


 色は、白が「神聖であること」。青が「空」、そして「信頼・誠実」。赤が「決意」。灰色が「調和」。そして最後のオレンジが、「親しみ――転じて“友情”」を示します。

 意味はある程度調べながら書いた上記の文ですが、一部に有原独自解釈(作中内設定、というかぶっちゃけ無知ゆえの誤用)を含みますので、あしからず。


 それでは――まだまだフロインデ・ファータ・イクスクロイツ連合の物語にお付き合い頂ければ、幸いです。

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