この人騒がせどもが!2(ゼルシオス vs 輝く翼のハルカナッソス)
「さっきやってくれたのはテメェか、クソ野郎が!」
加速して一気に20,000mを突破したヴェルリート・グレーセアが、43mの威容を示す。
「
「あぁ?
「俺はゼルシオス・アルヴァリアだ。んで、あそこにいる連れがそれぞれフレイア、ヒルデ。恨みはねぇが、攻撃した以上は相手になってやる」
ゼルシオスは言い終えると同時に、機体の出力を上げる。
ヴェルリート・グレーセアがただそこにいるだけで、圧倒的な熱量が不可視のバリアのごとく広がり――
「あぢぢぢっ!? や、焼き鳥になっちまう!」
ハルカナッソスたちに強烈な恐怖を植え付け、距離を取らせる。
「このまま焼き鳥にしちまってもいいんだぜぇ? 歯向かう相手にゃ、容赦しねぇからなぁ」
「クソッタレ! そんなもんに乗ってねぇで、出てきやがれ!」
「なぁに言ってんだ、この馬鹿野郎が。必要な装備を調達すんのは当然だろうがよ」
「こ、この野郎……!」
ハルカナッソスの挑発にも、ゼルシオスは涼しい顔だ。当然である、ハルカナッソスたちにとっては、
今まで地上の敵に対して粋がっていた彼女たちにとっては、突如として自らの心臓を鷲掴みにされた感覚である。
「あー、けど俺らも鬼じゃねぇ。俺らに何もせず素通ししてくれたら、俺らも何もしねぇよ。それでどうだ?」
「それは……」
ハルカナッソスが一瞬、
それは「約束を守りさえすれば、自分たちの安全を保障する」と同義だからだ。
……だが、彼女は。
「できねぇな」
「おぉん?」
否定の返答を受けたゼルシオスは、むしろ面白がるような反応を示す。
「できねぇ、っつってんだよ! アタシがイモ引いちまったら、“輝く翼のハルカナッソス”の二つ名がクソまみれになっちまうからなぁ!」
「いいぜ上等だコラァ! 望み通り相手してやんよぉ!」
双方、戦う意思を示す。
……と。
「が、正直てめぇらを殺すのは気が引けるんだよなぁ。勝負の方法、何にするよ? 殴り合い以外で」
殴り合いともなれば、ヴェルリート・グレーセアが一瞬で勝利するのは目に見えている。
だがゼルシオスは、それではつまらないと思っていた。
「……ところで、てめぇら。速そうだな?」
「あったりめぇよ! アタシらの翼は
自身の長所を褒められたからか、ハルカナッソスが笑顔を取り戻す。
それを見たゼルシオスは、確信を深めて話を続けた。
「そうかい。そんじゃぁ、『鬼ごっこ』なんてどうだ?」
「鬼ごっこだぁ? アタシらにそれを持ちかけるなんざ、アンタ馬鹿なのか? 速いってのまで見抜いてんのによ」
敢えて自身の得意な“速度”で、勝負を挑まれたことに困惑するハルカナッソス。
だがゼルシオスは、ヴェルリート・グレーセアに「
「俺の乗ってる
「へぇ、いい勝負出来そうじゃんか」
この時点でハルカナッソスはヴェルリート・グレーセアの最大スペックに気づいていない。
せいぜい、“自身と対等”程度に思っている。
そんな様子を気にすることもなく、ゼルシオスが本題に入る。
「だから、60秒タイマン勝負だ」
「は?」
「俺は60秒で、
溜めを持たせ、ハルカの興味と意識を惹きつける。
「俺が勝ったら、てめぇら全員俺のメイドになりやがれ」
「メイド?」
「ざっくり言うと“手下”ってやつだ」
実態はいくらか違うが、だいたい合っている。そもそもゼルシオスは、ハルカナッソスたちに伝わるような言い回しを狙って選んでいるのだ。
「んで、どうすんだ?」
「いいぜぇ、いいぜいいぜ! その勝負、乗ってやんよ!」
ハルカナッソスが賛成を示す。
「おい、てめぇら! 手ぇ出すんじゃねぇぞ!? これはアタシとコイツの勝負なんだからな!」
「「はい、アネゴ!!」」
ハルカナッソスの手下たちが散らばり、広大な空間を作る。とはいえ、別にこの空間の中だけで勝負するわけではないが。
「決まりだな。フレイア、ヒルデ。立ち合い頼むぜ。手は出すなよ」
「もちろんだ」
「任せて、ご主人様!」
「……あと、アドレーア。時間管理頼むわ」
「引き受けました」
「5秒待つ。その間に逃げな。5……」
「あいよ!」
カウントダウンが進む間に、ハルカナッソスが逃げ出す。
そして、最後のカウントが終わった。
「0! そんじゃ行くぜ、オラァ!」
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