これが、俺たちの艦だ(ユニット:ゼルシオス&ゲルハルト)

「アドレーア。格納庫ハッチ、解放してくれや。お客さんたちを迎え入れるぜ」


 腕輪状の端末で、ドミニア艦長のアドレーアに連絡を入れたゼルシオス。

 それから一分と経たずして、背面のハッチが展開した。


「よし、入ってくれ。大丈夫だ、その高さなら入りきる」

「済まないな。アズリオンをしまうにしても、一度着地せねば不安が残るのだ」


 やり取りをしながら、ゲルハルトはアズリオンを着艦させる。

 同時に、ゼルシオスは重素臓ゲー・オーガンを励起させてエヴレナの元へ飛び移った。フレイアとヒルデはドミニアの近くで待機しているため、そう難しいことではない。


わりいな、嬢ちゃん。ちょっと掴まってくれや」

「そうさせてもらうわ」


 エヴレナをおぶったゼルシオスは、重素臓ゲー・オーガンの励起を解除してドミニアに着艦する。

 それを見たフレイアとヒルデもまた、人の姿になって着艦を済ませた。同時に、ハッチが閉じだす。


「とりあえず、これが俺たちの艦――ドミニアだ。さて、まずは艦長アドレーアに会ってもらわねぇとな」


 ゼルシオスは、ゲルハルトとパトリツィア、そしてエヴレナに付いてくるように言ってから先導を始めた。


     ***


「入るぜ」


 三人を先導したゼルシオスは、ひと言告げるとある部屋に入る。

 ゲルハルトとパトリツィア、エヴレナ、そしてついてきたフレイアとヒルデも続けて入った。


「皆様、初めまして。ごきげんよう」


 部屋の中には既に、銀髪で背丈の小さな女性が――とはいえ胸は見た目に反して、はち切れんばかりの大きさだが――立って待っていた。

 その脇に、控えるようにして一人のメイドがいる。黒髪に紫の瞳で、表情は氷のごとく、自らを主張しない立ち居振る舞いをしている。


「私の名前は、アドレーア・ルフテ・ヴェルセアと申します。このドミニアの艦長にして、こちらとは異なる世界にある国、ヴェルセア王国――その第4王女でございます。どうぞ、以後お見知りおきを」


 王族として整えられた所作は、ドミニアに初めて足を踏み入れた三人の息を呑ませるほどだ。

 ややあって、ゲルハルトから名乗りだす。


おれはゲルハルト・ゴットゼーゲン。ここともそちらの世界とも異なる国、ベルグリーズ王国において“守護神の御子みこ”を務める者だ。こちらこそ、よろしく頼む。そして……」

「その手伝い兼妻のパトリツィアだよー。よろしくね、レーアちゃん」


 出会ったばかりというのに、パトリツィアはアドレーアに愛称を付ける。


「おい、パトリツィア……」

「うふふっ」


 と、アドレーアが微笑んだ。


「どうした?」

「いえ、パトリツィア様はゼルシオス様と似ていらっしゃるところがあるとお見受けしたもので。つい、笑みが」

「あぁん? 俺だぁ? ……って、確かに似てんなぁ」


 普段の言動に心当たりがありまくりのゼルシオスが、少しの間遠い目をする。


「……って、俺たちだけで盛り上がってちゃ失礼だぜ。そんじゃ、出番だ。ほら」


 しかしすぐに、エヴレナに話を促した。


「ええ。私はエヴレナ。またの名を真銀竜と呼ぶわ。フレイアさんにヒルデさんと似たように、私も竜の姿に変わることが出来るの。もっとも、これは“奥の手”だから、いつもいつもとはいかないけれど……」

「よろしくお願いいたします。私よりもとうとき方」


 わずかに言葉を交わしただけで、秘めたる気配を見抜くアドレーア。

 慇懃いんぎんな態度に、エヴレナもペコリと一礼した。


「さて、このドミニア……だったかしら? この戦艦も、見たところあなた達の仲間のようね」

「ああ。俺のいる艦だしな」

「ゼルシオス様、そしてその戦友である皆様の助力は惜しみません。如何いかなる存在が立ち向かってこようとも」


 ゼルシオスとアドレーアの返事を聞いたエヴレナは、ニコリとほほ笑む。


「信じるに値する、良い目をしているわね。であれば、私も報いましょうか」


 そう告げた次の瞬間――ドミニア全体が、強く輝いた。

 艦の外に内に、銀の光が満ちる。


「これは……?」

「おまじないよ。ちょっと強すぎたけどね。それはともかく、あとはあなた達のおこない次第」


 いたずらっぽく微笑んだエヴレナは、「あ、そうだ」と思い出したように言う。


「そういえば、ここは王冠山脈だったわね」

「ああ、見た地図や特徴とは当てはまるが……」


 ゲルハルトが、セントラルで見た地形情報の記憶を頼りに肯定する。

 それを聞いたエヴレナの表情が、真剣になった。


「気を付けてね。ここを根城にする厄介者が、いるみたいだから」


     ***


 時は少し戻る。

 ドミニアが銀の輝きに包まれるとき、敵意ある者たちがそれを見ていた。


「アタシらのナワバリでイキりやがって。身の程を教えてやるよ」

「イイねぇアネゴ! やっちゃう? やっちゃおっか?」

「ああ。ピカピカ光るあの変なもんを、たっぷりクソまみれにしてやんよ」




 輝く翼を持つ一人の女性に率いられた翼持つ女性たちの集団は、ドミニアに狙いを定めていた……。


---


★解説

 というわけで、エヴレナ様は無事にドミニアへと合流しました。

 ついでにドミニア本体や全武装とドミニア搭載アドシア(ロボット)全機に竜特効が付きました。やると言ったのでしっかりやった、うん。

 なお、「ちょっと強すぎたけど」というエヴレナ様の発言の通り、ドミニアに「この世界に留まる限り、艦に触れた者すべてに対して竜特効を付与する」という事実上の永続効果が付きました。現時点での戦況、また構想中のラスボスの規模を鑑みるにあたってはこのくらいやってもいいと思ってます。たぶんラスボスに対しては、これでもまだ戦力として不足だと思う(ただし、桜付きは除く)。

 まあ、ちょっとやり過ぎた感はありますが、有原陣営の基地にして正しく旗艦ですので、増せる戦力は増しておくのが方針です。


 次話でついにあの集団と激突します。

 なお、一人除き設定上特に性別が定められていなかったため、レディースよろしく全員を女性だとイメージしております。よって、含め、勝手ながら全員女性の設定とさせていただいております。ご了承ください。


 またストーリー上の進展方法ですが、「ゲルハルト&ゼル君サイド」と「代行者サイド」は適度に入れ替えながら書き進めるのがやりやすいのでそうしてます。

 というか、ある程度続きへの期待が集まってきたところでサイドを切り替えるのが面白いと思っているこの頃。とはいえ、片方だけに集中して期待させないようにはしています。

 ストーリー的に適当なタイミングで合流させようとは思いますが、しばらく別展開だと思っています。というか代行者サイドは特性上フリーダムに動けるため、いったん合流してもいつの間にか“死を授け”に向かって行ってたりして。


 あと、ドミニアの予想進路ですが。

 最初の召喚時にセントラル(中央)に出現してから、メガロポリスへ西進したのちに反時計回りの要領で進む(西 → 南 → 東 → 北の順番)ことになるでしょう。とりあえず、現時点ではこの通りに進んでいます。

 世界全域の制圧は考えていませんが(特にエリア4:アビスは行けるユニットが限られそうなのでなおさらである)、各エリアを通過する際にひと騒動起こしたいですね。

 またドミニアの飛行高度に制限を設けていないため、かなり乱暴というか強引に突破するエリアがいくつか予想されます。たぶん、予想進路的には当分たどり着かないでしょうけれど。


 どんどん大軍勢となっていくのは書いていて楽しいです(超ぶっちゃけ)。

 ちなみに、桜付きを除いては作中キャラに戦力や勢力を増やす意図はありませんが、有原にとってはストーリー的に重大な意味を持たせたいと思っているため、どんどん戦力を増やしています。だからこその特殊勝利枠。

 いずれ来たる最終決戦では、これまで参戦した同様の自主企画史上、最大の爆熱的な盛り上がりをお届けしましょう(ハードルを自ら上げていくスタイル)。それでは、また。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る