女神の直感(ユニット:神錘の代行者&???)

 ゲルハルトが西へ飛び立ったのとほぼ同時刻。

 女神リアは、全身をはしる恐怖に似た感情を抱き、震えていた。


「え、何これ」


 どうして震えが起きているかは分からない。

 しかしリアの直感は、“おそれ”を正確に感じ取っていた。


「全身がチリチリするんだけど……」


 リアは体が勝手に震えだすという事実よりも、知覚できない、しかし確実にいるを畏れていたのである。

 だがリアは、唯一、輝く粒子だけはハッキリと目にしていた……。


     ***


 リアの背後200mほど。


「少しばかり、遊びすぎたか。まあ、挨拶代わりというものだ」


 桜色と金で飾った漆黒の機体――正確にはその中にいる青年が、言葉を放つ。

 その声はよく通っており、しかしどうしてかリアの耳に届くということはない。


「よろしいので?」


 と、黒いローブをまとった男が短く疑問を口にする。


「ああ。私もたまには遊ばないとな。もっとも神格がかけ離れすぎているので、思ったよりは彼女の肝を潰すことになったが……まあ、それ以上の邪魔はすまいよ。元よりこれは、私のお節介……彼女がこの世界を回すことを、助けるために来たのだからな」

「左様でしたか」


 男がわずかに首肯しゅこうする。


「会話はここまでで良かろう。私手ずから送り届ける。露払いを任せたぞ」

「御意」


 短いやり取りののち、男の全身が黄金きんの粒子に包まれる。

 一瞬経つと、男だけがいずこかへと向かっていった。


「では、また会うとしようか。立志せし若き女神よ」




 そして謎の機体も、自らの全身を粒子で包むと、リアが管理する世界の空へと転移したのであった。

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