ふざけんじゃねぇ(ユニット:ゼルシオス)
時は前後する。
戦艦ドミニアが光の大渦に呑みこまれてからは、ゼルシオス・アルヴァリアをはじめ全乗組員が夢を見ていた。起きながらにして夢を見る者もいれば、入眠して夢を見たものとバラバラである。
そんなゼルシオスであるが、肉体的には失神に近い状態で眠りについていた。
***
「何だここは? 変なとこだな。それにしても……いきなりでけぇ光が現れたと思ったら、俺たちを呑み込んで――そっから先が思い出せねぇ」
夢の中で、ゼルシオスはむくりと起き上がる。
――ゼルシオス自身は、これを夢とは認識していない。ヴェルセア王国ともドミニ艦内とも違う場所だと、認識していた。
「変な光景だな。モヤついた空に硬い雲……どこだ、ここは?」
『初めまして、強そうなお兄さん!』
高い声が響く。女神リアだ。
その声が聞こえた瞬間、ゼルシオスの額に青筋が浮かんだ。
「テメェか、俺たちを連れてきたクソったれは!」
「あら、よく分かりましたね? そうです! 私は女神リア。貴方たちを、この世界に――」
リアの言葉は、これ以上続かなかった。
なぜなら――ゼルシオスが瞬く間に距離を詰め、リアを押し倒してマウントポジションを取ったからだ。
「ぐっ……な、何を?」
「このクソ
リアの話を聞くつもりがさらさらないゼルシオスは、既に固めた拳をリアの顔面目掛けて振り下ろす。
鉄をも砕く勢いの拳が、リアの顔に当たる直前――
「や、やめて!」
悲鳴を上げたリア。
それを聞いた瞬間、ゼルシオスは石にされたように拳を一瞬で止める。
「……チッ。その悲鳴、あいつを思い出すぜ」
ゼルシオスは、ここにはいない
もっとも、叫びを上げるに至った経緯はだいぶ異なるのだが、それはリアの知るよしではない。
「
「は、はい……」
ゼルシオスの威圧に、リアが従う。
神性を持つはずの彼女は、自身を殺しえないゼルシオスに恐怖を抱いていた。
「えっと、私が求めることはただ一つ。私が手に負えない問題を――」
「長そうだな、あぁ?」
回りくどくなるのを、ゼルシオスが威圧で止める。
「つ、つまり、強い敵を倒してください!」
「それが望みかよ。叶えてやらねぇこともねえが……見返りは、な?」
敢えて下卑た笑みを浮かべるゼルシオスが、リアの全身を舐めるように見回す。
「……ひっ! や、やめて、何でもするから純潔だけは!」
「あークソ、お前相変わらずつまんねぇや。合意があんのが、俺の趣味だってのによ」
ここまで傍若無人に振る舞っておきながらも、意外な趣味というか性癖を見せるゼルシオスにリアが目を丸くする。
「え、あの、ちょっと?」
「何だ? やっぱり『襲われたい』ってのか?」
「いや、そうじゃなくて、ですね。そのー……意外だな、って」
「…………女の悲鳴は聞きたくねぇからな。テメェみてぇなクソ
リアの言葉に、ゼルシオスが過去の片鱗を語る。
「いきなり連れてきて、戦ってくれ……か。正直気は乗らねぇが、無理やり帰るとなんかつまんねぇことになりそうだな」
先ほどの傍若無人さは鳴りを潜め、ゼルシオスは己の直感を信じる。
「ハァ……。まぁいいや、乗りかかった舟だ。俺は
「……! それなら、ハンター登録を」
「ただし、だ」
ゼルシオスが、リアの顔のすぐ近くに自身の顔を寄せる。
「さっき、『何でもする』って……言ったよなぁ?」
「は、はい……」
「それじゃ、何でもしてもらおうか。俺が乗らねぇからエロいの以外だけど……」
ゼルシオスは己の直感に従い、「何でもしてもらう」ことを決める。
「とりあえず、この世界のお金寄越せ。……な?」
「はいぃ……」
たっぷりと圧を込めた目でゼルシオスがにらみつけると、リアが涙目になりながら、大量の1000
変なところで紳士的ではあったが言質はしっかりと取っていたあたり、ゼルシオスの心における容赦のなさは健在であった。
「それをドミニアにある俺とアドレーアの部屋に積んどけ。てめぇみてぇな銀髪の女だ。おら、やれよ」
「はいぃぃ……」
とんでもない男に目を付けられたな、と内心で後悔するリアであった……。
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