ケース2 年下
「娘をそんな危険な目に遭わせるわけないでしょう!」
「ですよね~」
今日は15歳の女の子の家に全裸になるお願いに来ている。同年代の女の子と話すのは苦手だけどそれ以上に年下は苦手だ。
15歳だと本人の前にまず親御さんが立ちはだかる。幸いにも父親は不在だったけど母親が鬼の形相で怒っている。
「わかってるなら帰ってください。1000年に一度の大災厄なんて起こるかどうかもわからないのに。まったくいかがわしい」
「念のための備えなんです。世界が滅んでからでは遅いので」
「テレビで言ってましたけど、スケベな考古学者の陰謀なんじゃないですか? そんな人達に付き合わされる公務員も大変だとは思いますけど、普通に考えて娘を全裸にさせると思いますか?」
「おっしゃる通りです」
全裸の依頼を初っ端拒否られたのでさっさと帰りたいのに母親の愚痴が止まらない。実際、35歳という年齢制限が差別ではないかという論調もある。
女性の価値を若さで決めているとか、男だって精霊の加護を受けられるんじゃないかとか、いろいろな意見が飛び交って世界が怒りに満ちている。
これこそが大災厄なんじゃないかと考える時もあるけど、それを口にしたところでどうにもならない。
佐野さんのアポは取り付けたもののまだまだ目標の一割には遠く及ばず、このままだと童貞のまま世界と一緒に滅ぶことになる。
「あの、念のためご本人の意思を確認させていただいてもよろしいでしょうか。拒否ならこの書類にサインをしていただければ今後はお願いに伺うこともありませんので」
「保護者のサインじゃダメなんですか? 自分から裸になりたがる女の子なんているわけですしょ!」
「そうなんですが、15歳という年齢であればもう自分の意志で決定できるということで国がルールを定めましって」
「娘を品定めするつもりなんでしょ! まったくいやらしい。今まで彼女の一人もいたことがないからって」
「え……いや」
なんでバレたんだ? もしかして童貞って額に書いてある?
いや、童貞であることと書類にサインを求めることは何も関係ない。堂々としろ俺。
「おかーさんうるさい」
「彩夏。部屋で待ってなさいって言ったでしょ」
階段から降りてきたのは15歳にして幼く見える小柄な女の子だった。
気だるそうな雰囲気と子供っぽいツインテールとは対照的に胸の膨らみは佐野さんに匹敵する。
まじまじと見てはいけないと理性が命じても本能がその膨らみが揺れるところを追いかけてしまう。
「声が大きくて話の内容丸わかりだよ。あたしのサインが必要なんでしょ?」
「そうなんです。この書類にサインしていただければもう来ないので」
「ってかさ、あたし世界のために脱ぎたいんだけど」
「はあっ!? なにバカなことを」
「だって裸になってヒーロー? あたしの場合はヒロインか、になれるってすごくない? 結構胸には自信あるし」
彩夏さんは自分の胸を下から支えるようにしてゆさゆさと揺らす。あどけない顔立ちとのギャップがその破壊力をさらに引き立てた。
「でもさ、あたしも恥ずかしいんだよね。それに男の人に襲われないか心配だし」
「そうよ彩夏。もし本当に大災厄を防げてたとして、今度は周りの男が」
「だからおにーさん。あたしの生おっぱいを見て何もしないって証明できる?」
「……は?」
「あたしのおっぱいを10分間じーっと見て何もしないの。本当に何もしない。もし変なことしたら公務員に襲われましたって通報する」
「彩夏、あんた何言ってるの!」
ダウナーな雰囲気とは反対にその目は真剣そのものだった。俺が彩夏さんの条件をクリアできればほんの小さな一歩だけど世界を守ることに繋がる。
大丈夫だ。童貞だからおっぱいを目の前にした時にどう動くのか正解がわからない。ある意味でこれは有利な戦いだ。
「わかった。やろう。もし10分耐えたら大災厄の日に協力してもらうからね」
「えへへ。おにーさんすごい自信。もしかして女の子に興味ない人?」
「正直に言えば興味ある人だ。だけど耐える自信がある。真面目だけが取り柄で公務員になったからね」
「じゃあ、あたしの部屋来て。おかーさん、邪魔しないでね。でも助けを呼んだらすぐに来て」
「おじゃまします」
「ちょっと! 何を勝手に」
「これは世界を守るための戦いなんです」
まるでこれは合法的な行為だと言わんばかりのキメ顔でハッキリと言った。まあ、今の段階でも通報された100%アウトなんだけど。
「さっきも言った通り大声出したら丸聞こえだから変な期待はしない方がいいよ。おにーさんが本当に世界を守りたいならね」
「望むところだ」
安定を求めて公務員になっただけなのになんて誠実な働きぶりなんだ。真面目に働いていれば女子高生の生乳を拝める。
現役時代に成しえなかった夢を大人になった今叶えている。まるで失われた青春を取り戻すような感覚にも心が踊っていた。
「こんな風におっぱい見せるの、実は初めてじゃないんだ。おかーさんには内緒だよ」
「彼氏ってこと?」
Tシャツをたくし上げてブラジャーのホックを外すと豊満な果実が自力で重力に耐えていた。
これが本物の若さというやつか。映像で見たおっぱいは多少なりとも垂れていた。
「小学生の頃、体育の着替えをうっかり見られちゃって、その時以来誰かに見られるのにハマっちゃったんだよね。裏垢でこんな風におっぱいの写真とかあげてるんだ~」
おっぱいに視線を奪われて話が頭に入ってこない。要は見られるのが好きということだ。堂々と世界を守るという名目で全裸になれて、しかもそれで称賛を浴びることができる。
露出癖のある女性にとっては最高の条件だろう。
「でも露出するのが好きだから大災厄の日に裸になりたいですなんて言えないんだよね~。バレたくはないし、バレるかどうかのスリルを楽しんでるとこもあるしさ」
「なるほど」
頷いてはみたもののそんな話はどうでもいい。
そもそも大災厄が本当かどうかわからない。目標を達成しなくても世界は無事かもしれないし、本当に滅んでしまうかもしれない。
反対に、考古学者の先生方が設定した目標を達しても世界が滅ぶパターンだってある。
これが最初で最後の生乳かもしれない。そう思うとまばたきすらも惜しくなる10分間だった。
「おにーさんすごいね。おかーさんがなんか言うかもしれないけど、あたしは大災厄の日にちゃんと脱ぐから」
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