第02話:雨音の中で待ち合わせですね
あ、先輩~! こっちです、こっち!
おはようございます。もぅ、先輩! 女の子を待たせるなんていただけませんよ。
え、「まだ待ち合わせ時間まで15分以上ある」……? そ、それはそうですけど、それでも私はずいぶんと待たされたんです! ……楽しみすぎて待ちきれなかったんだから、しようがないじゃないですか。もぅ。
今日は雨ですね。先輩は雨はお嫌いですか? 私は結構好きなんですよ、雨。雨音を聞いていると、なんだか心が落ち着いてくる気がしませんか?
しとしと。ぽつぽつ。ざーざー。色んな音色で歌っているみたいです。
知っていますか、先輩? 雨の呼び方って400種類以上もあるんですよ。
……っと、こんなところで立ち話もなんですし、そろそろお店に向かいましょうか?
え? 「傘はどうしたのか?」ですか? ……ワ、ワー、大変ダー。傘ヲ何処カニ忘レテシマッタミタイデスー。……ぜ、ぜんぜん棒読みなんかじゃなかったですよ!
まぁ、傘を忘れてしまったのはしょうがないですし、先輩の傘、入れてくださいよ。ほ、ほら、早く詰めてくださいよ、先輩。濡れちゃうじゃないですか。
……。
むぅ。「くっつきすぎじゃないか?」って、仕方がないじゃないですか。離れたら傘からはみ出て濡れちゃいますし、それに雨音で先輩の声が聞こえなくなっちゃうじゃないですか。
ですから、このくらいの、お互いの体温を感じられるくらいの距離がちょうど良いんですよ。
ところで先輩、昨晩はすみませんでした。電話の途中で眠ってしまって……。
私、寝惚けて変なことを言ったりしませんでしたか!? 寝言で妙なことを口走ったりしませんでしたか!?
……ホッ、よかった。べ、別に先輩に聞かれて困ることなんかある訳ないじゃないですか!
はい、この話はこれでお終いです! 苦情は受け付けません!
ところで……、先輩にちょっと相談に乗ってほしいことがあるんですけど……。
その、私の……そう、私の友達の話なんですけど。あくまで友達の話ですからね。
友達にはずっと片思いしている
その人に好きになってもらえるように、毎日毎日たくさん頑張って、たくさんアピールして。でも、どうしても告白する勇気が出せなくて。
告白はできないけど、せめて気持ちだけは知ってほしくて。精一杯のアプローチをかけているつもりなんですけど、のれんに腕押しというか、ヌカに釘というか、全く手ごたえがない状態でして……。
でも、今回はなんとデートに誘うのに成功したんですよ! だから絶対にこの機会に大好きだって気持ちに気づいてもらうんです!
え、何でそんなに私が意気込んでいるのか、ですか? そ、そ、そ、それは、ほら、なんていったって私の大切な友達のためですからね! 絶対に成功してほしいんですよ! 他意なんてないです! あくまでも友達の話なんですからね!
むぅ。いったん話を戻しますよ。
それで先輩に相談に乗ってほしいことなんですけど、も、もしもですよ、仮に先輩がデートに行くとしたら、ど、何処に行きたいですか……?
……なるほど、映画ですか? ……あ、今ちょうど上映されているあの映画を、先輩も観たいと思ってたんですね!
ふふふっ。いえ、ごめんなさい、何だか可笑しくなっちゃって。
ちょうど私もその映画を観たいと思ってたんですよね。えへへ、先輩と私の共通点、ひとつ見つけちゃいましたね。
それじゃあ、ついでですし、パンケーキを食べに行く前に、一緒にあの映画を観に行っちゃいましょうか? そうすればパンケーキを食べながら映画の感想を言い合えちゃいますしね。
では、善は急げです。さっそくスマホでチケットを購入……って、上映時間までそんなに時間がないじゃないですか!? ほらほら、先輩、早く早く! 急がないと!
……え、「何を笑っているのか?」ですか? いえ、何だかこういうのも、先輩と一緒なら楽しいな、って。えへへ。
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