第13話『特に何もありませんでした』


「とりあえずログアウトして再ログインしてみたが、特に何もされてないな。……気にしすぎか」


イチカはもしかしたら、敵なのでは?と考えていたのだが、流石に何もされていない事が分かれば敵とは思えない。とは言え気になるところは沢山あるので、この館をブックマークしておくことに。


「これでテレポートの魔導書を使えばいつでも来れるぞ」


「おはようですお兄さん!」


「あぁ、おはようユナ」


「えへへ……。なんだか家族が増えたみたいで嬉しいです!」


なんともかわいい生物である。とは言え、一応これでクエストクリア判定なので、一体帰ろうとする。


「あっ、帰っちゃうんですか……」


「ま、まぁ。また来るからな」


「……はい!約束ですよ!」


そしてファストに向けて歩を進めるイチカ。しかしここである疑問が産まれる。これを仮に伝えたとして、何か意味があるのか?と言う事である。


「単にデカい館に普通の人間が住んでましたってだけの話……。わざわざ連絡する必要もないよな」


そう考えたイチカは、モンスターを狩っての金策を開始することに決めたのであった。そもそも、このクエストがクリアされていない理由に、報酬が見合っていないと言うのもある。


クッソ安い報酬に、七面倒な館探し。これではやる奴などいる訳もない。


「それに……、なんというか。あのユナって子、何となく他の奴に合わせちゃいけない気がする」


これはイチカの問題だが、あのユナと言う少女は初めて会ったイチカを家に招くなど、明らかに人を疑うと言う事が出来ないような奴なのである。それがもし、PKなどの悪い奴に見つかったら、変な事をされかねない。


「まぁこんなもんでいいか。リナに下取りしてもらおうっと」


そして最初から所持しているバッグに、はぎ取った素材を詰め込めるだけ詰め込んだイチカは、ファストへと帰宅する。今回は遠出すると聞いていたので、あらかじめ帰宅用の魔導書は買っておいたのだ。


「『テレポート』」


「ふー……お茶旨いっす」


ちなみにテレポート先は、必ずリナの近くに決めている。そんなリナはと言うと、茶屋で茶をしばいていた。


「っと、よぉリナ」


「あれっイチカ。早いっすね?」


「まぁね。いやー……探すだけ時間の無駄だわアレ。仕方ないんで雑魚モンスターを倒して素材を売ることにした」


「あー。そっちの方が確かに早いっすねぇ。んじゃ下取りするっすよ!町に持っていくと多分買いたたかれるっすよ」


「マジか……。魔物のデメリットデカいなやっぱり」


相変わらず、NPCは魔物に対して厳しいようである。とりあえずリナに素材を渡し、そのまま資金を入手する。ちなみにDNAは装備したはいいものの、特に何もわからないのである。


「これなんなんだろうなぁ」


基礎と書かれているのがさっぱりわからないし、発動しようにも何が何だかさっぱり分からない。


「とりあえず一回ステータス確認してみるかな」


一度、ここで魔物になった時のステータスを確認することにしたイチカ。具体的なステータスはこういう感じである。


『イチカ:レベル32

種族魔物(スライム)

HP:10

MP:10

AT:30

DF:0

SP:8

所持スキル:スライム』


「……所持スキルが雑過ぎない!?」


流石にこの辺には疑問を浮かべるイチカ。一応確認すると、色々な事が書かれていた。


「なんだまとめられてただけか」


分かりやすく言うならば、スライムは『HPを切り崩しながら戦うキャラ』と言う事。攻撃を食らうとHPそのものが無くなるが、回収すれば回復する。


「あぁ、僕がヘビー・アンカーに勝てたのはこの仕様があったからか……」


要は全部殺されなければ死なないと言う、結構壊れてる種族。ただしその代わり属性魔法にはとことん弱く、9:1で負ける。


「……なんとも玄人向け感が……」


とは言え、そこのところをごちゃごちゃ言っていても仕方ないと、再びモンスターを狩りに行くのであった。

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