第8話『たった二人の最終決戦』
「よーしこっからが本場だ!とりあえず今出せるアイテムは?」
「もう瓶しかないっす!」
「十分だ!ちょっと離れてな!」
ヘビー・アンカーは、腕を切られたことによりイチカを警戒していた。少しだけ距離を置き、直接攻撃を避けようとしていた。次食らえば腕だけでは済まないと、本能で察したようだ。
「さてと。俺はスライムだと言う事を忘れてた。すっかりな。発想を柔らかくしていこうぜぇ!」
だが距離を置いたことは、ヘビー・アンカーにとってド悪手であった。なぜならイチカは今の行動で、スライムの戦い方と言うのを完全に理解したからだ。
「よぉヘビー・アンカー。……俺の抜け殻相手にずいぶん御熱心だなぁ!」
虫は複眼と言う物を持っている。これにより、周囲色々なものを見渡すことが出来る。だが結局、真後ろはどうしようもない。地面を掘り進め、ヘビー・アンカーの真後ろに出現するイチカ。
反応しようと後ろを向いた瞬間、切れ味のいい拳が複眼を貫く。腕を目に突っ込んだ後、イチカは体をヘビー・アンカーの中に置き、体内からズタズタに引き裂いていく。
「あぁ、その部分はやるよ、もういらねぇんだ」
HPそのものがゴリゴリ削られていくが、要は食らわなければいい話。体内に流し込んだ後すぐにリナに元に逃げていく。そして瓶を手に取ると、イチカは自らの体を瓶に詰め込んでいく。
「千切った部位は十秒間……俺の武器として使える!」
瓶六本を走りながら勢いよく振り、ヘビー・アンカーの面前に投げつける。ここでヘビー・アンカーは、イチカさえ仕留められれば大丈夫だと言うように、突っ込んでくるイチカ相手に切り付けてくる。
「ッと、だから言ってんだよ、十秒間武器に出来るってなぁ!」
上半身と下半身が真っ二つにされるが、自ら体を千切っていたイチカにはノーダメージ。そして既に攻撃の下準備も終えている。先ほども言った通り、高速で回復すると勢いよく体が生える。
それを利用し、あらかじめ上半身だけを硬化させ、下半身から勢いよく復活してぶつけると言う攻撃を思いついていた。
「切られたっすよ!?」
「いいや、本命はこっちだ」
だがそのくらいは流石に、対応される。いくら何でも無理である。が、そもそもこれはオトリ。本命は先程投げた瓶にある。
「その瓶は密閉しててよ、炭酸ガスが入ってんだよ。……それをメチャ振ってやったら、どうなると思う!?」
瓶から勢いよく炭酸が弾け、イチカの体が槍のように、ヘビー・アンカーへ突き刺さる。血管からズタズタにされ、今までのダメージを受け続けたその体では、既に耐えられるヘビー・アンカーではなかった。
「……どうだ?」
「……どうなったっすか?」
まだ立ち上がってくるかもしれない。その懸念から、いまだに戦闘態勢を崩せない二人。だがそんな二人の疑惑を払拭するかのように、メニュー画面には淡々と結果が表示される。
『レイドボス:ヘビー・アンカー、撃破。
レイドボス撃破報酬:ヘビー・アンカーのレベル3武器入手』
「……勝ったのか?」
「……らしいっすね?」
いまだに実感が湧かない二人。だがヘビー・アンカーの姿がポリゴン化し、消えていく光景を見て、流石にこれが現実であると理解する。
「……勝ったんだよな!?」
「……っすねぇ!」
たった二人。たった二人でレベル差50以上のレイドボスを撃破した事実が、どれだけ異常な事か、それはリナ自信が一番理解していた。
「やってやったんだよなぁ?!」
「っすよぉ!ウチら……勝ったんすよぉ!」
二人は抱き合い、撃破したことを喜び合う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます